「こんにちは。」
ジムのドアを開けて入ってきたのは、だ。
「よお、。久し振りだな。相変わらず宮田そっくりだな。今日は何の用で来たんだよ。」
を目敏く見付けた鷹村さんが近づいて声を掛ける。
「こんにちは、鷹村さん。一郎とそっくりって仕方がないじゃないですか。一応双子なんですから。一郎は?...あ、いたいた。」
確かに双子だから仕方がない。男と女の双子だから二卵性だけど、やっぱり普通の兄妹よりもよく似ている。
ただ、俺の方が背が高くなったし、の方が表情が柔らかくて豊かだ。
まぁ、あれで俺みたいに無愛想だったら色々と大変だろうけど。
「はい、一郎。これ忘れ物でしょ?」
が持って来たそれは、俺が態々鞄から出して置いてきたもの。
忘れ物じゃないんだけど、仕方がないから忘れ物だったことにしておこう。
「サンキュ、。」
「へぇ、本当に宮田そっくりだな。俺は木村って言うんだ。」
「俺は青木だ。」
最近ジムに入ってきた2人が興味津々で近づいてきた。
「こんにちは、宮田です。いつも愚弟がお世話になっています。」
「俺の方が兄貴だ!」
「...あらいやだ。そんな小さなことに目くじら立てて。いつもクールでいなきゃならないんじゃなくて?」
俺にとってのプライドの問題なんだよ!
...しかし、相変わらずムカツク言い方だな。
「おお、、久し振りじゃな。」
「あ、会長。お久し振りです、お元気そうで。いつも父と兄がお世話になっています。」
「うむ。兄妹でスパーするのも久し振りじゃな。応接室で着替えると良い。」
確かにはリュックを背負っているけど、スパーって...。
「え、いいんですか?やったぁ!じゃあ一郎、ちょっと待っててね。」
本気かよ。
は中学に上がるまで俺と一緒にこのジムに通っていたけど、もう2年以上通っていない。
そりゃ、今日みたいに時々来てるし、朝晩は俺と一緒にロードワークをしているけど、やっぱり毎日練習している人間とはスキルも違ってくるだろうし、
何より、この歳だと男女の基本的な運動能力の違いなんかも出てくる。
怪我、するかもしれないだろ?
「何だぁ?宮田、心配そうな顔して。」
ニヤニヤしながら鷹村さんが言ってきた。
あー、この人こういう事敏いから嫌いだよ。
「じゃあ、の実力を見極めるためにも、まずはこいつらとスパーさせてみればいいだろ。
一応基礎のパンチを一通り習ってオレ様に挑戦してきてるんだからよ。」
「俺達かよ!」
「ナメてんじゃねぇ!あんな女の子相手じゃ役不足だってんだ。」
...たぶんの方が強いと思う。
「そこまで言うんだったら、やってみようじゃないの!」
いつの間にか着替えを済ませて来たがドアの目で仁王立ちとなって2人を指差している。
ズカズカと近付いてきて2人を見上げて、睨む。
もはや、この対戦は回避不可能となった。
「オニイサンたち、近々試合の予定は?」
「そいつらまだプロ試験受けてねぇよ。」
鷹村さんが楽しそうな声を出す。それを聞いては、
「何だ、アマか。準備するからちょっと待っていてください。」
と言って慣れた手つきでバンテージを巻き、準備運動を始めた。
「さ、始めましょ?最初はどちらから?」
「俺がやってやるよ。ヘッドギア付けろよ。」
「ヘッドギア、いいです。青木さんこそ付けた方がいいですよ。久し振りだから加減失敗するかもしれませんから。」
のナメた態度に青木さんもムキになり、2人ともヘッドギア無しになった。
「一郎、ゴング。」
「はいはい。」
ゴングを鳴らした途端、青木さんが突っ込んでいった。
あーあ。
予想通り、のカウンターで青木さんは沈んだ。
リングの外から鷹村さんがカウントを取っての勝ち。
青木さんはヨロヨロと立ち上がり、木村さんと交代する。
木村さんも勿論ヘッドギア無し。
がこっちを見た。
はいはい。
ゴングを鳴らす。
2人は距離を取って対峙していたが、が前に出た。
避けることの出来る木村さんのジャブを態々腕でブロックする。
...パンチを誘っている。
そしてその誘いにまんまと乗ってしまった木村さんもカウンターで沈んだ。
「さあ、こっからが本番よ。一郎、上がって来な。」
クイ、クイと手で「来い」とジェスチャーする。
俺は溜息を吐きながらリングに上がる。
せめて服で隠れるボディ、か。
ゴングが鳴った。
!!やっぱりあの2人には手加減していやがった。
予想を上回るスピードで、が攻めてくる。
2ラウンドが終了して第3ラウンド目。
さっきまでのラウンドと同じような試合展開だったが、のストレートが俺の顔面に迫った。
やばい!
俺はとっさに手を出していた。の顔にカウンターが入る。
「ダウンだ、宮田。コーナーへ行け。」
鷹村さんに言われてニュートラルコーナーからを見る。
は立ち上がろうとしているが、思うように力が入らないようだ。
10カウント終了。
はマットを叩きつけた。
「...。」
「あー、もう!悔しいなぁ。3ラウンドまでもったのだって一郎に手加減されたからだし、その上結局負けちゃうし。
...でも、まあ、最後は本気を出したよね?」
「...余裕無かったからな。」
俺はの手を引いて立ち上がらせた。は満足そうな笑みを浮かべ、
「ま、一郎が私より弱いって言うのも嫌だしね。でも、また一緒にスパーしようね。」
「今度な。」
出来ればやりたくないけど...
本当、俺はに甘い。
『宮田に姉妹がいたらシスコンだ。』
そう思って、出来たシリーズ。
この先どんどんシスコンっぷりを見せてくれると思います、彼。
桜風
04.5.3
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