水仙





彼とのデート中、花屋の前を通りかかってあるものが目に入って私は足を止めた。

さん?」

突然足を止めた私を訝しがった彼が声を掛けてきた。


私の目に入ってきたのは水仙。

私は常々彼を花に譬えてみようと挑戦していたけど連敗中。

どの花もしっくり来なかった。

でも。


水仙。


これ以上彼らしい花は無い。

この花は上を向いて咲くわけでも下を向いて咲くわけでもない。

前を向いて咲く。

確か、早春。冬の終わりに咲く花だったと思う。

厳しい冬に耐えて凛とした姿で花をつける。

ほら、ぴったりじゃない?



さん。花が欲しいのか?」

何の反応も見せなかった私に再び彼が声を掛ける。

「ううん、そうじゃなくて。あれ。水仙が目に入ったから。...一郎くんって水仙みたいだね」

「はぁ?」

この表現は気に入らなかったのかな?

「じゃあ、水仙って一郎くんみたいだよね」

「いや、どっちでもいいよ。どうしたんだよ、突然」

一郎くんは理解不能とばかりに眉間に皺を寄せる。

うん、よく見る表情だ。

「水仙の花ってね、早春に咲くの。厳しい冬の寒さを越えて凛とした姿で前を向いて咲くの。ほらね、似てるでしょ?凄く頑張って練習をして、凛とした姿で戦ってる一郎くんと」

一郎くんは驚いた表情をしたかと思うとそっぽを向く。

下から顔を覗きこむと

「あらら〜?熱でもあるんですか?」

顔が真っ赤だ。思わずからかってしまう。

一郎くんは無言のまま私の手を引いて歩いて行く。



今日は帰りに水仙の花を買って帰ろう。

私の大好きな人のように咲く花を。




花シリーズ一郎編でした。
彼は水仙です。なんか、そんな感じ。
でも、水仙って1つの茎に複数花が付いてたりするんですよね。
となると、下を向いてる花もあるのでは...
気付かなかったことにします!!


桜風
05.2.12


ブラウザバックでお戻りください