友情のカタチ





ホールから出たところでの携帯が鳴った。

「お兄ちゃん?」

「父さん。祝勝会するから、来なさいって」

「もっかい入れるの?」

「入り口まで木田さんが迎えに来てくれるって」

木田さん...?

「ああ、お兄ちゃんと一緒に海外に行ったトレーナーの」

「そう。ゴメン、一緒に帰れないけど...」

そう言って申し訳なさそうにが手を合わせてくる。

「ああ、大丈夫。先輩が送ってくれるって」

私が言うと「おい!」と先輩は抗議の声を上げた。

「あ、でも。先輩に悪いよね。祝勝会の方は別に強制じゃないし、ひとりで帰すのも危ないし」

の言葉を聞いて私は先輩を見上げた。

見習え、と。

それを察したらしい先輩は

「あー、大丈夫。俺がこいつ送って帰るから。妹だって、兄貴の祝勝会に出たいだろうし、出なきゃジムからの印象が悪くなるかもしれないしな」

と言った。

は申し訳なさそうに頭を下げてそしてホールの入り口へと向かっていった。



「焼き鳥が食べたいです」

「割り勘だぞ」

駅に向かいながらそういう会話をした。

「わお。『お前の奢りな?』って言われるかと思ったのに」

「言っても無駄だと分かってるから」

そっけなく返す先輩とは、私は1度しか一緒にお店に入ったことが無いというのに...

意外と人間観察できているんだな...

彼の新たな一面を見た気がした。

まあ、新たな一面って言うほど深い付き合いでもないけど。



お店に入って席に案内される。

「それ、自分で手入れしてんのか?」

それ、と指差されたのは私のカメラ。

「中学のときからの付き合いですよ」

何だ、たちよりは付き合いが短いんだな...

高校が決まってから買ってもらったものだった。それ以降はもう全部自分の財産をつぎ込んでいる。

今更そんな事を思い出した。

「そういや、さっきの。お前かなり酷いぞ」

そう言いながら先輩はおなかを押さえている。

「ああ」と文句の理由について適当に頷くとにらまれる。

「あれって宮田兄妹のお袋さんだろう?離婚してるって聞いたけど。息子の試合は見に来たんだな」

「...何で知ってるんですか?」

そこまで話すとは思えない。

「あー、ウチの姉貴があいつらの田舎の寺に嫁いでな。去年、そこであいつらに再会したんだけど...まあ、そのときに近所の噂になってて。ほら、田舎って結構そういう噂広がるだろう?」

ああ、なるほどと納得した。

「宮田って、お袋さん嫌いなの?」

「さあ?」

私の答えに先輩は眉を上げる。

「『さあ?』ってお前...」

「先輩も宮田兄妹と付き合いたいならそういうところ突かない方がいいですよ。宮田くんが開けている扉以外を無理やりこじ開けない方がいいでしょうね。はそれでもある程度大丈夫でしょうけど、宮田くんは無理やりそういうのこじ開けられそうになると途端に今まで開けていた扉全部閉めて鍵を掛けると思いますよ」

「だから、放っておくのか?それって冷たすぎやしねーか?」

眉間に皺を寄せて先輩はそう言った。

「宮田兄妹との付き合いの長い私からのアドバイスですよ。それに、あの2人はもう子供じゃないんですよ」

そういうと納得いかないと、先輩の表情が物語っている。

「ダチってのは、心を開いてナンボだろう?」

「無理やり深入りする意味は?」

「それって、こっちが勝手にラインを決めていいと思わないな」

「土足で踏み込んで良い領域なんてないですよ」

「そうやって放ったらかしにして。それで何か助けを求めていたとして。分かるのか?」

「助けてほしかったらそう言いますよ。それに、助けが要るのだったらあの2人はお互いが感じ取りますよ」

「それこそ想像だろう?お互い別の人間だ。お互い違う人物だ。ぴったり形の同じパズルのピースじゃない。似ていて、でも、違うものだ」

「双子でお互いが分からないのなら、なおさら他人の私たちが分かることなんて少ないでしょう?」

「だから、聞くんだよ。話をするんだろう?普通、そうやって仲良くなって。たまに喧嘩して、でもそれでも本当の友達なら修正できるんだろう?」


ふぅ、と息を吐く。

私も、先輩も宮田兄妹が好きだけど。でも、考えが全然違う。

私はあの2人は狭い世界で生きたいと考えるならそれでいいと思う。

深いところは誰にも踏み入れさせず、それで自分を守るというならそれでいいはずだ。たぶん、今宮田くんが心を開いている人たちはそうやって見守ってくれる人たちなんだと思う。

けど、清村先輩は私たちと違った。

狭い世界で生きるなと言いたいのだろう。

が宮田君を頼り、宮田君がに頼られることで自分と言うものを支えているとしたら、それはいずれ壊れるから自然と壊れてどうにもならなくなる前に少しずつ崩してお互いが自立、といえば近いのか。支えなしで歩けるように、と。

たぶん、本当に周りに居なかったタイプだろう。

ああ、そうか。清村先輩はたちのお父さんの事を知らないからか。

話を聞いていても、その姿を見ていない。

私は母のお陰でその姿を映像として見ることが出来た。

だから、宮田兄妹の目指しているものも知っている。感じられる。

「まあ、先輩は先輩のアプローチで仲を深めてください」

私の言葉にやはり不機嫌だ。

「お互い、別の人間なんでしょう?先輩には先輩のやり方があって、私にだってやり方はあります。そして、今までそれでやってきました。その関係が脆いものだとも、薄っぺらだとも思ってません」

胸を張っていう。

悪いけど、宮田兄妹のいちばんの友人は私だ。誰にもそれに対して反論出来ないだろう。させない。

「あー、そうか。ちょっと言いすぎたかな。悪かった。でも、俺は俺のやり方であいつらと付き合ってくつもりだ」

「お好きにどーぞ」

まあ、今までと毛色が違う人が近くに居る方が刺激になって良いんじゃないかな?

どうせ、彼は残念だけど私のライバルになりえないのだから。




会話部分が多くてごめんなさい。テンポ重視でこうなりました。

ある意味、宮原嬢VS清村先輩の図式が出来てしまったというか...
これにキム兄さんが入って三つ巴とかね。
宮田兄妹はアイドルか!!(笑)

宮原嬢の付き合い方は、傷口っぽいものは突かず見守るというタイプだったな、と思っています。
そして、清村先輩は傷口を指摘して早く治すように促すというか...

一郎さんは別にお母さんの事は嫌いじゃないんです。
ただ、ヒロインを取られてしまいそうな気がしてけん制しているというか...(子供じゃん!)


桜風
09.3.21


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