彼が料理をしないワケ




は部活の合宿。父さんは用事で出ている。

2人とも今日帰ってくるけど、やっぱり疲れているよな。

ができるんだ、俺にだって出来るはず。と言うわけで今日の夕飯は俺が作ることにした。

ジムでの練習を終えて食材を買いに行く。

とりあえず、学校で作ったことがあるカレーでいいか。

そう思って買い物を済ませた。


箱に書いてある通りに作ってもな...オリジナリティに欠けるよな。

とりあえず、隠し味とか色々言われているからそれも入れてみよう。


カレーひとつがこんなに大変だなんて思っていなかったけど、何とか作ることが出来た。は殆ど毎日夕飯作ってるし、が出来なかったときは父さんが作ってくれていた。俺、楽しすぎだよな。今度から俺も作った方がいいだろう、なんて思う。


7時過ぎに2人は揃って帰ってきた。

「ただいま〜。」

「ただいま、カレーの匂いがするな。」

「おかえり、作ってみたんだ。」

「そっかー、それは楽しみ。荷物置いてくる。」

嬉しそうにが言って自分の部屋に帰っていった。


揃って食卓について手を合わせる。

「「「いただきます。」」」

2人の反応が気になって見守っていると、父さんが盛大に吹き出した。はむせている。

...そんなに辛かったかな?一応中辛にしたんだけど。ああ、隠し味が利きすぎたのか。『隠し味』になってなかったってことだな。

「い、一郎。これは味見したか?」

「そういや、忘れてた。」

「何入れたの?」

「ジャガイモ、人参、玉葱、豚肉だな。」

「それ以外何か、たくさん入れたでしょ?ていうか、まず自分で食べてみなよ。」

が涙目でそう言ってくるから俺の皿に盛ってあるカレーを口に運ぶ。

な、何だこれは?!『これをカレーと呼ぶのはカレーに失礼』というものになっている。

「で、何入れたの?」

「芥子...蜂蜜。あと、バターと醤油とソース、ケチャップ。」

2人が絶句する。隠し味にいいって聞いたもの全部入れただけなのに...

「一郎、それって...」

顔を引きつらせながら父さんが聞いてきた。

「隠し味にいいって聞いたことがあったから...。、もう食うなって。捨てよう。」

気が付いたら、正面に座っているが涙をぼろぼろ零しながらカレーを口に運んでいる。

「お皿に盛られてるのだけは食べる。1回お皿に盛られたら責任持たないといけないんだから。」

そういや、小さい頃母さんがそんなこと言って食わせてたよな。


結局夕飯は出前を取って済ませた。

食器を洗っているを手伝っていると、

「...一郎さんや。」

と声を掛けられた。

「何だよ。」

「私と父さんの帰りが遅いときでも、君が夕飯を作ることを禁止するよ。」

「や、でも。練習すれば「いい!大丈夫。一郎の練習に付き合ってたら体が壊れる方が先な気がするし。」

俺の言葉を遮ってが態々俺の目を見て言ってきた。仕方ないか...



その後、二度と俺が独りで食事を作ることは無くなった。時々手伝いくらいはするけどな。




宮田家では一郎さんが食事を作ってはいけないというルールがあります。
その原因となった事件がコレ(笑)
隠し味って全部入れたらおぞましいものになりますよね、きっと...


桜風
05.10.15


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