たんじょうび





「うお?!」

鷹村が帰宅しての第一声がそれだった。

「おかえりー」と声を掛けるに絶句して思わず数秒固まった鷹村だが、それをリセットするようにゴホンとわざとらしい咳をして「おう」と返す。


彼女がここに居ても全く不思議ではない。

なぜなら彼女はここの鍵を彼女も持っている。1年位前に鷹村自身が渡したのだ。

しかし、こうやって彼女が何の連絡もなく来ることは殆どない。

前日までに連絡があり、帰るのが遅いから中入っておけとか何とかと言う流れがいつものやり取りだ。

それなのに...

あれ?と鷹村は首を傾げた。昨日までに連絡なかったよな、と。

そんな鷹村の心境を悟ったは笑う。「うん、電話してないから」と。

安心したように鷹村は息を吐き、ドカッと部屋の真ん中に座った。

「お前、何飲んでんだ?」

「ビール。守も飲む?」

「んなもん、ウチにはなかっただろう」

「買ってきた。冷えたやつを一応、2本」

そう言って立ち上がるに「オレ様はいい」と返した。

「そ?」と言いながらもは冷蔵庫を開けてもう1本、入れていた缶ビールを取り出して戻ってくる。

プルトップを上げてコップに移した。

鷹村が要らないと言うならもう1本も自分で飲もうと思ったらしい。

「で?何だって今日は突然やってきたんだ?」

鷹村が問うとは「んー?」とすっとぼけたような表情を浮かべた。

「まあいい」と言ってやっと鷹村はハタと気が付いた。

あれ?今日は何月何日だ??

カレンダーを見て瞑目をした。

突然卓袱台の上に置いているの携帯が音を鳴らす。

「さーて、帰るわ」

「い、今の...?」

ちょっとおっかなビックリに聞く鷹村には苦笑した。

「アラーム。明日も仕事だからね。帰る時間の調整よ」

「あー、それじゃあ。オレ様が駅まで送ってやる」

「いいよ。慣れてる道だし」

そういうの言葉は黙殺して鷹村は玄関に向かった。

何を言っても大抵無駄なのを知っているは肩を竦めて鷹村の厚意に甘えることにした。


夜道を並んで歩く。鷹村は意外との歩調に合わせて歩いてくれる。

「あー、何だ。今度、仕事的にこう..時間が空くときとかあるのかよ」

しどろもどろの鷹村に怪訝な表情を浮かべて「来週が山場だからそれが過ぎたら..まあ。随分と楽になるかな?」とは仕事のスケジュールを浮かべた。

「よし、じゃあ。連絡を寄越せ」

「は?!」

目を丸くするに、「の誕生日、今日だろう」と呟く。

益々目を丸くしては暫く無言だったが、「あはっ」と笑う。

「わ、笑うな!このオレ様としたことが...」

「いいの、いいの。思い出してくれたってことは記憶してくれてたってことでしょう?やだなー」

はそのままクスクスと笑っている。

「だから、その..笑うな!」

「ごめん。でもさ、何だかとても嬉しくって。ありがとう」

「な?!」

まっすぐに返された彼女の言葉に鷹村が絶句した。

を見るとニコニコと本当に嬉しそうだ。

チッと舌打ちして鷹村が手を指し伸ばし、首を傾げるの手を鷹村は少し乱暴に取る。

益々目を丸くするに顔を見られないように少し早足で歩き始めた鷹村は、「ま、誕生日..おめでとうってやつだ」と照れくさそうに呟く。

「ありがとう」と返すに鷹村は「おう」と返した。




秋月さん、サイトのお誕生日おめでとうございます。って感じで。





桜風
10.5.29執筆
10.8.28掲載


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