まっすぐ! 15





少し眩しく感じてゆっくりをまぶたを開ける。

明るくなりかかっている。そろそろ日の出か...

そんなことを思いながら枕元をごそごそと探った。寝るときはいつも携帯を枕元に置いている。

しかし、暫くごそごそと枕元を探ってみても見つからず、少し体を起こした。

ここらでようやく覚醒してきたが、覚醒したらしたで動けなくなる。

...なんだ、この横のは。

枕元ではなく今度は自分の記憶を手繰る。

昨日の記憶から今朝まで、ぷっつり切れている。

あ、あれ...?

恐る恐るソレに視線を向けると目があった。

「おはようございます」

「...お、おは」

引きつった笑顔で微かにそう返した。

彼は体を起こしてぼりぼりと頭をかく。

その時点で自分の格好に気が付いた。

下着のみ。

...待て、わたし!早まったのか、わたし!!

ぐるぐると非現実的なことが頭の中を忙しく駆け巡る。

彼は気にした様子はなく、ベッドから降りてそのままシャワーでも浴びに行ったようだ。

...ん?

彼は、ちゃんと服を着ていた。

ちゃんと、というか。寝るのに何でジーンズにセーターとかだ??

外を見ればもう太陽が全て顔を出したのか、随分明るくなっている。

尚且つスズメまで鳴いて...

これって『朝チュン』!?

自分の頭に浮かんだ単語を必死に打ち消す。

朝チュンって、あの後の話で。自分と彼は決してそういう関係ではなくて...平安貴族で言うところの後朝の歌とか送るような関係の事を言うはずだ。

だけど、この頭痛ってなんだっけ??

いや、そもそも自分のこの格好の理由が...言い訳が...!!


「目が覚めましたか?」

不意に声をかけられて慌てては毛布を首のところまで引き寄せた。

「早く服を着ないと、風邪引きますよ?」

「そ、そうですよね。あの、伺ってもよろしいでしょうか?」

「あ、オレ今からロードなんで」

宮田はそう言ってジャージに着替えてそのまま部屋を出て行こうとした。

さん。家に帰るにしてもウチの鍵は持っててくださいよ。締め出しはごめんです」

そうに言い置いて宮田は本当に家を出て行った。

「り、理由を。身の潔白を証明してください...」

宮田が出て行った後、はベッドの上でうな垂れた。

はのろのろとベッドから降りて、自分の体調変化にやっと気が付いた。

体が重い...

これだけだったらかなりまた混乱していたと思うが、頭痛もする。

「そういや、昨日は飲んだんだ...」

やっと昨晩の行動の一部を思い出すことができた。

だからと言って身の潔白の証明にはならないが...


は一旦自分の部屋に帰り、今朝の新聞から広告を抜き取ってその裏を利用し、サインペンで『うちに来るように』と書いた紙を宮田の部屋のドアに貼って、シャワーを浴びた。

シャワーを浴びながら隅々まで自分の体を確認して、ほっと胸をなでおろす。

しかし、何で下着だったのだろうか。

あの宮田のことだから彼が無理やりとかそういうのはないだろうし、だったら最後までいってるだろうし。

というか、何で彼は昨晩の格好のまま寝ていたのだろうか...


シャワーの水音に混じってインターホンの音が聞こえた。

「はーい!」

と蛇口をひねってから返事をした。

「締め出しは勘弁してほしいんですけど...」

ドアの向こうからの声に驚いて時計を見ると自分は随分シャワーを浴びていたことに気が付く。

「ごめん、ちょっと待って!!」

そう声を掛けて、とりあえずささっと体を拭いて玄関のドアの隙間を空けた。

「シャワー浴びるよね?終わったらウチに来てよ」

宮田の家の鍵を渡しながら言うと宮田は眉間に皺を寄せて不審感を表情に出しながら、「いいですよ」と返した。

は慌てて改めて体を拭き、ドライヤーで髪を乾かしていたが、これは時間が掛かると諦めてタオルを頭に巻いたままキッチンに立った。

ピンポーンとインターホンがなり、が顔を覗く。

「来たんですけど」

と困惑気味に宮田が言い、「入って」とは促した。

何だろう、と慎重に宮田はに促されたとおり中に入る。

「一宿の恩くらいは」とが言う。

「どういうことですか?」

「朝ごはん」

ああ、なるほどと宮田は理解して部屋のコタツの中に入った。

「あ、それスイッチ入ってないでしょ。入れて」

なるほど、だから温かくないのかと納得してスイッチを入れる。

「パンしかないんだけど。時間的に」と言ってがやってきた。

「凄いですね」

あの短時間で、と宮田は驚いた。

は得意げに「ふふん」と笑った。

「コーヒーと牛乳と紅茶と、緑茶と..あ、りんごジュースもあるけど。どれ?」

「牛乳」

宮田の選択に「了解」と返してはコップに牛乳をなみなみと注いで戻ってくる。

「いただきます」

何回かと食事をしているから見慣れたが、いつものように丁寧に言葉を発しては食事を始めた。

「いただきます」

普段、独りで食事をするときは発しないその言葉を口にして宮田も朝食を摂りはじめた。









桜風
10.2.27


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