ひらひら





鴨川にいたときは恒例だった。

一郎がジムにいたからそれに参加するのは、私的にも吝かではない。

お弁当だって作って行ってたし。全然気にならない。

でもさ。

今、なんで私は此処にいるのかしら?

「俺に聞くな。寧ろ、俺が知りたい」

隣に座っている一郎が憮然と答えた。

例によって例の如く。

鴨川の、寧ろ『日本一』の我侭理不尽大王を止める術を持たない私たちが此処にいるのは致し方ないことだと誰もが頷くと思う。

実際、

「ごめんね。俺には止めれなかったよ」

と木村さんに謝られてしまい、怒るタイミングを逃してしまったのも事実だ。

「あのー。取り敢えず、鷹村さんが脱ぎだしたら帰って良いですか?」

木村さんに聞くと

「うん、そうして?」

本当に申し訳無さそうに頷いた。

「俺も...」

一郎がそう言いかけて

「一郎は残ってな」「お前は付き合え」

木村さんと同時に同じことを言った。

あら、意外と気が合うのかも...

可笑しくて木村さんと顔を見合わせてそして、笑うと一郎は面白く無さそうに顔を顰めた。



事の起こりは3日前。

突然鷹村さんから電話が掛かってきて、鴨川恒例のお花見するから来いと言われた。もちろん、命令形。

お断りをしたのだけど、どうやら私の日本語が通じなかったらしく、今日、いきなり我が家にやって来て強制連行された。

お弁当は要らなかった。

何故ならバーベキューだから。

...バーベキュー?

「ねえ、鷹村さん」

「おう!何だ?」

「試合、近いとか言ってませんでした?」

「まあな。オレ様は忙しい身なんだ。だから、年に1回くらい好きなことをしても良いとは思わないかね?暇人のよ」

「私は暇人ではありません。というか鷹村さんが好きな事を年に1回で留めてくれるなら世界が平和になります。それより、試合が近いのになんでバーベキューなんですか!?」

あなたはいつもウェイト絞るのに大変苦労してるでしょ!!

、肉は嫌いだったのか?」

少し、残念そうな声が返ってきた。

そりゃ、私だってお肉好きだし。けど、カロリーの事とか考えると流石にお肉ばかりを食卓に乗せることはできないし。

もしかして、鷹村さんは私に多少なりとも、本当にちょっぴりかもしれないけど。それでも気を遣って...

「じゃあ、この肉はオレ様が貰ってやる」

ああ、ホント。私この人とどれだけ付き合いがあったんだろう?

決して短くないはずだよね...

「人のお皿の上に乗っている肉をとるのはマナー違反です!!」

鷹村さんに奪われた肉を奪還しようと手を伸ばしてもこの巨体に敵うはずがなく。

それでも一生懸命腕を伸ばしているとぽとりと落ちた。

「「ああ〜!!」」

私と鷹村さんの声が重なり、そのお肉は幕の内君の愛犬のワンポの口の中に納まる。

何となく、食べる気が失せてしまった私はお皿の中のものを全て鷹村さんのお皿に移し、

「ねえ、幕ノ内君」

と一郎の隣をキープしている幕ノ内君に声を掛けた。

「はい」

「ワンポと遊んでも良い?」

「あ、はい。喜びますよ。あ、ボールとかも一応ありますけど...」

そう言って傍らに置いているボールを渡してくれた。

借りたボールを「そーら、とって来い!」と遠くへ投げる。

意外と私の肩も強いようで結構遠くへボールが飛ぶ。

ちゃんって球技も得意なのかい?」

それを見ていた青木さんが声を掛けてきた。

「いいえー、苦手ですよ」

そう答えると青木さんは首を傾げ、

「ちょっとキャッチボールしてみないか?」

と言ってきた。

別に断る理由もないから少し青木さんとキャッチボールをしてみる。

「おう、どうした青木」

木村さんが青木さんに声を掛けると

ちゃん、筋が良いぜ」

と言ってニヤリと笑う。

「へぇ」と木村さんも何故か楽しそうに笑い、

「ねえ、ちゃん。本当に時々なんだけど。俺たち草野球の助っ人やったりするんだよ。人数が足りないとき、声を掛けて良いかな?」

そう言われた。

良いかな?と言われてもルールはさっぱり分からない。

「ウチの商店街の割引券がもれなくついてくるよ」

「乗った!!」

勢いでそう言ってしまった。

青木さんと木村さんはお互いの右手をパン、と合わせてやはりニヤリと笑う。

「宮田は、どうかな?」

「球技まるっきしダメです。ボールキャッチくらいしか出来ませんよ。ボクシングの一環として、得意なだけですから」

私が答えると「ああ、やっぱり?」といった感じで木村さんが苦笑いを浮かべていた。

「でも、私野球のルール知らないんですけど」

「打って投げて走れば良いから。試合のときに説明するよ」

大雑把にも程があるな、と思う解説を聞いて、まあ木村さんが説明してくれるなら分かりやすいんだろうなと勝手に思っておいた。


ふと、賑やかになった桜の木の下を見て私はにこりと笑顔を作り

「じゃあ、お先に失礼します」

と木村さんと青木さんに挨拶をして側に居たワンポの頭を撫でてその場を去る。

後ろでは鷹村さんが大騒ぎしている声が響く。

来年は、もし鷹村さんから前以て電話があった場合。その日は前日からの家に泊まりに行こう。

そうしよう...




しまった!お花見の話なのに、全く桜の記述がなかった。
オイオイ...
自分に厳しく突っ込みを入れてやりたいです。


桜風
07.4.21


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