Happy Birthday!! ―Another Side―



いつものようにジムで練習をしていると八木さんの呟きが聞こえた。

「そういえば、ちゃんたちの誕生日が近いなぁ...」

そう聞こえたから声を掛けた。

「そうなんですか?」

「ああ、木村君。聞こえちゃったか。そうだよ、来週なんだ。毎年楽しみにしてるからね、ちゃん。でも、今年は独りか...」

「なら、オレ様が祝いに行ってやろう。」

いつの間にか俺と八木さんの会話を聞いてたらしい鷹村さんが言ってきた。

「でも、男とかいるんじゃないんスか?」

青木の言葉に鷹村さんが

「いるわけないだろ。」

何故か言い切った。

ま、なんだかんだ理由を付けてちゃんに構いたいだけなのかもしれない。

「んじゃ、俺もそれに参加します。」

「じゃあ、俺も。」

俺が便乗するって言ったら青木も参加することにした。

「一歩君はどうする?」

八木さんが一歩に話を振ってみると、

「えーと、」

考え込む。まぁ、宮田ならともかく、ちゃんの誕生日祝うんだもんな。あんまり面識ない人の誕生日を祝うってのもな。

「宮田の家に上がれるぞ。」

鷹村さんが言うと、

「行きます。」

即答した。こいつやっぱり本当に...

「僕も行くから。会長にも声を掛けてみるよ。」

そう言って八木さんは事務室に戻っていった。


というわけで、8月27日。練習が済んだあとにちゃんの家に行くことになった。時間が少し遅いけど、こればっかりはなぁ...



27日、練習が終わって会長たちを呼びに行ったら

「ワシらは行かん方がいいじゃろ。が余計な気を遣うかもしれん。誕生日ケーキを注文しておいたからそれを持って行くといい。」

といわれ、ケーキの引換券を渡された。

俺は一旦家に帰り、お袋に頼んでおいた花束を持ってちゃんの家に向かった。


インターホンを押しても返事がない。

「バイトってことはないですか?」

「何?!はバイトなんぞやっているのか?」

「...もしかして、誰も連絡入れてないんですか?」

一歩が尤もな疑問を口にする。しかし、

「前以て言ってたら驚かないだろうが!?」

と鷹村さんが威張りながら言うから、もう、これはどうしようもない。

「携帯に掛けてみましょうか?」

ちゃん携帯持ってんのか?でも何で木村がそれを知ってんだよ。」

「この前ロードの途中で会ったときに聞いたんだよ。ちゃん朝は走ってるらしいぜ?」

そう言いながらコールするが中々出てこない。

「だめですね。出ません。」

「じゃあ、庭に回ってみるぞ。」

鷹村さんは諦めずに家宅侵入まで始めた。

...警察呼ばれたらシャレにならねぇよな。


俺たちが庭に回るとちゃんの姿が見えた。どうやら風呂に入っていたらしい。まあ、女の子の家を訪ねるには非常識な時間だよな。

鷹村さんが窓をバシバシ叩いてちゃんを呼ぶ。

俺たちに気付いたちゃんは驚いた顔をして玄関を指差した。それに従い、再び玄関へ移動する。


「何だよ、。もう風呂に入ったのかよ。邪魔するぞ。」

と鷹村さんが返事も聞かずに家の中に入っていった。

「邪魔するよ。」

と青木も鷹村さんに続いて居間に向かい、

ちゃん、はい。お邪魔します。」

花束を渡して俺も家に上がらせてもらった。

ちょっとしてちゃんがパタパタと戻ってきた。

「で、どうしたんですか、皆さん揃って。しかもこんな時間に。」

やっぱり迷惑そうにちゃんが言った。

そんなことを気にすることなく、鷹村さんが

「つれねぇなぁ。同門の誼じゃねぇか。」

「私が辞めた後に入ってきた『同門』ですけどね。皆さん減量は?水物大丈夫ですか?」

問答するのも面倒なのか、諦めた様子のちゃんが聞いてきた。

「オレ様はコーヒー、小物どもは白湯でいいぞ。」

「じゃあ、皆さんコーヒーでいいですね。」

鷹村さんがまた何か言ったけどちゃんは無視して人数分のコーヒーを淹れてくれた。


ちゃん、これウチのラーメン屋のタダ券だよ。今度食べに来な。メシ作るの面倒くさいときとかにさ。」

「...はぁ。」

青木がそう言ってタダ券を渡すけど、ちゃんは腑に落ちない感じで受け取る。

...もしかして、今日が何の日か気付いてないとか?

「じゃあ、これはオレ様からだ。ありがたく受け取れ。」

鷹村さんが何やら筒状の物を渡してきた。

「どうも...?」

手にとったちゃんがそれをまじまじ見る。それを広げてみると、やっぱり鷹村さんのちょっと前の試合のポスターだった。

んなもん、プレゼントするなよなぁ...

「ちゃんと飾れよ。そうだ、今すぐ飾れ。の部屋は何処だ。」

逆らっても無駄と悟っているちゃんが諦めて部屋に案内してくれた。


「ほほーう、ここがの部屋か。」

部屋の中を見渡し、鷹村さんが無駄に偉そうに言った。

「へぇ、かわいいね。」

ちゃんの部屋は暖色系の色で纏まっていて可愛い小物とかも置いてあった。

でも、ただひとつ、この部屋に似合わないのが、壁に掛けてあるボクシンググローブ。

「女の子の部屋って感じするよな。」

「宮田君の部屋もこんな感じなんですか?」

...やっぱ気になるのはそこなんだな、一歩。というか、宮田の部屋が可愛かったら気持ち悪いだろ?

「いや、一郎の部屋は何もないよ。飾りっ気のない部屋だから。」

「よし、じゃあ次は宮田の「ダメです。」

ちゃんが鷹村さんの言葉を遮って拒否の意思を示す。

「いいじゃねぇか、いないんだから。」

鷹村さんがそう言うけど、

「だから、ダメなんです。本人いないのに部屋の公開なんてできません。あの部屋は私が預かっているんですからいい加減なことは出来ません。」

と断固拒否の姿勢を崩さない。

「じゃあ、仕方ねぇな。今日だけは言うこと聞いてやるよ。」

一応、この家に何をしに来たのか覚えていたらしい鷹村さんが宮田の部屋を見ることは諦めた。

宮田の部屋を見るのは諦めたけど、今度は鷹村さんが箪笥に手を伸ばす。

ちゃんが慌てて

「うわぁ。そこもダメです。部屋の中の物を勝手に触らないでください。触ったら警察呼びますよ。適当に理由をつけて突き出しますからね!!」

と釘を刺す。電話が鳴っているのが聞こえてきた。

ちゃんは慌てて下に降りて行った。


舌打ちした鷹村さんがふと、何かを見つけてニヤリと笑う。

机の上にあるパスケースに手を伸ばした。

「ちょ、鷹村さん。勝手に見たら悪いですよ。」

無駄だと思うけど一応止めてみた。

「うるせぇ!バレなきゃいいんだよ。こういうのには結構男の写真が入ってたりするんだ。宮田のいない間にに手を出した男のツラ拝んでみたいと思わねぇのか?!オレ様は見たい!!」

予想通り、無駄だった。

でも、つい先日、男なんていないって言い切ったのに、相変わらず矛盾したコト言うなぁ...

...でもまあ、俺も興味はある。

鷹村さんの手の中にあるパスケースを皆で覗く。

鷹村さんが開いたそれには、予想通り写真が入っていた。

でも、男の写真じゃなかった。

そっくりな小さい子2人とその両親。

ちゃんの小さい頃の家族で撮った写真だった。

「お袋さんにそっくりだな、ちゃん。」

「宮田君もですね。...どっちが宮田君ですかね?こっちの元気そうな方ですかね?」

ちゃっかり覗いていた一歩が口を開く。

「いや、逆だろ。前、八木さんが言ってたんだよ。宮田はガキの頃はちゃんの後ろをついて歩いていたらしいぜ。宮田がしっかりしてきたのは、両親が離婚してからだったんだと。この写真はお袋さんがいるからまだ大人しかったときのものだろ?」

「...まあ、なんだ。これは見なかったことにするぞ。いいな!」

勝手に見ようと言ったのは鷹村さんなのに...。

でも、確かに見なかったことにした方がいいだろうな。

そんなことを考えていると鷹村さんがポスターを広げて貼る場所を考えている。

結局、必ず目に入るだろうということでドアに貼った。

まあ、確かに目に入るけど、きっと俺たちが帰った途端に剥がされてるだろうな。


少ししてちゃんが戻ってきた。

「どうだ、ここなら必ず目に入っていいだろ。よし、じゃあ、下に降りるぞ。」

嬉しそうにそう言って鷹村さんが部屋を出て行った。俺たちももそれに続いて出て行く。


下に降りたら冷えているコーヒーをちゃんが淹れ直してくれる。

「手伝おうか?」

そう声を掛けると

「大丈夫ですよ。そうそう、お花、ありがとうございました。お礼を言うのが遅くなってしまって...」

「いや、普通は呆気にとられるって。本当は会長や八木さんも来るはずだったんだけど、ちゃんが余計な気を遣うんじゃないかってやめちゃったんだよ。というわけで、会長の予算でケーキ買って来てるから食べよう?」

「本当ですか?じゃあ、お皿とか用意しないといけませんね。会長たちも来てくれたら良かったのに...。会長以外、鷹村さん止めらんないんだから。」

「たしかに。」

楽しそうに困った顔をしながらちゃんがぼやいていた。


結局ケーキを食べながら宴会に発展し、日付が変わるまで皆で騒いだ。

アルコールが入ってない状態であそこまで酔える鷹村さんは相変わらずだ。


「じゃあ、俺ら帰るから。遅くまでごめんな?」

もう少し早く帰る予定だったのに、ちょっとまずかったかもしれない。

「いえ、ありがとうございました。嬉しかったです。皆さんも事故に遭ったりしないように気をつけて帰ってくださいよ?」

「オレ様がそんなドジを踏むと思ってるのか?も、戸締りしっかりしろよ。じゃあな。」

そう言って鷹村さんがちゃんの頭を乱暴にガシガシ撫でる。

そうして俺たちは宮田家を後にした。


ちゃんって自分の誕生日忘れてたんですかね?」

「まあ、そうかもな。は宮田に構いたくて誕生日を楽しみにしている節があったからな。」

意外と鷹村さんは人を見ている。


また今度何かあったらちゃんも誘ってあげよう。宮田がいない間は俺たちが兄貴だ。




しつこく誕生日をお祝い。
いや、何だか、書けちゃって。
ついでにもうアップしちゃおうかなって...
構いたがりのお兄ちゃんたちでした(笑)


桜風
06.8.28


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