肝試し




「ったく。何だってこんな真冬に学校で肝試しなんてやろうとするんだよ。」

冬休み前、例によってA組B組合同で肝試しを企画した奴らが居る。

まぁ、その企画した奴らって言うのは文化祭の時の実行委員たちでこいつらが集まるとろくな事がないということが理解できた。

自由参加だし欠席しようと思っていたら宮原から電話があって、


   『いいの?お兄ちゃん。は行くって言ってたよ。暗闇で二人きりになる男女。

    ―――きゃっ。私、怖い...

    ―――大丈夫だ、俺がついている。

    ―――○○くん、頼りになるのね。

    ―――宮田、いや、。俺は前からお前のことが...

   なーんて青い春が展開されちゃったりして!』


とか楽しそうに言いやがった。

分かったよ、行けばいいんだろ?!

...でも、今冷静になって考えてみると、ペアってくじ引きなんだよな。俺が参加しても、なあ?



一郎は欠席すると思ったのに、何故か参加している。

その上不機嫌。

自由参加だったんだから嫌なら欠席すればよかったのに...

隣で腕を組んで溜息を吐いている一郎を見上げて首を傾げていると箱を持った実行委員が近づいてきた。

女子はで、男子は...誰?

「はい、宮田兄妹くじ引いて。ペア決めるから。」

「最後残ったのでいいよ。」

「俺も。」

    「
いいから。少しでも宮田君と当たる確率上げてって向こうの女子から迫られているんだから。

が耳打ちしてきた。まあ、の顔も立てないと、ね。

「じゃあ。」

箱の中に手を入れて紙を一枚取り出した。

「宮田君も!」

に強く言われて、溜息を吐きながら一郎も箱の中に手を入れる。



「せーの。」

の掛け声で同時に折られていた紙を開く。

「「24。」」

どうやら俺のペアはらしい。周りに集まっていた奴らがざわつく。

「...本っ当に、宮田兄妹は双子なんだねぇ。」

宮原は感心した後、他のやつらにくじを促し始めた。

ルールが説明された。

2組ずつ、前の組から5分遅れで入って行くらしい。

入り口で渡された紙の指令に従って行動をしてゴールを目指す。タイムと任務遂行の完璧さを競う物だと言う。

「一郎、1位のペアには花火だって。」

「...欲しいのか?」

「うん。花火したい。」

...仕方ない、頑張るか。



私たちの順番は一番最後だった。つまり2時間近くこの寒空の下にいたことになる。

入り口で懐中電灯と紙を渡された。

「何て書いてあるんだ?」

懐中電灯で私の手元を照らしながら一郎が聞いてくる。

「えっと、『音楽室の音楽家の写真の数を数えて、1−Bの教室の黒板にその数字と自分たちの名前を書く。

その後、教卓の上においてある封筒の中の紙に書いてある指令にしたっがってゴール』だって。」

「ちょっと距離あるな、走るぞ。」

「OK。」

一郎はわき目も振らず、音楽室を目指していた。途中のお化けたちは一切無視。

...仕方ないよね。


音楽室に着いた。

ドアを開けると、ポローンとピアノが鳴る。その音に一郎が固まるけど私はそれを無視して写真の数を数えた。

13枚。あら、日本ではいい数字じゃない。

そのまま音楽室を出て行こうとしたら入り口のカーテンの陰に隠れていたお化け役の(しっかりそれらしいメイクをしている)人が満を持しての登場。

さすがに私もこれには驚いたけど、

「行くぞ。」

一郎が私の手を引いて走っていく。

一郎は努めて冷静を装っていた。 一郎の顔を窺うと、やっぱり涙目になっていた。

...こういうの苦手だもんね、一郎は。

夏に心霊特集とか見ていたら無言でチャンネル替えるし、ホラー映画を見てたらいつの間にか姿が見えなくなる。

だから今日のこれにも欠席すると思ったのにな。何で参加したんだろ?



1−Bの教室に着くとが黒板に『13人』と書いて自分の名前を書いた。俺もその隣に名前を書く。

「大丈夫?もうやめて出て行く?」

「最後までやる。」

俺は意地になる。

こんなかっこ悪いままで終われるかよ。

は肩を竦ませて教卓の上の封筒に手を伸ばした。

「『小会議室でキャッチボールをしている人達のボールを奪って、それを持ったままゴール。』だって。」

「得意分野だな。」

「だね。」

俺たちは小会議室に向かって走った。


小会議室には仮装した奴らが3人居た。

「宮田か。」

「宮田だな。」

「宮田さーん。」

最後の奴はヘラヘラとに手を振っている。

「ボール頂戴?」

はそいつに少し首を傾げて猫なで声を出す。

「ん〜、そうだなぁ。キスしてくれたらあげるよ。」

「一郎、全力で奪るよ!」

「当然。」

俺とはファイティングポーズを取った。

「さあ、早く始めようぜ。」

しかし、一人がボールを弄んでいるだけでキャッチボールをしようとしない。

「...一郎には勝てないから初めから逃げてんの?」

このの一言にムキになったそいつがボールを投げた。

俺はそれをそのまま右手で掴み、

「行くぞ。」

に声を掛けて部屋から出る。

「じゃあね。」

もそれに続いた。

ボールキャッチなんてボクシングの練習でたくさんやってるからな、俺もも。


殆ど走りっぱなしだったからゴールした時には体が温まって暑いくらいだった。

それでも肝試し実行委員の用意してくれていた温かい紅茶がおいしい。

私たちは走っていただけあってかなりの好タイムだ。まぁ、アレくらいの花火で本気になる人が少ないのかも。

1時間後、全てのペアがゴールをして実行委員のチェックも終わり、順位の発表があった。

私たちは頑張った甲斐もあって1位を獲得!!


花火を手に上機嫌で家に帰る。

「良かったな。」

「うん、ありがとう。今度鷹村さんたちも誘ってこの花火をしようね?」

「それだと少ないだろ。」

「そっか。じゃあ、父さんと3人でやろう。」

「...風の無い日にな。」

こうして季節外れの肝試しは終了した。


腕っぷしの強い人はお化けとか幽霊が怖い。
そう思っています。鷹村もそうでしたよね。
宮田に『腕っぷしが強い』という表現があっているかは分かりませんが。

しかし、宮田は宮原嬢のいいオモチャになりつつありますな〜(笑)



桜風
05.7.16


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