一郎の試合があることをに話したら、行きたいというから連れて行ってみることにした。
は私たちとの付き合いは短くないけど、意外なことにボクシングの試合は見たことがない。
ワクワクしながらついて来るに首を傾げる。
ボクシングだったら鴨川でスパーを見たことはあるしそんなに珍しいかなと思ってしまった。
そして、試合を見てつまらなさそうな表情を浮かべていた。
「何を期待していたの?」
聞いてみると
「いや、お兄ちゃんが苦戦しつつも物凄く頑張っている様をですね...」
と言いながら自分の持ってきたカメラを触りながらもじもじと言う。
「一郎の試合なんて大抵こんな感じだよ」
に言うと「それを早く言ってよ。まったく、ってば...」と恨みがましく言われた。
試合が終わってまっすぐ帰るのも物足りないから、とが言うから一郎を待つことにした。
何やら、文句を言いたいとか言っている。
一郎にしてみれば全くの八つ当たりで気の毒なことだと思う。
ホールの外の少し外れたところで待っていると何だか見たことのある人物が居た。
それが誰で、名前が思い出せないのが申し訳ない。
いや、ここはホールだし。もしかしたら誰か、ボクサーかもしれない。
体格からして木村さんの対戦相手...?ジュニアライトかな?いや、もう少し絞れるかも...じゃあ、フェザー級かな?
私の中では彼はもうボクサーってのが決定となった。
「ねえ、の知り合い?」
に声をかけられて首を振る。
確かに、彼は私の方を見ているようだ。
「自信はない」
応えるけど、彼が近づいてくる。
「何や、宮田やないか」
か、関西弁!?
えーと、誰だ。何だ...?
私の苗字を知っている。ということは、知り合い!?
でも、知り合いに関西弁を話す人なんて居ない。
「何や、相変わらず無視かい」
不機嫌に呟く彼に少しだけ焦ってしまう。本当に知っている人物なら、これは本当に失礼だ。
「...あの、どちら様でしょうか?」
「何や、感じ悪いな!...ん?何や、声もちょっと違うな。さっき全然打たれてへんかったけど、どこか調子悪かったんか?」
いや、声は..うん。声変わりがなかったから、私。
「えーと、だからですね」
「言うか、女連れって良いご身分やな」
は「はぁい」とヒラヒラ手を振っている。
完璧一郎と勘違いされているとこれで決定打となった。
「あの、間違えていると思うのですが」
そう言うが、彼は聞く耳を持っていないようで彼の中で私は『=一郎』ってのは決定しているようだ。
彼は腕組みをして首を傾げた。
「しっかし、お前何や体格ちょっとおかしないか」
やっと気づいてくれた様子に安堵したが、次の彼の行動に私の思考回路がストップした。
...ぶっ倒す!!
頭の中でゴングが鳴り、距離を取って拳を胸の高さまで上げた。
千堂が何をしちゃったかは何となく想像できるものと思います。
前後編で終わるか、それとも前中後編で終わるかはまだ未定です。
桜風
08.1.1
ブラウザバックでお戻りください