絆
帰国した翌日、昼間に川原ジムへ帰国の挨拶に行った。
父さんと木田さんは航空会社のストライキで帰れないことを伝えたら会長は苦笑していた。
その日は、練習をしないで帰った。
「...一郎。」
「何?俺邪魔になってるか?」
「いや、やっぱいいや。」
夕飯を食べ終わってが部屋に戻ったから俺もの部屋で寛いでいた。
ふと、見慣れない雑誌が目に入る。
いや、1年近く留守にしていたから見慣れない物だらけだけど、これは珍しく写真の雑誌だ。
パラパラ捲っていたら目に止まった写真があった。
『絆』というタイトルで、撮影者が『宮原』。ついでに最優秀作品らしい。
「なあ、。この写真撮った『宮原』って、あの宮原か?」
プリントを整理していたが振り返って、
「ああ、そうそう。だよ。」
「じゃあ、この手って。」
「私と一郎の。出発した日の空港のやつ。」
絆というタイトルがつけられた写真は、空港での出発間際に拳を合わせたあの時の物らしい。
「...いつのまに。」
「私も気が付かなかった。そのコンクール出す前に見せられてビックリしたよ。顔が写っているわけじゃないからOKしたんだけど、嫌だった?」
「いや、嫌じゃないよ。驚いただけ。」
と言うか、ちょっとこれ欲しいとまで思ってしまった。
「もしもし、?」
雑誌に掲載されていたその写真を見ていると、突然の声がした。
独り言にしては変だと思って顔を上げてみてみると、携帯電話。
「一郎帰ってきたよ。うん。じゃあ、明日行こうか?大丈夫?分かった、じゃあね。」
「携帯なんて持ってたんだな。便利?」
「まあ、ね。私の場合、バイトで持っていたほうが良かったから。」
「ふうん、俺も買おうかな。」
「父さんが帰ってくるの待ってからの方がいいよ。未成年だから保護者の同意が要るし。」
「は?」
「おじいちゃんに頼んだ。あ、私、普通自動車の免許も持ってるんだよ。」
「は?」
俺が驚いたのがよっぽど楽しいのか、は満足そうに笑っている。
...なんか、浦島太郎の気持ちが少しだけ分かった気がする。
「そういえば、約束だったよな。は何学部なんだ?」
「健康栄養学部。」
「...栄養?」
「そう。とりあえず今の短大で栄養士の資格を取って3年から編入もしくは、また受験して4年制の大学へ行って管理栄養士の資格を取れるように頑張ってみようと思っているの。」
「栄養士って...」
「どっかのボクシング馬鹿さんがキツイ減量を避けるなんて言わないだろうし、私自身他にやりたいこと思い浮かばないから。
それに、是非とも見たいもん。そのボクシング馬鹿さんが世界チャンピオンになるところを、ね。」
ボクシング馬鹿、ボクシング馬鹿って...。
まあ、確かに俺にはボクシング以外ないけど。
少ししてインターホンが鳴った。
夜中に誰だよ、と思いながら玄関のドアを開けると、
「よ!お兄ちゃん、お帰り。」
と片手を上げた宮原がいた。
「ああ、久し振り。どうしたんだよ、こんな時間に。」
「これ、2人に1枚ずつね。じゃあ、お邪魔しました。」
大きな袋を俺に渡してそのまま車で帰っていった。
...宮原も免許取ったのかよ。
再びの部屋に戻り、
「宮原から、これ渡されたんだけど。」
とに袋を渡した。
は中の物を1枚取り出してその包みを開ける。
宮原が持って来たそれは、パネルに伸ばされた『絆』だった。
「はい、一郎。」
はそれを俺に渡してきた。
「のは?」
「こっちも同じ物のはずだから。要らなかった?」
「いや、折角だから貰っておくよ。」
と素直じゃない返事をした。も「素直じゃないな」と苦笑している。
「、近々試合あると思うけど、それが終わったらどこ行きたい所とかあるか?付き合うぜ?」
何となくそんな気分になった。
は「うーん」と唸っていたけど、クスッと笑い、
「どこでも良いんだよね。ああ、楽しみだな。凱旋試合頑張ってね、お兄チャン。」
と言ってきた。
今更だけど、場所の指定しておけば良かった。
が素直に俺のことを『兄』と言うときは大抵悪巧みのあるときだ。
でも、まあ。
久し振りの妹のわがままを聞いてやるのも悪くはない。
『健康栄養学部』は私が勝手に考えた学部です。
もしかしたら、本当にあるかもしれませんけど。
宮田兄妹はこんなことを言っていますが、
次回はまた高校時代に戻ってみたり〜...
お出掛けは、またいつか。
桜風
05.2.19
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