オトメの事情 ―前編―





元気なに手を引かれながら行った先には、『いかにも』な海の家。

へぇ、本当にこういう感じなんだ...

「こんにちはー!」

店内に声を掛ける。

「ああ、君たちが宮原君の紹介の子達だね。早速だけど、仕事の説明するね。あ、エプロンも。えーと...」

突然わたわたし始めた。

「ねえ、ちゃんと連絡行ってたの?」

「たぶん...でもホラ、私たちのことちゃんと分かったみたいじゃない?」

こそこそと話をしてたらお店の奥に行っていたさっきの店長さんらしき人が呼ぶ声がして慌てて走っていった。

一通りの説明を聞いて、エプロンをつける。

「そういえば、ってバイト経験は?」

「ないよ。一郎と違って」

「え?!お兄ちゃん、バイトしてたの??」

「うん。接客業、って言って良いのかな?まあ、いわゆる『店員さん』なるものをやってるよ」

「写真に収めたい!それでもって、笑いたい!!」

私の肩をガシッと掴んで迫る。怖いよ...

「諦めて。私が教えたってことになったら凄くうるさそうだから」

の手を静かに外した。

不満そうなをなるべく見ないようにして、店内を見渡す。

中々の盛況っぷりだ。

「ねえちゃん!」

お客さんに声を掛けられてさっきまで拗ねてたは「はーい!」と元気よく返事をしてそちらへ走っていく。

流石だ...

は今まで密かにアルバイトをしてきたと言っていた。

私も呆けているわけにもいかず、見よう見まねで接客を始めた。


休憩時間。

お店で貰ったラムネを日陰で飲んでいるとこれも『いかにも』な男たちが私たちを囲った。

ああ、面倒くさい...

「ねえねえ。えーと、宮原ちゃんと宮田ちゃんだったよね。いつ帰るの?ほら、今日花火大会でしょ?一緒に行かない?」

「だれ?」

「さあ?あ、でも、さっき店内で大騒ぎしてたお客さんかも。てか、『宮田ちゃん』って聞いてお兄ちゃんを思い浮かべちゃった...頭にリボンつけてるの」

「き、気持ち悪いコト言わないで...」

私たちがこそこそ話しているのが気になったのかしつこく声を掛けてきた。

「ねえ、いいだろ?絶対に楽しい夜にしてあげるからさ」

「いりません」

「間にあってます」

そう答えるも、中々引き下がらない。

一発寸止めストレート入れてやろうかと思って立ち上がった途端、目の前の男の肩を誰かが掴んだ。

「いい加減にしとけ。じゃないと、後ろの男に睨み殺されるぜ?何なら、俺様がシメてやってもいいぞ!?」

聞き覚えのある声に驚いた。

「鷹村さん?!」

「よお、。奇遇だな、こんなところで会うなんてよ!なんだ、ハイレグビキニじゃないのか...」

...『ハイレグビキニ』って響き、懐かしいような気がする。

でも、鷹村さんが居るってことは...

恐る恐る鷹村さんの後ろを見ると、木村さんと青木さんに抑えられている一郎の姿が...

「お兄ちゃん、何で居るの?」

が呆然と呟いた。

でも、一番驚きなのは、私なんですけど...

凄い形相で睨んでいる一郎と目が合った彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

私も逃げたい...

取りあえず、目の前の害虫が消えたことによって一郎も落ち着き、木村さんたちに解放される。

いや、もうちょっと抑えててください。



「はい」

「何でこんなところに居るんだ?」

「オトメの事情です」

「宮原も」

「オトメの事情その2です」

この居た堪れない空気に耐えることが出来ず、木村さんに助けを求めてみる。

鷹村さんと青木さんは混ぜっ返して遊びそうだから最初からあてにしてはダメね。

私の無言の訴えに気付いてくれた木村さんが

「ほら、宮田。いいじゃないか。俺たちだって海に居るんだし」

と何とか宥めにかかってくれた。

「俺は合宿に来たんですよ。それなのに、朝練したら海に出て...」

「バカ野郎、宮田!!こんな海の近くに来て、何で海で遊ばないんだ!そんなの、浜辺のビキニのねーちゃんたちに失礼だろうが!!」

いや、うん。鷹村さん。大声出さないで。恥かしい...

「えーと、つまり。一郎はナンパの餌にされてるって事ですか?」

「ああ、中々食いつきが良いんだよ」

「の、割には見事に男だらけですね。どこかで女性に待ってもらってるんですか?あ。の親友で、ついでに宮田くんと友達やってます。宮原です。はじめまして」

はこのメンバーに怯むことなく話に入っていく。

「おう!宮田に友達居たんだな...まあ、なんだ。ちょうど上手くいったところに、どっかの兄馬鹿のシスコンが妹の声を聞きつけて走り出して折角のお姉ちゃんたちとサヨナラだったんだよ」

どこから聞きつけてやってきたんですか、一郎さん...

「えーと、お騒がせしました。そして、助けていただいてありがとうございました」

「いや。それより、ちゃんは遊びに来たって風じゃないね。どうしたの?」

木村さんにそう聞かれた。

流石に楽しみを邪魔してしまったのだから『オトメの事情』って言うわけにはいかずに理由を話す。

「何で木村さんには話すんだよ」とブツブツ呟いてる一郎は無視しておこう。




どういう聴力してるんだ、一郎さん!!
そして、ヒロインの親友。
気持ち悪いものを想像しないで〜(笑)


桜風
06.6.17


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