call to
ジミー・シスファーとの試合のあと、俺は少し入院をすることになった。
少し胸騒ぎがした。日本に残った妹の泣き顔が浮かぶ。
時計を見ると、今は午後9時。東京は10時30分頃ということになる。
この時間だとまだ寝てないだろうから、俺は病院のホールへ向かった。
国際電話で日本の家に電話を掛けた。
『もしもし?』
「俺だけど。」
久し振りに聞くの声が照れくさかった。何より電話で話をすることが殆どない俺たちだ。
しかし、それよりも気になるのは、の声の違和感。
『どちらの俺様ですか?』
「一郎だよ!」
の返答をきいて、さっきの俺の心配は杞憂だったように思えた。
でも、
『うん、分かってたよ。
...ねぇ、一郎。ただいま。』
そんなことを言ってきた。
今、が一番欲しい言葉はきっと、
「...おかえり。」
電話の向こうで安堵したような感じがした。
「どうかしたのか?」
『いや、何でもない。一郎こそ、どうしたのよ。もう帰国ってことは無いでしょ?』
「違うよ。俺、勝ったんだ。ジミー・シスファーって奴との試合に。」
『それって、タイの英雄って言われている人じゃないの?別の人?』
「いや、それ。辛勝だったけど、何とか勝てて新しいカウンターも手に入れたよ。まだまだだけどな。」
本当に辛勝だ。結果はKOだけどボロボロだったもんな。
『辛勝?』
の心配そうな声を聞いて、しまったと思った。
勝ってカウンターを手に入れたことだけ言えば良かったのかもしれない。
「...ああ、今入院中。ちょっと足が、な。」
『足!?また同じところ痛めたの?』
やっぱり心配を掛けてしまったみたいだ。
俺は慌てて、
「いや、大丈夫だから。それより、の方は何か変わったことあったか?」
は少し沈黙して、ゆっくりと話し始めた。
が偶然母さんの家に行ったことにも驚いたけど、それ以上に母さんがボクシングを見ていたかもしれない事に驚いた。
何となく、ボクシングを嫌っていそうだったから。
「そうか、母さん元気だったか。それよりも、大変だったな。一度にたくさんのことがあって。」
『うん、今日何回驚いて動揺したことか。
...そろそろ電話切ったほうがいいでしょ?結構長く話したから。』
時計を見て驚いた。いつの間にか時間が随分進んでいる。
「そうだな。それじゃあ、な。ちゃんと食事摂れよ。」
『一郎も、適度に栄養摂りなよ?じゃあね。』
「ああ、おやすみ。」
の言葉を待たずに受話器を置いた。
俺の胸騒ぎもあながち間違いではなかったらしい。
でも、元気になったみたいで良かった。
早く足を治して練習をしたい。
そんなことを思いながら、松葉杖をついて病室に帰った。
予告どおりに宮田視点です。
宮田の胸騒ぎは双子の神秘のひとつ。
双子って普通の兄弟よりも通じ合ってるイメージがあるので...
桜風
04.12.17
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