Fighting!―中編―





宮田の試合があるから、冷やかしに試合を見に行くことにした。

試合は予想通りというか。冷やかしにもならなかった

試合終了後、何か食って帰るかという話になって人の引きが減ってからホールを後にした。


「あ!」

ホールから出た途端、一歩が大きな声を上げた。

「何だよ、ったく...」

一歩が指差した方を見れば知っている人物が3人。階段の陰になっている場所に立っていた。

けど、その内の2人の様子がおかしい。

というか、突然拳を交え始めた。

「ほう?」

鷹村さんが楽しそうに呟く。

「何で千堂さんが...?」

「というか相手に問題だろう」

止めないと危険だから駆けてその傍に行く。

ちゃん、何で千堂とちゃんが?」

冷静にその2人の様子を見ている彼女に聞いてみた。

「ああ、木村さん。こんばんは」

挨拶をされて「あ、うん。こんばんは」と慌てて返す。

「えーと、何だか。あの人が、とお兄ちゃんを間違えたみたいです」

苦笑いを浮かべて彼女が言う。

「え...?」

俺はもう2人が似ているとか思わなくなったけど、確かに初対面だと少し間違うかもしれないけど。

それは中学のときまでなら分かるけど。もう20歳超えてるし、全く体格も違うから間違えようもないと思うけど...

「で、の胸を触ったと言いますか...」

苦笑いを浮かべて彼女が言う。

「何だと!?俺様でも触ったことないのに!!」

いや、そこ問題じゃないから...


そんな会話をしていると2人のボクサーの闘いはヒートアップし、

ちゃん!」

「千堂さん!!」

スマッシュを繰り出す千堂にちゃんがカウンターを合わせる。

俺は彼女を羽交い絞めにして、一歩は千堂の体にしがみついて止めた。

「止めるなよ、ドンピシャじゃねぇか」

「アンタ、何言ってんスか。ちゃんの拳が砕けるでしょう」

鷹村さんは本当に...

「木村さん、離して!!」

「いいや、離さない。ちょっと頭冷やしなって」

ジタバタ暴れるちゃん。

女の子を羽交い絞めしたままってのは気が引けるけど、手を離したらまた第2ラウンドを始めそうだし。

「というかな、。胸揉まれたくらいで何頭に血を上らせてるんだ」

「“くらい”って言わないでください!ていうか、そもそも一郎と間違うなんて失礼じゃないですか!?」

ちゃんは今度は鷹村さんに噛み付き始める。


鷹村さん相手ならちゃんも拳を上げないだろうし、と思い、彼女を拘束していた腕を緩めた。

一歩にしがみつかれていた千堂は呆然とちゃんを見ている。

「...何やってるんですか?」

この場に居なかった、新しい声を聞いて振り返ると、さっき試合をあっさり終わらせた宮田が居た。

「何で宮田が2人のおるんや!?」

宮田を指差して千堂が驚き、一歩を見ると一歩はいつの間にか宮田の傍に居て、

「今日の試合、さすが宮田君ですね」

と声を掛けている。

宮田はそれを無視してちゃんの傍に足を進めた。

「何やってるんだ、こんなところで...」

呆れたように言う宮田にちゃんは「別に」と返してそっぽを向く。

説明を求めるような視線を宮田が向けてくるけど、それはそれで応えづらいと思って見ない振りをした。


幸い、此処は殆ど死角になっていて周囲に野次馬のようなものも居ない。

もうこのまま解散したほうが無難じゃないか?

ちゃん、もう帰りなよ。ちゃんも帰りが遅くなると心配されるんじゃないか?」

ちゃんは俺をじーっと見て悪戯っぽく笑う。

「そうですね。そろそろ帰った方が良いかも...」

どうやら話を合わせてくれるようだ。

ちゃんはまだなんだか不服そうにしていたけど鷹村さんから離れて俺たちに背を向けて「一郎は?」と声を掛けていた。

結局、自分の求める答えを得ることが出来ないままの宮田はイマイチ消化不良って感じの表情を浮かべていたけど「ああ、」と頷いて「じゃあ」と俺たちにそう言ってちゃんたちと共に駅へと向かった。




「...今の、何やったんですか?」

「宮田の双子の妹。ちゃん。女の子に拳向けんなよ」

俺が言うと千堂はもう姿の見えなくなったちゃんの背中を見ていた。

「何もんですか?」

「...元、ボクサーだ」

鷹村さんが答え、「んじゃ、俺様は行くところがあるからな」と言ってさっさとどこかへ消えていった。



千堂とヒロインの初対面は物凄く印象の悪いものになると思い込んでいます。
とりあえず、ヒロインがカウンターを合わせられたのは、ただ運が良かっただけですよ。
やっぱりずっとボクシング漬けの彼が簡単にカウンターを合わせられたら堪ったもんじゃないでしょうしね!


桜風
08.2.16


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