甘い話には裏がある





「おっはよー!」

かばんで背中を叩かれる。隣を歩いてる一郎が。

「宮原...」

それはで、勿論一郎にそんなことが出来る女子なんてこの子しかいない。

「おはよ、

「おはよ、宮田兄妹」

「「まとめて言うな...」」

私と一郎はきっと同じ表情でを見てたんだろうと思う。

彼女はお腹を抱えて笑う。失礼な!!

「朝からテンション高いな」

呆れたように一郎が呟いた。

「そうよ、だって。今日はホワイトデー!義理チョコ配ったからね。ホワイトデーは3倍返しが常識よ!!」

ぐっと拳を握り締めては天を仰いでポーズをつける。

「あっそ」

と一郎はスタスタと学校へ向かい、

「早く行こう」

と私はを促して並んで登校した。


学校に着けば、盛り上がりはバレンタインデーほどではないけどそれなりに色めいている。

好きな人にチョコを渡して、それの返事を待っている子も居るようだから。

「そういえば、お兄ちゃんは?」

「うん。買ってこようかって聞いたんだけど、『知らないやつばかりだし、必要ねぇよ』って」

「まあ、中学のときからそのスタンスだったしね。それを知らない子だって誰かしらに聞くんじゃない?大丈夫だって」

そうかなー?お礼ってのは必要だと思うんだけどな...

「それに、お兄ちゃんからお返し貰っちゃったら期待しちゃうんじゃないの?それはそれで酷よ。応える気が無いのにさ」

言われて納得。確かに、期待させるだけさせて全然興味ないって結構キツイだろうし。

「じゃあ、今日のお昼にね。腕によりを掛けて作りましたわよ、わたくし」

イタズラっぽく笑ってが言う。

「まあ!それは楽しみですわ」

お互い変な言葉遣いをして笑う。

「じゃあね!」

「うん」

階段を上りきったところで別れた。私はもう1階上だから。


昼休憩は中庭に出てお弁当を広げる。

が作ってくれたマフィンは丁度いいデザートだ。

「うわ、腕を上げましたわね。さん」

「あら、さんにそう仰っていただけますと自信が持てますわ」

「気色悪い」

私との会話を聞いていた一郎がボソリと呟く。

「あら、何か空耳が聞こえましてよ、さん」

「ええ、呼んでもないのに何かが居ますわね」

「悪かったな...」

憮然と呟きつつも一郎はお弁当を口に運んでいた。

「まあ、拗ねないでよ。お兄ちゃんにもひとつあげるから」

「いらねぇ」

「今年まででしょ?来年からウェイト絞らないといけなくなるんだから、食べときなって」

私が進めると一郎は一番小さなそれに手を伸ばした。

「ど?」と期待した目でがそれをひと口かじった一郎に聞いた。

「まあまあ、かな?」

その返事には不満らしく、半眼になって睨んでた。私は美味しいと思ったんだけどな...


放課後、部活の一環で外周をランニングしてると見慣れた3人組が走っていた。

「こんにちは」

声を掛けると3人が一度に振り返る。

「ああ、ちゃん」

「こんにちは、木村さん」

「よう、部活か?」

「そうですよ、青木さん」

「俺様に会いたくて来たのか」

最後はシカト。

「素直に『はい』と言えよ」

「はいはい」

3人がスピードを落としてきた。

ちゃん。悪いんだけど、今日の帰りにうちに寄ってくれない?」

「いいですよ?」

木村さんが突然そんなことを言う。何だろう?


部活を済ませて家に帰る途中、先ほど木村さんに言われたとおりに寄り道をする。

「こんにちは」

「あら。ちゃん。久しぶりね」

木村さんのおばさんとは顔見知りだ。

「お久しぶりです。あの、今日こちらに寄って帰るように木村さんに言われ来たんですけど...」

「まあ!もう、あの子ったら!態々来てもらうなんて、ねえ?」

ちょっとご立腹なおばさんに愛想笑いをしていたら「ちょっと待っててよ」と店の奥に下がっていった。

今お客さんが来ちゃったらどうしよう...

そんな私の心配は1分もしないうちに消える。

「はい、これ」

と手渡された花束に驚く。凄く綺麗な花束だ。ピンクやオレンジの暖色系でまとめられているそれは私の好みにぴったりだった

「え、これ...」

「バレンタインデーにあの子に何かくれたんでしょ?そのお礼だって。ジムに行く前に作って行ったのよ」

まさか、お返しがもらえるなんて思っていなかった...

「ああ、そうそう。それと、勝君がこれをって」

そう言って渡された。

真っ白な封筒だった。その中にはコインロッカーの地図と鍵が入ってる。

つまりは、そこに行け、と?

おばさんにお礼を言ってそのコインロッカーへと向かった。


ロッカーを開けると私宛のものが2つ入っている。ちょっと凝った演出に驚いた。

ひとつは小さな封筒。

開けてみると、それはお守りだった。正真正銘神社の『必勝祈願』のお守り。『部活頑張れよ』と青木さんのメッセージが封筒に書いてあった。

ありがたく頂戴する。

そして、もうひとつは即行ゴミ箱に捨てた。

そのパッケージに『いつかのために俺様からのプレゼントだ』と直接マジックで書いてあったそれは、避妊具。

捨てた後に、一郎に持って帰ってあげれば良かったかな?と思ったけど、絶対に怒られるから捨てて正解だ。


家に帰って夕飯の支度が済んだ頃、父さんと一郎が帰ってきた。

「おかえり」

「ただいま。、ジムで預かってきたぞ」

と父さんが小さな手提げ袋を渡してきた。その中には3つの包みがある。

「いいのに...」

「3人とも嬉しかったんだろう。受け取っておきなさい。それと、これは私からだ」

そう言って父さんもなにやら袋をくれた。

「ありがとう」

夕飯を食べ終わって自室に戻り、着替えてロードワークの準備をする。

ドアがノックされた。

開けるとジャージに着替えた一郎が立っていた。

「もう行く?」

「うん。けど、その前に」

と言って私に包みを出してきた。しかも、それは凄く美味しいと評判のそれで、1時間以上並ばないと手に入らない。私も一度食べてみたいってテレビを見ながら呟いたことがあるそれだ。

。前に食ってみたいって言ってただろ?」

「え、並んでくれたの?」

「どっちだっていいだろ」

そう言って一郎は私にそれを押し付けて階段を駆け下りた。

どんな顔して並んでたんだろう?


後日、偶然その並んでいる一郎を目撃した木村さんから聞いた。

逆ナンされながらずっと女の子の列に不機嫌な表情で耐え忍んで並んでいてくれたらしい。

「俺もそこの買おうと思ってたんだけどな。あれだけ宮田が頑張ってるんだから、あの店のが2つになったらありがたみが減るんじゃないかって思ってさ」

笑いながらそう言う。

何となく、その様子が想像できて少し笑ってしまった。それは、きゃいきゃいしてる女の子の列の中、一人憮然としている一郎を想像して可笑しかったからでなく、嬉しくて。

まあ、可笑しかったってのもある。否定は出来ないなぁ...




ホワイトデーバージョン。
やけに長くなってしまいました(汗)
これは、考えたんですけど。高1の冬なんですよ。
だったら、一郎さんも鴨川ジムだし、プロじゃないからチョコレート等甘いものもいけるんですよ。
後になって設定をこじつける。
猛省中です...


桜風
07.3.17


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