ロミオ&ジュリエット sideロミオ ―前編―
「ウチの学校って『祭』と付くものは異様に盛り上がるらしいよ。先輩が言ってた。」
「面倒くさいな。」
中間テストの期間中、の話を聞いた。
その時は、他人ごとのように思ってて俺とが巻き込まれるなんて思っていなかった。
文化祭の初めての話し合いはなぜか視聴覚室でのクラスと合同だ行われていた。
「前もって文化祭実行委員で話し合いをしていたのですが、今年の文化祭は、A組、B組の合同で、演劇、『ロミオとジュリエット』の上演を提案します。
主演は各クラス1名ずつ、A組は宮田君が『ジュリエット』、B組の宮田さんが『ロミオ』と考えています。」
「異議あり!」
「ちょっと待てよ、何だよそれ。」
俺とは同時に声を上げて立ち上がった。
「何故、私と兄が『ロミオとジュリエット』の主演なんですか!」
「そうだぜ。性別が逆転していないならまだしも、何で俺が女装しなきゃいけないんだよ。」
全く、どういう話し合いでこんなことが思いつくんだよ。
「一郎はちょっと黙ってて!」
席の離れたところにいるが言ってきた。
「何でだよ、俺にも発言権がある筈だろ?!」
俺は絶対に女装なんてしたくない。
実行委員たちに目を向けると、ニヤリと笑う。
...俺、何かまずい事言ったかも。
「では、宮田君が『ロミオ』で宮田さんが『ジュリエット』なら承諾すると言うことですね。」
しまった。女装に気をとられて出演拒否自体はしていなかった。
はこれに気付いたんだな。
再び実行委員に目を向けると、後ろの方で肩を震わせて笑いを堪えている女子がいた。
...お前が犯人か、宮原!!
「私は承諾しかねます!」
は断固拒否の姿勢を示したが、
「では、多数決を取ります。宮田兄妹の『ロミオとジュリエット』に賛成の人は手を挙げてください。」
と言う言葉に反対する人は俺たち以外一人も無く、民主主義の前にあっけなく倒れた。
他の配役は、立候補、推薦で決まり、裏方たちは各クラスで明日までに決定することで解散となった。
教室に帰っても俺は不機嫌だった。思い切りだまし討ちじゃないか。
しかし、そんな全身で不機嫌を表しているはずの俺を恐れずに、ウチのクラスの実行委員が話し掛けてきた。
「宮田、劇のことでなにか言っておきたいことはないか?
役を降ろしてやることは出来ないし、演目も変更できないが、それ以外なら何とかしてみせる。」
「...一切映像に残さないでくれ。写真、ビデオ、勿論携帯のカメラでも、だ。新聞部や広報についても同様。」
「...取材は?」
「誰が受けるかよ。も同じだからな。」
「了解。じゃあ、頼むな。あ、明日の放課後会合な?」
「...わかった。」
夜のロードでからこの悪巧みの理由を聞いた。
「―――って理由があったんだって。」
俺とは遊園地のフリーパスのために売られたらしい。
「遊園地なんていつでも行けるだろ?!俺たちを巻き込むなよな。
放課後に練習とか入ったらジムにいけなくなる日が出るじゃないか。」
「...でも、それを考えたら、私たちがパートナーで良かったね。家の中で練習できるから。」
「まあ、そういう考えもあるな。」
不本意だが、もう決定してしまったことだ。仕方がない。
翌日、実行委員の言ったとおり会合があった。各クラスの実行委員、キャスト、裏方の代表が集まって顔合わせってやつだ。
台本も既に出来上がっていて配られる。本当、用意周到だな。
確か『ロミオとジュリエット』のラストって2人とも死ぬんだよな。
そう思ってラストシーンに目を通す。
...なんだ、このふざけた脚本は。
隣に座っていたが俺の台本を覗いてきて、固まった。
「すみません、ラストシーンなんですが。」
が挙手して発言する。
「ああ、『ロミオを追ってジュリエットが自害』って暗くなるからロミオが死ぬ前にジュリエットに目覚めてもらうことにしたんですよ。」
「いえ、それはいいんです。その後!」
そう、問題はその後。
―――2人が口付けを交わし、幕が下りる。―――
こんなのだったら2人が死んで終わる原作の方がよっぽどマシだ。
何が悲しくて兄妹でこんなことをしなきゃいけないんだよ。
それでなくとも、俺は愛を語るんだぞ?!俺が!!
「あ、フリでいいですよ。」
帰ろう。
こんなのに付き合ってられない。
俺は荷物をまとめてドアに向かって歩いた。
宮原が慌てて俺の前に立ち、
「ちょっと待ってよ、宮田君。」
と、外へ向かっている俺を押し返そうとする。
残念ながら文系で女の宮原に力では俺は動かない。
宮原ごと足を進めると、
「宮田君が役を降りたら、はあのシーンを他の男子とすることになるんだよ?」
と言われて思わず足を止める。
「しかも、フリじゃなくて本当にされるかも。勿論、フリでいいって言うと思うけど舞台に立ったらキャストの世界だからね。
どさくさで本当にキスする人が相手役になったらどうするのよ?は今まで彼氏いなかったでしょ?どさくさでファーストキス奪われるのよ?!」
俺がのほうに視線を向けると、は首を傾げた。
...俺が降りたらあいつは益々降りれなくなるよな。ったく、仕方ないな。
「委員長。いくらフリでも兄妹でそれは少し問題があるように思います。ここは、『しかと抱き合う』という物に変更してはどうでしょう。」
宮原が提案した。
抱き合う...。まあ、キスシーンよりは随分マシだよな。
「...そうだね、宮田兄妹は有名だし。じゃあ、ラストは『しかと抱き合う』に変更にしよう。
最後は甘くないと盛り上がらないから、宮田君、宮田さんお願いします。」
俺が再び席に着くと、
「なんで戻ってきたの?絶対帰ると思ったのに。」
「別に何だっていいだろ。」
俺はから顔を背けて答えた。
言えるかよ、お前のファーストキスを守るためだって。...でも、本当にファーストキスか?
とりあえず、稽古が始まるのは一週間後ということになった。
はーい、宮原嬢から言われて大人しくなる宮田が書きたくなったんです。
アレが頭に浮かんだがために宮田視点まで...
ヒロインは今まで彼氏なんていませんでした。
だってあんなに容姿が整っているお兄ちゃんがいつも傍に居るんですよ?
しかも妹に近づく輩を無意識に睨んだり。
よほど神経の太い人間じゃないと無理でしょう、と思っています。
桜風
05.4.16
ブラウザバックでお戻りください