新たなる旅立ち ―後編―
「何やってるんだよ。」
盆を持ってドアを開けるのが難しいと予想した俺はドアを少し開けて出ていた。
コーヒーを淹れて戻ってみると、女2人がどう見てもベッドの下を覗いている。
「じゅ、柔軟。」
「手伝ってやるよ。」
俺はの背中を足で踏んでやった。
でも、よく考えたらは体が柔らかいからこれくらいじゃ効かないな。
「ごめんね?男の子のベッドの下って私達にとっては未知の世界だったのよ。
まあ、知的好奇心ってやつ?人間の本能よ。」
全く悪びれもせずに宮原が言う。
「何か見つかったかよ。」
「全然。そういえば、もこの部屋に長い間足を踏み入れてないって言ってたよ。」
「まぁ、そうだな。大抵用事があっても入り口で済ませていたから。」
「一郎...重い。」
「今ナチュラルウェイトだからな。」
踏んだだけじゃ効かないと思ったから、俺はの背中に腰掛けている。
さすがに潰れかねないから降りてやった。
「へえ。じゃあ、宮田君は海外で武者修行して来るんだ?」
「まぁ、な。」
「、この家に一人ぽっちか...。そういえば、そんなに長く2人が離れたことってあるの?」
「無い、ね。」
「無い、な。」
「じゃあ、今回のでやっと兄妹離れが出来るね。」
宮原がそんなことを言う。
「もう兄妹離れ出来てるじゃん、私達。」
「なあ?」
「いや、2人が兄妹離れできてるって言うんだったら世の殆どの人が出来てることになるよ。」
宮原は苦笑しながら俺達の意見を否定した。
でもよく考えたら、本当にそうだ。
学校もずっと一緒だったし、離れても俺やの合宿で一週間くらい。
途端に不安になった。
俺はともかく、はどちらかと言えば寂しがり屋だ。
両親の離婚のときも泣いて離れたがらなかった。
数ヶ月前に涙を見たばかりだし、今更ながら心配になる。
「大丈夫だって。一生会えなくなるわけじゃないし、私も忙しくて寂しがって居られないよ、きっと。
それに、一郎より人付き合いが上手だから心配ないって。」
確かに心配しても仕方がない。
「まぁ、意外と神経太いからな、お前。」
は悪戯っぽい笑顔を浮かべて応えた。
その後、父さんも帰ってきて宮原のフィルムも消化し、彼女は帰った。
俺が海外へ行く日、と、なぜか宮原が見送りに来た。
「木田さん、父と兄を宜しくお願いします。」
少し離れた所でが木田さんに挨拶をしている。
「宮原は何で来たんだよ。」
「当分2人が揃っているところ見る事ができなくなるでしょ?撮り納めておこうかなと思ってさ。」
「ふうん。まぁ、のこと頼むな?」
「うん、分かってる。」
そう言った宮原はカメラを向けてフラッシュをたいた。
アナウンスが流れてきた。
そろそろ移動しなければならなくなる。
「、ちゃんと食事は摂れよ。無茶するな、体に気をつけろよ。」
はうんざりして、
「はいはい。一郎も生水に気をつけて。あ、あと、帰ってくるときは連絡入れてからにしてね。」
と答える。
俺達が移動を始めても付いて来た。ギリギリまで見送る気でいるようだ。
「じゃあな。」
俺が背を向けると、
「一郎!」
に呼ばれる。
振り返るとはファイティングポーズを取っていた。
は右手をゆっくりと降ろし、前に出す。
俺も荷物を置いてファイティングポーズを取り、リングの上でする挨拶のようにの拳に俺の拳をコツンと合わせる。
「頑張って。」
「もな。」
合わせた拳に俺は誓う。
必ず強くなってみせる、と。
こうして、一郎は日本から旅立って行った。
日本に居なくてもバンバン出てくる予定ではありますけどね?
まあ、帰ってくるまでに2、3話入れる予定。
...バンバンじゃないじゃん。
桜風
04.7.17
ブラウザバックでお戻りください