先輩





街中が最もキラキラする季節。

私は一人本屋の写真集コーナーで何か良いのがないかと物色していた。

「宮ぁ..は、らー...?」

探るようにフルネームを呼ぶのは何処のどいつだ?!

振り返って目にした人物に私も頭の中の抽斗を開けてみるが、その名前がすぐに出てこない。

「あー、えー..と」と言いながら記憶に検索を掛けてみるが、名前だけが思い出せない。

ほら、アレだ。

高校のとき。の先輩と言うか...お兄ちゃんと意外にも仲良くしてた..引っ越した。

あ、でもこの間「戻ってきてたみたい」ってから聞いたな...

名前だけすっぽり抜けている。

「名前ド忘れしましたけど。何たら先輩。布が少なめな女の人の写真集はもっと奥ですよ?」

彼は半眼になった。

「お前さ。ほぼ初対面にそういうコト言うなよ」

「あれ、違ったんですか?あ...あ!清村!清村先輩だ」

あー、すっきりした。

「妹は?」

キョロキョロしながら清村先輩が言う。

「私はひとりっ子です」

そう返すと

「や、お前の妹じゃなくて。宮田妹」

面倒くさそうに手を振りながらそういわれた。

だったら最初から「は?」とか、「宮田妹は?」って言えば良いじゃんか!

「何で、私とがセットなんですか。とセットなのはお兄ちゃん..宮田一郎でしょう?」

「それもそうだな」と笑いながら清村先輩は同意した。

「で、は?」

「知りませんよ。どうせ、お兄ちゃんと一緒に川原を走ってるんじゃないんですか?」

「色気ねぇなー」と呆れたように清村先輩が言う。

「そういう先輩こそ。ああ、彼女へのプレゼントの下見ですか?」

「んにゃ。大学の課題。いい加減レポート書き始めねぇと間に合わないからな。その課題になってる本を買いに」

その言葉を聞いてあんぐりと口が開いた。

「は?課題ってどうせ11月くらいには発表されてたんじゃないですか?で、締め切りが1月半ば」

「お、よく知ってんな?」

清村先輩は少し驚いたようにそう言った。

「有り得ない...なんであと1ヶ月を切ってから始めるんですか。何年大学生するつもりですか」

そういうとムッとした表情を作った。

「忙しいの!」

「それは本当に単なる言い訳ですよ?」

面白くなさそうに舌打ちをして清村先輩はキョロキョロと周囲を見渡していた。

「ジャンルは?」

聞くと「は?」と驚いた表情をする。

「私、ここの常連だから書架の配置は熟知している方ですよ」

そういうと不審そうな目を向けながらもメモした紙を渡してきた。

「じゃ、あとでケーキおごってくださいね」

「お前は鬼か!」


後ろでブツブツと文句を垂れている先輩を無視して目的の本がありそうなフロアに移動した。

「ああ、これじゃないですか?」

案外早く見つかった。

その本には『スポーツ健康科学』という文字があった。

じっと見ていると大きな手が視界に入り込んでそれを取り上げる。

「サンキューな」

「スポーツバカって、いつまで続くんですか?」

ああ、お兄ちゃんに言うような感覚で言ってしまったからちょっとキツ過ぎたかな、と少しだけ反省する。

「まー、人それぞれだろう。どんな形であれ、俺は携わりたいって思ったから。みたいに走るやつ、また間近で見たいって思ったからな」

笑いながらそう言った清村先輩を初めて『先輩』と思った。

単なる年上ではなく、本当に年を重ねて色々と経験を積んで来た『先輩』だ。

「そういや、お前は良いの?写真集見てただろう?」

「ああ、良いんですよ。これってのがなかったので。先輩こそ良いんですか?少なくて、更に透けるような布を纏った女の人の写真集は」

「間に合ってます」と半眼になってそう言った後、溜息を吐いて「んじゃ、ケーキだっけか?」と言いながらレジへと向かって行った。

あー、似ているかもしれない。

誰にって?

勿論、あのたちのお兄ちゃんをやっているお花屋さんに。




ヒロインと一緒に居たのだから、清村先輩の事を知っていてもおかしくないだろうし、
清村先輩も宮原嬢を知っていてもおかしくないと思う。
名前については、一郎さんとヒロインがそれぞれ苗字と名前で呼んでいるから
それをくっつけて何とか、みたいな。

清村先輩は、性格的にはキム兄さん寄りですが、口調やら態度やらは少し乱暴ですよね。
でも、面倒見のよいお兄ちゃんってのは共通点ですよね。


桜風
08.12.20


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