掃除が終わってゴミ捨て当番となっていた私はちょっと近道をすることにした。
いつもは人通りの無い校舎の間。
しかし、珍しく話し声が聞こえてきた。
「宮田くん、付き合ってください」
一郎ですか?!
「悪いけど...」
思わず回れ右をしてしまった。
な、何だアレは?!
何であんなに堂々と「悪いけど」って言えるんだ?
慣れてるのか、一郎さんや...
ゴミが入ったゴミ箱を持って思わず教室まで戻ってしまった。
「。皆待たずに帰っちゃったよ。って、ゴミ捨て場、忘れたの?意外に方向音痴だね」
「勝手に私の設定を作らないように!って、。あの、つかぬ事をお聞きしても?」
「ええ、宜しくってよ」
お嬢様風に微笑を浮かべてが答えてくれる。
「我が弟の一郎さんは、おモテになるのですか?」
「...今更?!私カンチガイされて結構苛められてたときもあるんだよ?」
「だって、あんな中坊...」
だって、だってさあ??
「も十分中坊じゃん」
「いや、私が中坊なのは良いのよ。でも、一郎、中坊だよ?」
「双子だから、2人とも中坊でしょう?何か不都合でも?」
冷静なのツッコミが来るけど、でも...
「いやいやいやいや。...あれ〜?」
「つまり、は。見たこと無い宮田君を見てしまって困惑したんだね。うんうん、分かるよ。でもね、宮田君を思い浮かべてご覧?黙っていれば、イケルと思わない?」
思い浮かべてみることにした。
宮田一郎。
無口で無愛想。
家事は出来ないし、手伝いが時々邪魔になることだってある。特に料理中。勿論、手伝おうという姿勢には感謝するけど。
ボクシングで世界を獲れる予定だけど、それはまだ先。
つまりは、今の一郎はただのアマチュアボクサー。勿論、何度も言うようだが、いつかは世界チャンプ。
因みに、ボクシング以外の話題にはついて行けず、ホラーが苦手。
「さん」
「何でしょう?」
「やっぱり分かりません...」
「そっか。じゃあ、それで良いんじゃない?『顔が良いよね!』とか言われたらどうしようかと思ったけど。ところで、。この間3年の先輩に告白されていたじゃん。それってどうなった?」
「お断りしたよ。だって、忙しいし。ボクシングを知らないみたいだし」
「あのさ、も宮田くんだけの事をボクシング馬鹿って言えないよ。何、その基準は?」
「だって、自分の好きな事を共有できないと楽しくないでしょう?」
「そりゃ、そうだ。じゃあ、ま。改めてゴミ捨て行きましょうか。もう流石に居ないだろうし」
そう言ってがゴミ箱を持って教室を出ていく。
「何だよ、まだ掃除終わってなかったのか?」
階段で一郎に会った。
「うん、教室で話し込んでたからね」
が答えると、一郎は理解できないという顔をする。
「何で、女って話すのが好きなんだろうな」
そう言いながら一郎は私たちの持つゴミ箱をそれはそれはさりげなく自分で持った。
「話したがらない男の子の方が私には不思議だよ。ね?」
「そうだねー。私が居なかったら我が家は会話があったかどうか...あ。ボクシングのことばかり話してそうだね」
「がいたって、それは変わらないだろ?いつもだってボクシングの話ばっかりじゃないか」
「あのさ、一郎。重いから良いよ、それ」
ちょっと気になったから言うと、
「だから、俺が持ってるんだよ。曲がりなりにも、俺はボクサーだしな」
と目が合った。そして、が笑う。
そうか。
そういうことか。
「...この天然タラシめ」
小さく呟いた。
何だかちょっと悔しい。
「、何か言ったか?」
「ううん、何にも。今日はお醤油買って帰ってね」
「OK」
そっか、一郎って意外と優しい奴だ。
いや、自分が『ステキ』と思っていない人のそういう場面に遭遇したら驚きますよね?
てか、身内のそういう現場に遭遇しても気まずいというか...
ヒロインは一郎さんのよさがまだ分かっていないみたいだな。
私がじっくり時間を掛けて滔滔と述べて進ぜよう!(笑)
桜風
05.12.15
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