ロミオ&ジュリエット sideジュリエット ―後編―
「こ、これは...」
文化祭3日前、衣装合わせが行われた。
女子は舞台上の放送室。男子は舞台袖でそれぞれ着替えることになった。
中世の衣装ではなく、現代風というか、ファンタジー風な衣装だった。
まあ、コルセットを着けろと言われても困るけど、でも、これもちょっと...。
「宮田さんって背が少し高めだし、体も締まっているからこういうの似合うと思うの。」
そう言われても...。
一言で表すなら、『ヒラヒラ』?『フリフリ』?『どこぞのRPGのお姫様』?
と言いたくなるようなドレスだった。
こういうのを着慣れていない私としては、かなり抵抗があるんだけど...。
周りを見ると、ジュリエットほどではないものの、ヒラヒラのフリフリを楽しそうに着ているほかのキャストたちの姿が。
「、早く着替えて。練習延びて部活出来なくなるよ?」
に言われて渋々着替える。
時間が押したら私は部活ができなくなるし、今日は一郎はバイトがある。
着替え終わって舞台まで降りていくと既に着替え終わった男子たちが私たちを待っていたようだ。
男子たちの衣装は、色使いがレトロな感じがするだけで、型は現代と殆ど変わらない。
私もあれが良かった。
一郎と目が合う。お互い固まった。
「ほら、宮田君。何か一言言ってあげてよ。」
につつかれ、一郎は、
「え?ああ。...馬子にも衣装?」
はいッお約束!!
分かっていたけど改めて言われると腹が立ったから一郎の足をヒールで踏んでやった。
「お前、髪そのままなのか?」
足の痛みに耐えた一郎が口を開く。
「ううん。当日はウィッグ着けるんだって。」
私の髪は一郎より少し長いだけで、ショートヘアに分類される。さすがにこんなヒラヒラで髪が短いっていうのもアンバランスだったりする。
何より、私たちは並んだらよく似ているのが分かるから少しでも変化をつけたほうがいい。
しかし、この引きずるような服でヒールというのはかなりキツイ。
普段はジャージやジーパンにスニーカーという姿だ。慣れない物が2つも揃っていると本当に辛い。
通し稽古でも、何度もこけそうになってはロミオに助けてもらったりと散々なものとなった。
それに、足が痛い。たぶん靴擦れが出来たんだと思う。
「、ちょっといいか?」
そう言って一郎が膝をつき、私のドレスの裾を少し上げて足元を確認する。
一郎のそんな行動に、女子たちの黄色い声が飛んでくる。
...あ。一郎今、不機嫌になったね?
「宮原、絆創膏か何かないか?こいつ靴擦れ作ってる。」
「え?!ちょっと待ってよ。」
は慌てて自分のポーチを持って近づいてきた。
「ごめん、。ヒールなんてはかないもんね、忘れてた。
委員長、宮田さんヒール無しにできません?この子、どちらかと言えば背も高い方だし、ヒール無しでも舞台の上で目立つと思うんですけど。」
さすがに、担任で陸上部顧問も焦っている。
結局、ヒールの無い革靴で良いということになった。
練習も終わって、部活も休めと言われたし、も何かまだ用事があるって言うから一郎と2人で帰る。
「大丈夫か、足。今晩と明日の朝のロードも控えたほうがいいだろうな。」
「うーん。仕方ないよね。あ、一郎もそろそろスパーを控えたほうが良いんじゃない?顔のはれたロミオ...。ワイルドでいいかも?」
一郎は、「そうか?」と苦笑いした。
そして文化祭当日。
「じゃあ、行ってきます。」
「ああ、いってらっしゃい。」
「父さん、絶対に見に来るなよ。」
「分かっている。」
「絶対だからね!」
父さんに釘を刺して私たちは学校に向かった。
私たちの演劇のキャストはずっと秘密で、今日発表されることになっていた。
「、絶対見に行くからね!」
「お、ロミオとジュリエットが揃って登校か?」
学校に着くと、既に噂になっていた。
「...今日一日の我慢よ。」
「だな。」
私たちは周囲の反応に深い溜息を吐いた。
「そういえば、何で一郎ファンクラブの人達、私のジュリエットに賛成したんだろ。私、あの人達に結構嫌われているでしょ?」
「んー?」
舞台は午後からなので私とは2年生の先輩のクラスの企画した喫茶店でお茶をしていた。
「そりゃ、と宮田君がラブストーリーを演じてもロマンスが生まれないからでしょ?
他のどんな女子でもその可能性があるけど、兄妹だから、ね。」
「つまり、私は安全パイだから押し付けられた、と?」
「ま、そういうこと。」
皆、色々と思惑があったみたい。
時間が来て講堂に向かう。
衣装も着替え終わって、舞台の袖からホールを覗くと超満員。
この舞台は撮影が一切禁止になっている。
手の空いているクラスメイトたちが、その旨を伝え、鞄の中をチェックさせてもらう。
携帯で撮ってもそのデータは消させてもらい、そのまま退去をしてもらう。座席も指定となっていて、生徒は学生証を見せてもらい、それを控える。
厳重な警戒となっているけど、それでも見たいと言う人がこれだけいるんだから、何と言うか...有難いと言うべきなんだろうな。
定刻どおりにブザーが鳴った。
セリフを滑ったり噛んだりという小さなアクシデントはあったけど、何とか皆で誤魔化しつつ劇が進む。
何が一番のアクシデントって、私の足に再び靴擦れができたということ。
舞台の上で痛みを訴えるわけにもいかず、何とか我慢をしながら問題のラストシーン。
ただ抱き合うだけでよかったのに何をトチ狂ったのか、一郎は私をお姫様抱っこで抱き上げた。
「ちょっと、何考えてるのよ?!」
「足痛いんだろ。いいからそのまま抱きつけ。それで幕が下りるだろ?」
不本意だけど、言われるままに一郎に抱きついた。
そして幕が下りる。
嵐のような拍手の中、委員長のアナウンスによってA組、B組合同の演劇の終了が告げられた。
スタッフも舞台に上がってきて無事終了の拍手をする。
「どうしたの、宮田君。を抱き上げて。ファンサービス?」
ホールにいたが駆け寄ってきた。
一郎は眉を顰めて、
「絆創膏くれ。こいつまた靴擦れ作った。」
と言いながら私を舞台袖にあるピアノの椅子に座らせる。一郎の後ろでは頭を抱えているウチの担任と言うか、陸上部顧問がいた。
まあ、試合近いしね。
さてさて、注目の投票結果はというと、見事1位を獲得!
『やっぱ最後の宮田君のお姫様抱っこが、ポイント高かったんだよ。』
態々電話で知らせてきたは興奮気味だった。
かくして、私たちは遊園地のフリーパスの権利を手に入れたのである。
本当はもっとイチャついてもらおうとも思ったのですが、
これ以上は宮田が怖い気がしたので、お姫様抱っこということで。
ヒロインの身長は165センチ前後と考えています。
桜風
05.5.21
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