新たなる旅立ち ―前編―




卒業式の前日のロードの途中に私は思い出して一郎に声を掛ける。

「そうだ、一郎。部屋をちゃんと片付けておいてよ。」

「...何で?」

暗くてよく見えないけど、きっと眉間に皺を寄せている。

「だって一郎が居ない間、あの部屋を掃除するのって私だよ?」

「それが?」

「同じ年の姉に見られてマズイ物とか無いの?」

「妹、だろ?マズイ物...例えば?」

「本とかビデオとかその他諸々。」

「―――。その心配は無いな。」

「もう処分済みなんだ?」

一郎は無言で私の頭を片手で掴み、力を込める。

...一郎サン。本気で痛いです。

「ま、世話を掛けることになるだろうけど、ヨロシク。」

一郎は力を緩めて軽く私の頭に触れて、手を離した。

「任せとけ!」

私は走りながらガッツポーズで答えた。



高校生活最後の日、私達はいつものように一緒に登校した。

3月に入ったばかりだからまだ寒く、昨日降った雪が溶けずに残っている。

「そこを行く仲良し兄妹!」

私たちが振り返るとカメラのフラッシュが光った。

「宮原...」

、いきなり何するのよ!」

一郎は眉を顰め、私は戻ってに軽くタックルをした。

「ごめん。しかし、最後まで2人仲良く登校かぁ。」

一郎は、私たちが追いつくのを待って歩き出す。

「悪いかよ。」

「いやいや、『仲良きことは美しきかな』と言うじゃないの。そうだ、卒業式が終わったら3人で写真撮ってもらおう?」

「あ、悪い。HR終わったらすぐ帰る。用事があるんだ。」

「用事?―――聞きまして?姐さん。」

「ええ。ちゃっかり、しっかり聞いちゃいましたとも。これは、弟にも春が!?」

「「デートだね?」」

「違う。、俺が兄貴だ。お前らハモるなよ、不気味だぞ?」

「まぁ、お兄ちゃんに用事があるなら仕方ないね。学校着いたらすぐに撮ってもらおう?胸に花が無くてもいいよね?

ああ、高校最後の宮田君を愛器でとれないなんて...」

はセミプロのカメラマン。たくさんのコンクールで特賞とか凄い賞を貰っているらしい。

「そういえば、いつものゴツイのは?」

「お母さんの持って来てもらう。式の間持ってられないからね。」

その後、3人で他愛もない話をしながら学校に向かった。


正門前で適当に生徒を捉まえて数枚写真を撮ってもらった。

下級生に花をつけてもらってそれぞれ教室に行く。

ちなみに、一郎の花付けで下級生たちがもめて待たされた一郎は見事に不機嫌となった。

それに怯えた下級生たちに頼まれて一郎の胸に花を付けたのは、この私。


(退屈な)卒業式も滞りなく済んで最後のHRがあり、高校3年間の全ての課程が終了した。


何人かの『一郎捜索隊』に一郎の行方を聞かれたが、「知らない」と答えたら案の定睨まれた。

...本当に知らないのに。

心当たりはあるけどね。


陸上部の後輩たちから花束も受け取り、の愛器で何枚か写真を撮ってもらった。

「じゃあ、私、先に帰るね?」

「ん。後でお邪魔するよ。」

と別れて私は独りで学校を後にした。



とりあえず卒業させてみたり。
まだ、中編・後編がある無駄に長い話になります。

桜風
04.7.3


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