それぞれの道
私の大学の合格通知が来た数日後、夕食も食べ終わって部屋に帰ろうとしたら一郎に呼び止められた。
「ちょっと話があるんだ。」
そう言った一郎の目は真剣で、私はその正面に座った。
「俺、海外に行くことにした。」
「はい?海外って海の外と書いて『カイガイ』と読む、あの海外?」
「...それ以外に何かあるか?」
「いや、思いつかない。」
父さんは私と一郎とそして自分のお茶を淹れてそれぞれの前に置き、一郎の隣に座った。
つまりこの海外の話は、既に決定されているということ。
「えっと、それで?」
「はどうする?」
「どうするって...」
「大学は休学という形が取れるだろう?何なら一緒に海外を回ってもいいんじゃないか?
本当はもっと早くに決めていたんだが、お前の受験が落ち着いてから話すと一郎が言ったからこんないきなりな話になってしまったがな。」
ふむ。お気遣いどうも。
でも、
「私は日本に残って大学に通うよ。」
「いや、でも...」
一郎は私が独りで日本に残るのが心配らしい。
「一郎は強くなる為に海外に行くんでしょ?」
「そう、だけど。」
「それなら、私も前に進みたいよ。一郎が前に進んでいくのに私が独りで足踏みするのって何か癪じゃない?
だから、私は日本に残る。
大丈夫だって。こっちにはおじいちゃん達も居るんだから。
それに、大学生になって独り暮らしを始める人なんてたくさん居るでしょ?
何より、家を長い間空けていたら家が早く傷んじゃうじゃない。」
私が『言い出したら聞かない頑固者だ』という事は目の前の2人が一番良く知っている。
一郎と父さんは顔を見合わせて同時に溜息を吐いた。
「そう言うと思ったよ。じゃあ、一応祖父さん達に連絡入れておこう。
この前2人に話したとき、『は日本に残るだろう』と言っていたんだがな。」
そう言って父さんはおじいちゃんたちに電話をするため、廊下に出て行った。
「なあ。」
翌朝のロードワーク中に一郎が声を掛けてきた。
「なに?」
「今更だけど、って何学部なんだ?」
「んー。...秘密って言ったら、一郎拗ねる?」
「...いや、拗ねねぇけど。」
そりゃそうだ。
18歳の青年が妹に向かって『拗ねる』とかって言わないよね。
まぁ、言う人も居るかもしれないけど、ウチの一郎は言わない。
「ま、一郎が海外から帰ってきたら教えてあげるよ。」
「それは、楽しみだな。」
そう、一郎に胸をはって報告できるように頑張らないと。
これ以上差をつけられては堪らない。
ところで、推薦入試の結果っていつ出るものなのですか?12月だと遅いですか?
えーと、...でも、12月ごろのお話と考えてください。
桜風
04.6.26
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