年数回、イヤな日はあるけど。
アノ日ほどイヤな日は無い。
世の中の女の人たちは、自分たちが製菓会社に躍らされている事に気付かないのか!?
朝起きると、が寝不足気味に欠伸を噛み殺していた。
「おはよう」
「はよー...」
目の下にうっすら隈が出来ている。
「寝不足か?」
「うん...今日とお菓子を交換する約束だから」
そう言って日めくりカレンダーを捲る。
『14日』という文字が目に入った。
「、製菓会社の戦略に躍らされて悔しくないのか?」
そう聞くと、
「フッ甘いね、一郎」
と不敵に笑う。
「何がだよ」
「私は、製菓会社に躍らせてやってるの。分かる?ドュー ユー アンダースタン?」
「全っ然、分かんねぇ...」
つまりは、躍ってんじゃねぇか...
そんなわけで、は寝不足でフラフラになりながら朝のロードワークを終了させた。
体調悪いなら休んでいいだろうに...
学校に着くと、女子たちが浮き足立っている。
ただ、このバレンタインの女子は目が怖い。
獲物を狙う、狩人の眼と言うか...とにかく殺気立っている。
そして、これは女子に限らず男子も。
チョコとかクッキーとか何がいいんだ?
ウェイト絞れないだろう?
「それは、お兄ちゃんだからそう思うんだよ」
昼休憩、屋上に避難しているところに宮原がやってくる。
今朝のとの話をするとそう言って笑った。
「何でだよ?」
「だって、私たちの年代の男子なんてチョコを貰った数を競うんだよ?フツーは」
「数が多けりゃいいってもんじゃないだろう?」
呆れる。
「お?お兄ちゃんは本命から1個貰えれば良いというタイプですか?さすが硬派だね!!」
何が可笑しいのかまた笑う。
硬派って何だ、硬派って...
「そういや、が寝不足になってまで宮原の分、作ってたぞ」
「お!そりゃ楽しみだね」
「交換するって...」
今朝そう聞いたばかりだ。けど、今の宮原の言い方だと、
「お前は作ってないのか?」
そんな感じ。
「あ、私はホワイトデー担当だから」
ケロリとしている。
「担当って...」
「だって、楽しみは2回あった方がいいでしょう?」
そう言って笑う。
何だか良く分からないけど、楽しんでいるという事は何となく分かった。
しかし、ジムに行っても学校と似たような空気で。
「、俺様にチョコは無いのか!?」
鷹村さんが言う。
「鷹村さん、プロボクサーでしょう?有るわけないですよ」
そう素気無くが答えた。
「何だと、俺様のことが好きならチョコの一つや二つ、用意してくるのが当然だろう!」
胸を張ってそんなことを言う。
は大仰に溜息をついてその場から去っていく。
会長、八木さん、篠田さん、そして父さんにはそれぞれ用意をしていたらしく4人は嬉しそうに笑っていた。
それを見た鷹村さんは釈然としないらしく、隣に立っていた青木さんの頭を殴っていた。
帰る間際、が皆に何かを渡す。
袋を開けようとしたら、に止められた。
「家に帰って開けてください」
そう言う。
重さから言って、食べ物ではないのは皆もすぐに分かった。
皆の反応を見て満足したのか、は微笑んで帰路につく。
家に帰って袋を開けると、また袋が出てきた。
でも、それは綺麗な布で作られたお守り。
裏を見れば、『St.Valentine's Day』と刺繍してある。
「バレンタインってのは、甘いものとは限らないのよ」
そう言って笑った。
「...ちなみに、このお守りは何のお守りだ?」
必勝祈願とか大願成就とかそんなところだろう。
「そうねー、『安産祈願』?」
「誰が何を産むんだよ!」
「一郎が、何か産むの。...何産んどく?」
「産めるか!」
そう言うと楽しそうに笑う。
「昨日に作ったトリュフ。残ってるけど、食べる?」
そう聞かれた。
「じゃあ、1個だけ」
何となく、そう思った。
ある意味タブーのバレンタイン。
しかし、一郎さんがチョコを口にするなんてありえない気がします。
あ、でも。鴨川に通っているときだったらまだプロじゃないから食べれるか。
そっか...(←今気が付いた)
桜風
07.2.17
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