BOX!!





外の燦々と太陽が照りつける日差しに目を細める。

もう少ししたらこの日差しの中出て行かなければならない。

「あ、」とソファに座っているが声を漏らした。

宮田は振り返る。

「どうかしたか?」

少し心配そうに声をかけて彼女の隣に座った。

「ううん、ちょっとね。未だに不意打ちされるとどうも...」

苦笑してはお腹をさする。

来月が予定日の彼女のお腹は数ヶ月前に比べれば何倍にも膨れている。

目にするたびに、『本当のところ、破裂するんじゃないか...?』と宮田はいつも冷や冷やしている。

それを口に出せば「大丈夫だよー」とからからと笑いながらは答える。

何せ、ここには人が入っているのだから、これくらい大きくなければ窮屈だろう、と。

理屈は分かるのだが...

宮田はのお腹を見た。

グニ、とそれが動く。

「おー、元気元気」

笑いながらいうに対して、宮田は目を丸くして固まる。

「初めてじゃないでしょう」

苦笑して言うに「なれないんだよ」と少しぶっきらぼうに返した。

「ね、名前。考えてくれてるよね?」

期待に満ちたの言葉に宮田は渋面を作った。

「なあ、本当に俺が名前を考えるのか?」

「そうよー。当然!お父さんじゃない」

“お父さん”という単語に多少のくすぐったさと大きな責任を感じながらも宮田は続ける。

「自分で言うのも何だけど...俺、絶対にセンスないと思うんだけど?」

「名前はセンスじゃないわよ!愛よ。愛で名前をつけるの!!第一、名付けで物凄く外れたセンスってどれだけあさっての方向なのよ。大丈夫よ..きっと。
それに、わたしは“出産”っていう大仕事をするのよ。一郎だけ楽ちんなんてズルイわ」

ツン、と澄まして言うに宮田は溜息を吐く。

「じゃあ、せめて性別が分かったら...」

「だめよ。楽しみがひとつ減るじゃない?」

宮田の方は早く性別を知りたいと思っているのだが、がそれを良しとしないため、未だに彼女のお腹の中の生命は性別不明であり、どう呼んでいいかわからない。

ちなみに、は“ベイビーちゃん”と呼んでいる。


しばらくと宮田は問答を続けたが、先に溜息を吐いて降参をしたのは宮田の方だった。

いつものことだ。

「OK。わかった。ちゃんと考えておくから」

そういった宮田には心底満足したような嬉しそうな笑顔を浮かべた。

この笑顔を見たらもう勝ち目がない。

宮田はそのままに唇を寄せた。

だが、それが触れる寸前に「うっ」とが呻いたため、重ねる前に距離が広がった。

それを追いかけてキスをすることを諦めた宮田はソファに背を預けた。

「どうしたんだよ」

「いや、ちょっと強めに蹴られまして...痛いです、ベイビーちゃん」

お腹をさすりながらがお腹の中の子供に声をかけている。

...男だ。

宮田は確信した。

ここ最近、にキスをしようとすれば彼女のお腹にいる子供が邪魔をする。

そうか、そうか。生まれる前からオレに喧嘩を売るか...赤ん坊だからと言って甘やかすのはよくないよな...

全く大人気ないことを考えている宮田はうんうん頷いていた。

そして、そんな頷いている宮田を見ながらは首を傾げる。

なんだか、楽しそう...

何がそんなに楽しそうなのか分からないは純粋に羨ましがっていた。

「あ、ほら。時間!」

ふと目に入った置時計を見ては慌ててそう声をかけた。

「ああ、そうだな」

ジムに行かなければならない時間になったようだ。

仕方ない、と肩を竦ませて宮田は立ち上がる。

部屋の隅に置いておいたバッグを手にして玄関に向かった。

玄関まで宮田を見送るため、はその後ろをパタパタと歩く。

「いってらっしゃーい」と言いながらがひらひらと手を振る。

「ああ、そうだ」

そういって宮田は玄関のドアを開ける手を止めて振り返った。

不思議そうに見上げるに軽くキスをして「いってきます」と宮田は家を出て行く。

残されたは呆然としまった玄関のドアを見つめた。

そして、玄関を後にした宮田は「どうだ!」と小さくガッツポーズをしながら階段を下りる。

自分の子供だろうが、をめぐってのことならば容赦なく叩きのめすつもり満々の宮田は満足げに笑みを浮かべながらジムへと向かった。











桜風
09.7.7執筆


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