ロミオ&ジュリエット sideジュリエット ―前編―



高校に入って初めての文化祭。

先輩の話によると、ウチの学校は『祭』と付くものは異様に盛り上がるらしい。

家で一郎にその話をすると、

「面倒くさいな。」

というやる気ゼロのコメントが返ってきた。

そんな一郎と、ついでに私に試練が訪れた。



「異議あり!」

「ちょっと待てよ、何だよそれ。」

私と一郎は同時に声を上げて立ち上がった。

なぜか文化祭の話し合いが、視聴覚室で私と一郎のクラス合同で行われている。

水面下で色々裏工作していたのだと見当はつくが、よりにもよって、

「何故、私と兄が『ロミオとジュリエット』の主演なんですか!」

そう、突然こう告げられたのだった。


「前もって文化祭実行委員で話し合いをしていたのですが、今年の文化祭は、A組、B組合同で、演劇『ロミオとジュリエット』の上演を提案します。

主演は各クラス、1名ずつ、A組は宮田君が『ジュリエット』、B組の宮田さんが『ロミオ』と考えています。」

ちょっと待て、隣のクラスの実行委員。しれっと、凄いと言うか、酷い事言ってるよ。

「異議あり!」

「ちょっと待てよ、何だよそれ。」

「何故、私と兄が『ロミオとジュリエット』の主演なんですか!」

この際性別逆転は無視して発言をするが、一見複雑そうで実は単純な一郎が、

「そうだぜ。性別が逆転していないならまだしも、何で俺が女装しなきゃいけないんだよ。」

と。

ああ!馬鹿ッ!!

「一郎はちょっと黙ってて!」

「何でだよ、俺にも発言権がある筈だろ?!」

実行委員たちはニヤリと笑い、

「では、宮田君が『ロミオ』で宮田さんが『ジュリエット』なら承諾すると言うことですね。」

と勝ち誇ったように口を開いた。

そう。さっきの一郎の発言だとそう取られてもおかしくない。

おそらくA組の実行委員が一郎の性格を読んで態々性別逆転で発表したんだと思う。

いや、犯人はきっと...A組の実行委員ではなく、ずっと後ろで笑を堪えているウチのクラスの実行委員の宮原だ。

「私は承諾しかねます!」

何が悲しくて兄妹でラブストーリーを演じなきゃならないのよ。

しかし、

「では、多数決を取ります。宮田兄妹の『ロミオとジュリエット』に賛成の人は手を挙げてください。」

私と一郎を除く全員が手を挙げる。

...一郎ファンクラブの皆さん?何で貴女たちまで手を挙げるのよ?!

かくして、私と一郎の『ロミオとジュリエット』が決まってしまった。

民主主義反対!!



他の配役は、立候補、推薦で決まり、裏方たちは各クラスで明日までに決定することで解散となった。

教室に帰っても誰一人として私に近づこうとしない。

それもその筈。私は不機嫌を一切隠していない。

そんなの今隠せるほど大人じゃないし、今更仕方がないけど無言の抗議ってやつだ。

しかし、そんなことをひとつも気にせずに私に話しかけてきたのは、

。まだ怒ってんの?がこの調子だとお兄ちゃんはもっと酷いだろうね。」

黒幕の宮原

私は彼女を一瞥してふいっと顔を背ける。

「ごめんって。どうしても1位の景品が欲しかったんだって。」

1位の景品?

「ウチの文化祭、学校関係者と外部から来た人にどれが良かったかって投票してもらうの。

そして、見事1位に輝いた個人、もしくは団体には、景品が送られるんだ。

それが何と!遊園地のフリーパス!!しかも授業の時間を1日潰してだよ?

一応、引率に先生がつくけど、入ったら全くの自由だし、その場で解散で、好きなだけ遊べる。これはもう頂かないと、ね!?」

どういう学校なんだろう。私立で多少自由かもしれないけど、限度ってものがあるでしょ?


「―――って理由があったんだって。」

夜のロードで一郎にから聞いた話をする。

「遊園地なんていつでも行けるだろ?!俺たちを巻き込むなよな。

放課後に練習とか入ったらジムにいけなくなる日が出るじゃないか。」

「...でも、それを考えたら、私たちがパートナーで良かったね。家の中で練習できるから。」

一郎は不本意そうに「まあ、そういう考えもあるな」と呟いた。



翌日、早速各クラスの実行委員、キャスト、裏方の代表が集まって会合というか、顔合わせが行われた。

台本も出来上がっていて配られる。まぁ、あと2週間しかないんだから今台本が出来ていないとキツイ。

パラパラと捲っていると、隣に座っている一郎がわなわなと震えている。

手元を覗き、字を追って絶句した。

「すみません、ラストシーンなんですが。」

「ああ、『ロミオを追ってジュリエットが自害』って暗くなるからロミオが死ぬ前にジュリエットに目覚めてもらうことにしたんですよ。」

「いえ、それはいいんです。その後!」

 ―――2人が口付けを交わし、幕が下りる。―――

...ふざけるなよ、脚本家。何度言えば分かる。私たちは兄妹なんだぞ?!

というか、いい加減にしないとウチの兄、キレるよ?

「あ、フリでいいですよ。」

一郎は静かに立ち上がり、帰り支度を始めた。

そりゃあね、妹とキスシーン演じて平気なほど神経太くないし、私もごめんだよ。

何よりも、例えフリでも倫理的に考えてもまずいと思わないの?

それでなくとも、私はロミオ(一郎)に思いを馳せ、一郎はジュリエット(私)に愛を語るのに。

もうこれが限界だと察してよ。

ドアに向かっていく一郎をが必死に宥めている。

に何か言われた一郎は眉を顰めてチラッとこっちを見て、視線を戻して溜息を吐いて戻って来た。

「委員長。いくらフリでも兄妹でそれは少し問題があるように思います。ここは、『しかと抱き合う』という物に変更してはどうでしょう。」

が提案をする。

「...そうだね、宮田兄妹は有名だし。じゃあ、ラストは『しかと抱き合う』に変更にしよう。

最後は甘くないと盛り上がらないから、宮田君、宮田さんお願いします。」

一郎は不機嫌そうにしながら、再び私の隣に座った。

「なんで戻ってきたの?絶対帰ると思ったのに。」

「別に何だっていいだろ。」

ふい、とそっぽを向いて、答えが返ってきた。

...変なの。

とりあえず、稽古は1週間後から始めることとなった。



『宮田兄妹を人前でイチャつかせてみたい。』
そう思って出来たのがこれ。
次回宮田視点。
本当はヒロイン視点だけだったのに、ある場面が頭に浮かんでしまい、宮田視点も。
先に謝っておきます。
宮田ファンの方、ごめんなさい。


桜風
05.3.19


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