うそのうそ





3月の半ばの夕方、ロードに出ていると宮原に待ち伏せされていた。

「もう!遅い!!」

約束してもないのに、何故怒られているんだ...?

「何だよ」

しかも、約束してもコイツの方が遅く来たりしないか?

「ね?悪巧みに乗らない?」

自分で『悪巧み』って言いやがった。

「内容による」

俺も物好きだよな...

「へっへっへ。乗ると思う。ね、来月は何がある?」

「入学式?」

「...んなもん、どうでもいいわよ。他に思いつかない?」

「じゃあ、始業式」

「学校行事から離れて!」

健康診断も言おうと思ったのに先回りされた。

「じゃあ、みどりの日」

「あー、もう!朴念仁!!」

何で俺はここまで言われているんだ?

「エイプリルフール。わかんない?四月バカ」

『バカ』の部分はどうにも宮原の気持ちが込められ、しかも俺に向けれているようで気になったが、まあ、『エイプリルフール』は知っている。

「で?」

「妹さん、驚かせたくない?」

「お前、の親友だろう?」

「そうよ?何でそんなこと、今更聞くのよ?」

胸を張ってそういう。

親友を陥れてどうするんだ?

宮原の意図がわからず聞いてみたら「陥れるってどういうことよ!」と返された。

「だますってそういうことだろう?」

「だますなんて一言も言ってない!『驚かせる』って言ったの!!」

「でも、嘘を吐くんだろう?」

「あー!もう!!」とじれったそうに地団太を踏み、「ちなみに、もう外堀埋めました!!」と痺れを切らしたように宮原が言う。

「外堀?」

「鴨川のお兄さん」

「お勧めできないんだけど...」

「宮田君だけのほうがよっぽどお勧めできない。お兄さんは、嘘が上手そうなんだもん」

まあ、上手だろうとは思う。悪乗りが得意だし。

「で?」

「宮田君協力の下、のガードを完全に外します。私がに宮田君をだまくらかすように唆す。はそれに乗るから、宮田君はそのままだまくらかされるフリをして!」

「乗るかよ、んなのにが」

「乗る!断言する!!」

胸を張って言い切られ、その勢いに押された「分かった」と思わず言ってしまった自分はなんだか負けた気分だった。



その数日後。宮原が告げた作戦開始日だ。

さて、どうやって宮原の家に追い出そうか...

考えながらの部屋のドアをノックしようとしたら、ドアが突然開いた。その手には電話の子機。

ああ、向こうが手はずを整えるつもりではあったのか。

が不思議そうな表情をしていたから口から出任せに「や、今日俺が買い物行こうかと思って...」というと、すんなり納得してメモを書くから少し待つように言われた。

料理はさせてもらえないが、買い物はかなりの確率で頼まれるから簡単に信じてもらえたらしい。

たしかに、嘘は苦手だなぁ...

何となくそう思ったが、一方でやっぱり面白くないとも思う。

だって、なー...

買い物に向かっていると木村さんが見えた。ジャージ姿と言うことはロードワーク中か?

「ちわ」

「おう、宮田。なあ、お前はもう聞いてるんだよな?ちゃんの」

外堀が埋まったと言っていたが、外堀はこの人か...

「ええ、まあ...」

「詳しい内容は?」

「ある程度。後は、の反応を見ながら詰めるって言ってましたけど...」

「そっか。でもさ、..あー、やっぱいいや」

何かを言いかけて木村さんはそのまま逃げるように去っていった。

何だったんだろう。


今日はエビチリと、ニラの卵とじのスープと、あとサラダかおひたしとか言っていた。サラダとおひたしは材料があるから気にせずに、今回はニラとエビ。あと、米と..酒に塩って重いものをここぞとばかりに書き加えていた。

いつもそうだ。俺が買い物に行くと言ったらは重いものを書き加える。まだ余裕があっても、だ。

まあ、あいつも意外と徒歩で買い物に行っているから仕方ないのか。仕方ないんだろうなぁ...




夕飯を食べ終わって洗い物を手伝っていると「ねえ、一郎」とこちらの様子を伺うようにが声を掛けてきた。

「ん?」

「オトメの勘!」となにやらおかしげなことを呟いて、「これ、の私へのドッキリだよね?」と言う。

の言う『これ』が何かは今のところ分からないが、「エイプリルフール?」と聞くと「ビンゴ」と手に持っているスポンジをグッと掴んでそう言った。

「今日、その話をしに行ったんだろう?」

「私には一郎に対してドッキリを仕掛けるって。でも、さ」

「面白くないよな?」

俺が返すをが頷く。そして、ニィと笑った。

「一郎、悪い顔してるよ?」

「人のこと、言えないぜ?」

「...お前達、にらみ合いながら悪い顔をしてどうしたんだ?喧嘩か?」

タイミングよくキッチンに来た父さんが不思議そうな声音でそういった。

「まさか。仲良しさんだよ」とが言うと父さんは安心したように頷いて自分の部屋に戻って行った。

「で?どうするんだ??」

「ブレインがほしいよね?」

の言う『ブレイン』はきっとあの人だ。

「外堀のひとりらしいし、悪乗りは得意だろう?」

「んじゃ、明日私の家に泊まることになってるからちょっと相談してみて。の作戦内容、具体的に聞いておく。そっちも情報収集してね」

そう言った丁度に洗い物が終わった。

「父さんに明日んち泊まるの言ってなかった」と言ってはパタパタと父さんの部屋に向かった。




先月の裏話的な感じで。
一郎さんはヒロインに振り回されるのは勿論、宮原嬢にも振り回されっぱなしな感じ(笑)
面倒見が良くて、意外と付き合いが良いからねvvv


桜風
10.5.15


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