飴玉





3年が自由登校になった3学期のある日、学校から呼び出された宮田は渋々登校した。

宮田は2学期の期末試験は最初から受けてない。

元々成績は悪くなかったし、進学を希望していたわけではない。

だから、学校側も大して問題視していなかったらしいが、文部科学省が指定している単位がとれてないとか何とかで、形だけの補習だとか。

形だけなら、書類上で処理してくれればいいのに...

などと思いながら大人しく補習らしきものを受けた。

帰ろうと靴箱に行くと、ふと上履きがないスペースが目に入る。

ちょっと考えて宮田は屋上に向かった。


少し重いドアがギィと軋む音を立てながら開く。

ちらりと白い物が目に入った。

空を見上げるとちらちらと雪が降りてきている。

「あらら〜?」

真上から声がして振り返る。

「おひさし!」

片手を軽く上げて彼女が言う。

「ああ、久しぶり。、寒くないのか?」

気温は雪が降る程度に低いし、吐く息ももちろん白い。

「寒いよ」と言いながら少し鼻の頭が赤くなっているは白い息を吐きながら笑った。

そして、「よっ」と言って屋上のドアがある塔屋から飛び降り、ひらりとスカートがめくれる。

「中身見えるぞ」と宮田が言うと、「毛糸のパンツ穿いてるから大丈夫!」と笑いながら言う。

あまつさえ、自分でめくろうとするから宮田は慌てた。

「特に見たくないから見せるな」

「あら、勿体ない」

は肩を竦めてそう言う。

何が「勿体ない」 だ。そんな見せ方されても有り難みがないだろう...


ふう、とから視線を外してため息をついて視線を戻すと目の前に何かを突き出されていた。

「な、何だ?」

「お誕生日おめでとう!」

の言葉に宮田は目を丸くした。

「は!?」

「誕生日プレゼントでーす」

そう言っては宮田の手を取ってころりとその手のひらに飴玉を転がす。

「俺の誕生日、今日じゃないんだけど...」

「知ってる。夏でしょ?」

じゃあ、何で...

「夏は宮田、それどころじゃなかったデショ?」

の言葉に宮田は驚いた。

「...ありがとう」

少し躊躇いがちに宮田が口にした礼には満足そうに目を細めた。


「俺、今度海外に行くんだ」

「へー、強くなりに?どこ?」

の言葉に宮田は頷き、「アジア圏」と答えた。

「そっか。じゃあ..頑張れ。楽しみにしてるよ」

は笑って言う。

も」

返した宮田の言葉には目を丸くしたが、

「はは!りょーかい」

とやっぱり笑って返した。


「じゃあな」

から貰った飴玉を口の中の放り込んで宮田はそういう。

「うん、じゃあ卒業式の日に」

は宮田に手を振って見送った。


宮田は何を頑張れと彼女に言ったのか具体的には何も言っていない。

だが、彼女には伝わったようで少しだけ安心した。

がくれた飴はハッカの味がして、口の中がスーっとした。









桜風
09.8.9執筆


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