根と葉のある噂 ―前編―





「ん...?あれは」

思わず呟いてしまった。

見慣れた女の子が、見慣れない格好をして見知らぬ男と歩いている。

少し面白くないと思っていたら後続車にクラクションが鳴らされて目の前の信号を見上げれば青。

仕方なくアクセルを踏んだ。




「見間違いだったかなー?」

バンテージを巻きながら呟くと「何がだ?」と上から声が降ってきた。

見上げると腐れ縁の青木。

「んー、昨日な。ちゃんを見たんだよ。宮田じゃないヤローと一緒でさ」

「へえ。ちゃんもやっと色気づいたな」

と青木は楽しそうに呟く。

面白くないって思っているのは俺だけなのか。

そう思っていると

「俺様も目撃したぞ」

と別の声。

「いつごろです?」と聞くと「1週間くらい前じゃねぇか?」と少し上を見て自分の記憶を辿っていた。

「偶々ばったり街中で会って」と続けるから「あんたの事だから邪魔したんだろうが」と青木が茶々を入れる。

しかし、予想外なことに

「んなことするか!」

という言葉が。

「ほんとっスか?」

聞いてみると

「あの兄ちゃんとがもっとイチャイチャし始めた頃に宮田にチクッた方が楽しそうだろうが」

と胸を張っていった。

「相変わらず...」

溜息と共に一言漏らして立ち上がる。

「とりあえず、俺ロードしてきます」

一言声をかけてジムを後にした。



走っているとすれ違った女の子に見覚えがあって足を止める。

向こうも同じくだったらしくて振り返った。

「木村さん」

ちゃん」

ちゃんはそのまま後ろ歩きで戻ってくる。

「危ないぜ」

そういうと

「慣れてます」

と結構不可解な言葉が返ってきた。

「そうなんだ」と適当に返しながら聞いていいものかどうか迷っていた。

ちゃんは自他共に認めるちゃんの親友で。

だから、最近ちゃんと仲が良いとかいうあのヤローの事もきっと知っているんじゃないか。

「あの、さ」

本人の居ないところでこういうことをコソコソ聞くのもどうかと思ったけど気になるんだから仕方ない。

「最近、ちゃん何か変わったことない?」

、ですか?ああ、此処1ヶ月くらい会ってないんですよね。ちょっとまとまったお金が欲しくてバイトを増やしたんですよ。、どうかしたんですか?」

ちょっと肩透かしを食らった気分だ。

「あ、いや。特にこれと言って何ってワケじゃないけど...」

濁すとちゃんがずいと詰め寄る。

「吐いちゃった方がきっと楽になりますよ。ほら、田舎のお袋さんが泣いてるぜ」

目を眇めながら彼女がそういうけど。

「俺、立て篭もり犯とかじゃないんだけど...」

と言えば彼女はニッと笑い

「気になるからとっとと吐いてください。またこれからバイトなんですから」

と続ける。

確かに、ちゃんなら特にこれと言った情報と思っていないけど知っている可能性だってあるし。

「ほへー!」

俺が見たことを話し終わると彼女はそんな奇妙な言葉を口にした。

「やっぱ、初耳?」

「初耳!お兄ちゃんの反応は?」

興味津々に俺にそれを聞く。

「残念だけど、宮田が知ってるかどうかは知らない」

「知ってたら邪魔されてるって!」

と笑いながらちゃんが言う。

「そう..か?」

「中学のとき。無意識か意識してか。にちょっかいを出すという噂の上った男子をチェックして遠慮させてたもん」

「そりゃ、ガキのときの話だろう?中学卒業してもう何年だよ」

「まあ、二十歳超えちゃったので私たちも大人ですけど?変わってないと思うんですよね。細胞レベルで彼の体に染み付いたものでしょ、あれは」

おもちゃを手にした子供のようにちゃんは楽しそうだ。

この子、鷹村さんと性格似ているような気がしてきた...

「けど、あながちない話でもないでしょうね」

キシシと笑っていた彼女がふとそう言う。

「ない話じゃないって?」

、人数調整で時々合コンに強制連行されてるみたいですから。ご飯作らないといけないからって断ってはいるみたいですけど。時々それでもダメで連れて行かれるって前に零してました。友達も自身は周囲から目を引くのに周りの男に全く見向きもしないから丁度いいみたいで」

「元々ライバルがひとり少ないってことな?」

「そういうこと」

「...じゃあ、今回はちゃんの目を引くのがいたってことか」

やっぱり面白くない。

「木村さん。今度じっくりそれ教えてください。私、先ほども言いましたがバイトなので」

もの凄く後ろ髪を惹かれる思いですが、と言いながらちゃんは走っていった。

つまらないと思っているのはどうやら俺だけのようだ...




今回のこの話はヒロインとか一郎さんとかの視点は一切なしです。(たぶん)
キム兄さんとヒロインの親友で送りたいと思っています。


桜風
08.5.17


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