Position




今日は一郎の様子がおかしい。

いや、『今日は』と言うよりも『練習から帰ってから』の方が正しいのかも。

どうおかしいかと言うと、

「一郎、邪魔。」

何かと私にくっつきたがる。

ちなみにここは私の部屋。

つまり、花も恥らう女子高生の部屋に図体のでかい男子高生が居座っているということだ。

「別にの邪魔なんてしてないだろ?何なら教えてやろうか、それ。」

今私がやっているのは、現代文の宿題。

...国語、特に現代文を一郎に教わったらお終いだと思う。

私は溜息を吐いて立ち上がり、私のベッドでクッションを抱きしめている一郎の隣に腰掛けた。

どうでもいいけど、クッション抱きしめている一郎は何か可愛い。

「どうしたの?」

「『どうしたの』って何が?別にいつもと変わらないだろ。」

やっぱりこういうことは本人には分からないのかな?

一郎は落ち込んだりすると私にくっつきたがる。

つまり、今落ち込んでいるって事。

「ああ、そう?一郎は学校の宿題とか予習とかしなくてもいいの?何なら下で一緒にやる?」

一郎はクッションを手放して今度は隣に座っている私を抱きしめた。...今回は重症らしい。

「何かあったの?このお姉ちゃんに言ってごらん?」

「俺の方が兄貴だ。...今日負けたんだ。あいつとプロのリングで戦って、決着をつけたいと思ってる。」

「ジム、移るんだ?」

そりゃ落ち込むかも。

あのジムの人たちは楽しくて、私にとっても、たぶん一郎にとってもお兄ちゃんみたいだったもんな。

子供がそのまま体だけ大きくなっただけのような人もいるけど。

考えてみたら、今回のが一郎にとっての初めての挫折じゃないのかな?

ずっと周りに天才とかって言われてたもんな。

「でも、まあ。早くに負けを経験してよかったんじゃないの?

勝つのより、負ける方が得る物が大きいって聞くし、何より、一郎はこれからプロになるんでしょ?

ずぅっと勝っててポンって負けた方がよっぽど痛いって。これから、これから、ね?」

じっと私を見ていた一郎は、

「サンキュ、。」

と言って優しく笑う。

家だとこんなに優しい顔するのに、何で外だとあんなに無愛想なんだろ。

私から腕を離した一郎は立ち上がり、手を差し出してきた。

意味が分からない私が首を傾げて一郎を見上げると、

「下行って一緒に勉強するんだろ?」

と言ってそっぽを向いた。

「...OK.一郎。」

彼の口癖を真似してその手をとり、立ち上がる。


...やっぱり思うんだけど、私の方がお姉ちゃんっぽくない?

口に出したら、また一郎がうるさそうだから心の中で呟いてみた。


宮田に国語は教わってはいけない気がしています。
英語ならいいけどね。

桜風
04.5.6


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