中学の入学式の前日、私と一郎は睨みあっていた。
「いい?勝負は1回!!」
「分かってる。じゃあ、いくぞ。」
「「最初はグー、じゃんけんぽん!」」
「いや〜ん、負けちゃったぁ。」
「勝った...。」
「じゃあ、父さんは一郎にクラスに行けばいいんだな。」
「そだよ。良かったね、一郎。」
「ウレシイナ。」
あっはっはー。一郎、棒読み。
今までの経験から言って、大抵双子というものは同じクラスにならない。
という訳で、私と一郎、どっちが入学式の後の『ホームルーム』(って言うんだっけ?)に父さんに来てもらうかというじゃんけんをした。
何となく親に来てもらうというのは私たちは恥ずかしかったりする。
だからじゃんけんで決めた。
『負けた方が』というのだったらあまりにも父さんが気の毒だから『勝った方が』父さんに来てもらうというルールでのそれだった。
翌日、私は中学の制服に袖を通した。
小学校は制服というものがなかったから、セ−ラー服のこの制服を着ていると何だかお姉さんになったみたいで照れくさい。
部屋を出ると一郎も丁度部屋から出て来た。
「「...。」」
見慣れない格好のお互いを見て固まる。
「早くご飯食べないと遅刻するよ?」
「そうだな、入学式に遅刻はカッコ悪いしな。」
男子の制服は学ラン。
制服着ると一郎がお兄さんみたいでちょっとビックリしてしまった。
学校には家族揃って向かった。
新入生のしるしの花飾りを胸に着けてもらってクラス発表の紙を貰う。
「私、1組だ。」
「俺その隣。」
「何だ、やっぱりクラスは別々か。じゃあ、一郎のクラスのホームルームが終わったあと、のクラスにも顔を出すからな。担任に挨拶をしておかないと。」
「はぁい。」
会場で一郎と別れて指定された席に着く。出席番号は50音順。
入学式が済んでクラスに案内される。
どうでもいいけど私は少し緊張をしているらしい。...らしくないな。
クラスで担任と副担任の自己紹介があって、教科書が配られる。
生徒も名前だけの自己紹介をする。詳しい(?)自己紹介は後日するらしい。一応、名前だけは知っておかないとっていう意図なんだと思う。
私の後ろの席の彼女は『宮原』というらしい。
『何となく、私と波長が合いそうだな』というのが第一印象。
ホームルームが終わった。一郎のクラスはまだ終わっていなかったようだ。
どうせこっちに挨拶に来ると言っていたからこのまま教室で待つことにした。
あ、担任を引き止めとかないと。
担任を引き止めに行こうと席を立ったとき、丁度隣のクラスも終わったらしい。
父さんが来て担任と話を始めた。
「。結構教科書って多いんだな。」
「だね。お兄ちゃん、持って?」
「いーやーだ。こういうときだけ兄貴扱いするな。そういえば...は部活、するのか?」
「一応、考えているのはある。見学して決めるけどね。」
「そうか。」
一郎と話をしていたら父さんの話も終わったらしく、
「じゃあ、もう帰るか。」
と言って父さんが歩き出す。
すると、
「キャー!!」
という歓声(?)が私のすぐ後ろから飛んできた。
何事かと思って振り返ると、誰かのお母さんが嬉しそうに胸の前で手を組んでいる。
...何だろ?
「宮田さんじゃないですか?私ファンだったんです。ああ、こんな所でお会いできるなんて。」
どうやら父さんの昔のファンだった人らしい。覚えてるもんなんだ、凄いな...。
「それは、どうも。」
父さんも少し嬉しそうにしている。
「私ファンクラブに入っていたんです。引退されたときは本当に残念でした。」
...ファンクラブなんてあったんだ。
一郎にも作ったほうがいいのかな?本人凄く嫌がりそうだからきっと計画倒れだろうケド。
「お母さん、いきなり失礼だよ。」
たぶん娘の彼女が母親のその人を止めている。...あ。
「誰?知ってるのか、。」
一郎が眉に皺を寄せながら聞いてきた。
「宮原さん。私の後ろの席の子。」
「ふーん。」
彼女は私たちの視線に気付いて会釈をしてきた。一応私たちも返す。
「ごめんね、お母さんがうるさくて。」
お母さんを止めるのは無理だと諦めたのか、彼女が私たちの傍まで来て話しかけてきた。
「いいよ。父さんも嬉しそうだし。宮原さんだよね、宮田です。こっちは弟「兄貴だ!」
「...こっちは、一応、兄の一郎。」
「双子なの?こんにちは、宮原です。似てるね、2人とも。」
一郎は会釈するだけだった。ホント、愛想がないな。
「まあ、よく言われるかな。私のことは名前で呼んで。こっちに用事があるときとか不便でしょ?」
一郎を指差しながら話をした。
「じゃあ、私も名前で呼んで。良かった、ってなんだか私と合いそうだなって思ってたのよ。」
「ホント?私も、とは波長が合いそうだなって思ってたんだ。」
私のすぐ傍で一郎が「波長が合うって何だよ」と静かにツッコミを入れていたけどそれは聞かなかったことにする。
のお母さんも一応落ち着いたらしく、帰れることになった。
「じゃあ、また明日ね。」
「うん、明日。」
正門でと別れて家に向かう。
「父さん。凄いね、ファンの人ってまだ父さんのボクシング覚えてるんだ。」
「そうだな、正直嬉しいことだよ。」
「一郎もそういうボクサーにならないとね。心に残るボクシングをする、ボクサー。」
一郎は「大丈夫、分かってる。」っていうように、何も言わずに私の頭に優しく手を置くことで応えた。
宮原嬢との出会い。
ヒロインの直感はあっており、この先も長い付き合いとなるのでした...
てか、彼女のお母さんが父郎のファンって...(笑)
桜風
05.8.20
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