ラブゲーム





「一郎の馬鹿!!」

いい加減、嫌になる。何でこの男を私はこんなに好きなんだろう。

「って、避けるなぁ!!」

いい加減ムカついて一郎の頬をはたこうとしたら、きれいに避けられた。

...余計にムカつく!!

「仕方ないだろ?もう体に染みついてるものなんだし。それより、は何でそんなに怒ってんだよ。」

あ〜あ〜、こういう男だよ。少しくらい自分で考えて答えを探してよね!

「教えません!それじゃあ、さようならッ!!」

顔を見るのも嫌でそのまま無理矢理話を終わらせて走って帰る。

「おい、ちょっと待てって。」

一郎が追いかけてきた。

このままだとあっさり捕まりそうだから人ごみに紛れることにしよう。

道を変えて大通りに向かう。


休日の今日は人ごみが凄い。

いつもは私も一郎もそれが嫌で大抵ここは避けてたんだけど、こういうときにはとても便利だと思う。

ふと振り返ってみると、もう一郎の姿が見えない。

...なぁんだ。もう、追いかけてこないんだ...

そう思うと途端に寂しくなる。


ゆっくり歩いているとだんだん視界がぼやけてくる。

目に溜まったものが落ちたら私の負けな気がして、悔しいからグッと顔をあげると、人にぶつかってしまった。

「すみません。」

「いって〜!!うわっ、俺、骨が折れてるかも。オネエサン、手当てしてよ。」

...ごめんなさい。私、お医者さんじゃないです。

などと心の中でボケてみるけど、当然のことながら誰も突っ込みをくれず、更にこの状況は良くならない。

腕をつかまれて強引に引っ張られる。

抵抗してもどうしたって私の力がこの人に敵うはずもなくズルズルと引きずられる。



助けて...!


そう思って浮かんだ顔は、さっき私がはたこうとして失敗したあの一郎。

でも、彼が来てくれるはずもなく、私はどうしていいか分からなくなっていると、

「俺の女に何の用だよ。」

声が聞こえた。

私の腕を強引に掴んでいるその腕をもうひとつの腕が掴む。

思わず顔を上げると

「ったく。お前小さいんだから、見つけるのに時間が掛かっちまっただろ?」

汗だくになった彼がいた。

「な、何だよ、オマエ。」

「オマエこそなんだよ。いい加減その手を離しやがれ。」

そう言って一郎がキツク睨むとその人は怯んで、走って行った。


「...怪我は?」

少し怒ったように、ぶっきらぼうに一郎が聞いてくる。

「ありがとう。大丈夫。」

「頼むから、あんまり心配させないでくれ。...まあ、が無事で良かったよ。」

やさしく微笑む一郎を見ると、さっきは何とか我慢できた涙も今回はちょっと無理。

「ごめ、..なさい。」

一郎は黙って私を抱きしめる。


こんなだから私は一郎には敵わない。

彼から1点奪うのも至難の業。

それでも、一郎になら完敗してもいいかな、なんて思う。



1点も取れないラブゲーム。でも、そんな恋も悪くはない。









桜風
08.8.27


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