うかつ発言に要注意




日本に帰ってきて初めての夏、いつものように家にいたときそれがふと目に入った。

だけど、何となく...。

 
ふにっ

「何すんのよ!!」

ストレートパンチがくるけど当然にかわす。だけど、相変わらず鋭いパンチを打つよな、こいつ。

「いや...。って少し太ったか?」

「...ぶん殴る。」

穏やかでない言葉がの口から漏れたあと、凄い勢いで一切の手加減なしで殴りかかってくる。何とかそれを全てかわしつつ一応声を掛けてみる。

「おい、ちょっと待てって。が痩せているっていうのは変わらないから。ただ少し前より肉が付いたんじゃないかって言ってるだけって、..おい、聞けよ。」

俺がフォローしているのに何故か余計に力を込めたパンチが繰り出される。

いい加減、静観していた父さんも見兼ねたのかを止めに入る。

「止めなさい、。」

父さんに羽交い絞めされる形になったは、

「...はい。」

奥歯をぎりっと噛み締めて拳を止めた。

そのままふいっと俺から顔を背けて部屋に帰って行った。

「父さん、俺何か悪い事言ったのか?」

「...お前は本当にボクシング以外はダメなんだな。まったく。」

溜息混じりにそう言いながら答えもくれず、そのまま父さんも部屋に帰って行った。

何だったんだ?



翌日からは思いっきり俺を無視する。

夜、帰るとはいなかった。夕飯は父さんが作ったらしい。

は?」

「まぁ、用事が出来たらしいぞ。」

そう言って父さんは夕飯を食べ始めた。

大学生ってのも大変なんだな。


少し遅い時間にが帰ってきた。

「遅かったな、ロードどうする?」

返事がなかったから今日は止めるのかなと思ってたら部屋でジャージに着替えて降りてきた。やっぱり無言のままシューズを履く。

そのまま俺を振り返ることなく出て行った。

走っている間、話しかけても一言も答えがなかった。

...やっぱ凄く怒ってるんだよな。何でだ?



それから一週間くらいたったある日、ジムでロードに出ていると後ろから声を掛けられる。

「宮田。」

「...木村さん。」

「よ、久し振りだな。...お前、ちゃんに何か怒らせることでもしたのか?」

そんな事を言われた。

「いや、別に。何もしてないつもりですけど、どうして木村さんはが怒ってるって知ってるんですか?」

俺の疑問に木村さんは苦笑しながら

ちゃん最近ジムに来てんだよ。この間突然来てな、『ジムで体動かしたいんです!』って言ってさ。結局会長も押し切られてジムで運動してもいいって許可出したんだ。渾身の力を込めてサンドバッグ叩きながら『一郎の馬鹿!!』とかって言ってたぜ?お前何したんだよ。」

、鴨川に行ってるんですか?何でだろ。すみません迷惑かけてるみたいで。」

「いや、それは別にいいんだよ。女の子がいるほうが華があっていいだろ?それよりも、俺らがどうしたのかって聞いたら、『ダイエットです!』って凄い剣幕で睨まれたぜ?心当たりとかないのか?」

ああ、なるほど。

「一週間くらい前にの腹の肉抓んでみたら凄い勢いで殴りかかられましたね。何がいけなかったんですかね?」

木村さんが足を止めて項垂れた。一応、俺もその動きに合わせて足を止める。

「何ですか?」

「いや、理由が理由なら俺が一応フォローでもしておいてやろうかなって思ってたんだけど、これはダメだな。」

「何故ですか?」

「普通女の子の腹の肉なんて抓んだりしねぇよ。何だってそんなことしたんだよ。っつうか、良く抓めたな。無いだろ、そんなの。」

「いや、何となく、目に入ったから。見慣れないものを目にしたら気になりませんか?それに少し抓めるくらいだし、痩せてるって事に変わりないじゃないですか。」

「女の子はそういうのに敏感なの。これは、ちゃんの気が済むまで刺激しない方が賢いぞ?」

「そういうもんですか...」

「そういうもんだ。お前ってボクシング以外本当にダメなんだな。」

「父さんにも言われましたよ。」

「だろうな」と言いながら木村さんは笑っていた。



そんな会話の数日後、が声を掛けてきた。ダイエットは終わったらしい。

「もういいのか?」

「おう!どうだ!」

...腹を見せてくるな。木村さんのアドバイスって何か信憑性がなくなってきたな。

「そういえば、って体重何キロまで落としたんだ?」

が口にした数字を聞いて、

「少し重いな。」

と言った。見た目もう少し痩せてるように見えるって...

「ぶっ飛ばす!」

考えていたら、この前みたいにがファイティングポーズを取って本気で殴りかかってきた。

ちょっと待て!今回は腹の肉なんて抓んでねぇぞ?!

「ちょっと聞けって、見た目ほど痩せてないって言う意味で...」

俺たちのこのやり取りを見ていた父さんが溜息を吐いて居間から出ていった。



その後、予想通りは1週間以上口を利いてくれなかった。

聞いた話によると、はバイトの無い日は再び鴨川ジムでサンドバッグを叩いていたらしい。もちろん、『一郎の馬鹿!!』という掛け声つきで。




お風呂上りに自分のわき腹を摘まんでみたときに浮かんできた話です(笑)
アレですね。
一郎さんにそんなデリカシーは期待しないほうがいいですよね(爆)


桜風
05.9.17


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