ただいま




幕之内のチャンピオンカーニバルに間に合うように飛行機に乗った。

日本からの情報が少し遅かったこともあって、俺の試合が組んであったし、結局飛行機のチケットが1枚しか取れなかった。

父さんと木田さんを残して俺は先に帰ってきてそのままホールへ直行した。

今日が初の負け試合となったあいつが強くなって復帰してくれることを期待してホールを後にした。


帰国するときは事前に連絡を入れるようにに言われていたが、俺は何も連絡をいれずにいる。

久し振りの家はやはり懐かしかった。

ドアに手を掛けると、鍵が掛かっていない。

おいおい、無用心だな。

ドアを開けて家の中に足を進める。

を驚かせてやろうと悪戯心も沸いてきて、物音を立てないようにこっそり家に上がる。

テレビの音が聞こえるから居間へ向かって中の様子を窺うと、炬燵にうつ伏せて寝ているの姿があった。

「...なんだよ、つまんねぇな。」

とりあえずの傍に寄って様子を見る。

炬燵の上には大学のだろう、プリントや教科書、ファイルが広げてある。

炬燵で眠ったままだと風邪を引くかもしれないから起こすべきか悩んだが、折角気持ち良さそうに寝ているんだ。

起こすのも気の毒な気がして、抱えて運んでやることにした。

軽い...

を横抱きにして持ち上げるが、軽い。

炬燵から出て寒くなったのか、が少し動いて俺にくっついてきた。

を抱えたことなんて殆どないから他と比べようが無いけど、でも、どう考えてもこれは軽いだろ。

もしかしたら痩せたのかも知れない。の性格だから、周りに頼らないように独りでやっていた可能性が大きい。

「ちゃんと食事摂ってたのか?俺が食べられない分、お前はしっかり食べろよ。」


の体をドアにぶつけないようにして部屋の中に入った。

ベッドに寝かせて居間に戻り、炬燵の上に広げてある物を持って再びの部屋へ上がった。

の机の上にそれらを置くと、3枚の写真立てが目に入る。

俺が日本に居たときはこんな物はなかった。

1枚は卒業式の日に宮原に撮ってもらった家族の写真。もう1枚はと俺と宮原の3人で写っているやつ。

そして、最後の1枚は、母さんがいたとき家族4人で写ったものだった。

...やっぱり寂しい思いをさせてしまったようだ。は普段遠慮なく色々言うけど、深いところの気持ちは絶対に口にしない。

「ただいま、。」

約1年ぶりの言葉を眠っている妹に掛けた。







      〜おまけ〜


朝、目が覚めると部屋着のままベッドで寝ていた。

私の記憶は、炬燵に入ってテレビを見ながら大学のプリントの整理をしていたところで途切れている。

もしかしたら、無意識に戻ってきて力尽きたのかもしれない。

そう思いながらジャージに着替えて台所に向かった。

炊飯器にご飯をセットして玄関に行くと、昨日までなかった革靴があった。

私は急いで2階に上がり、ノックもせずに部屋のドアを開けた。



多少体内時計がずれているらしく、日本に居たときより少し遅くに目が覚めた。

朝のロードに出るために着替えていると、凄い勢いで階段を上がってくる足音が聞こえた。

バンッと勢いよくドアが開けられたそこには、なんとも表現しがたい妹の姿が。

とりあえず、Tシャツに袖を通して呆然としている

「おはよう。」

と挨拶をしてみる。

は一度目を伏せ、そして、ズカズカと近づいてきた。

...ヤベ。


何が『おはよう』だ。

何だか腹が立って私は一郎の元へ行き、

「帰る前に連絡入れてって言ったでしょ!?」

と言いながら頬を抓った。

「突然帰れるって決まったんだよ。まぁ、わざと連絡入れなかったていうのもあるけど。」

...なんで両頬抓られているのにこんなにはっきり言葉が言えるの?

一郎の顔が痩せているようだったから手を離した。

もしかしたら試合から時間が経っていないのかもしれない。

一郎はジャージを着て、

「ロード行くんだろ、早く行こうぜ。」

と言って部屋から出て行った。

私は慌ててその後を追った。



シューズの紐を結び直していると、先に準備が出来たが声を掛けてきた。

「一郎、お帰り。強くなった?」

「ただいま。まあな。結果は出してきたよ。」

やっと日本に帰ってきたことを実感した。


余談だが、父さんたちは航空会社のストライキに遭って足止めを食らった。



早速帰国させちゃいました。
まあ、このシリーズは時系列無視して話が追加されるので、
いつか再び宮田が海外武者修行に出ているかもしれませんけど。

『おまけ』はリンク貼ろうかとも思ったのですが、短いのでこのままくっつけちゃいました。


桜風
05.1.15


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