珍しいことに宮田が店にやってきた。
「どうした?」
宮田が家を訪ねてくるなんて色々と心配になったが、話を聞いて納得。
「だよなー。お前らの性格なら、やっぱり大人しくしてないだろうって思ったんだよ」
言うと不思議そうに首を傾げる。
「こないだ..ほらお前がひとりトボトボと歩いてたとき、声かけただろう?あの時聞こうかと思ったんだけどさ。どっちかってとちゃんの味方でいたいから、彼女が言ったら協力しようとは思ったんだよ」
そういうと宮田の眉間に深い皺が刻まれる。
「ま、そう怒るなって。ヤローの味方するより、可愛い子の味方するのが男の性ってモンだろ?で?ちゃんはどうするって?」
「今日、宮原の家に泊まって作戦会議らしいから、詳しく細部まで詰めておくって言ってました。で、たぶん、木村さん..外堀って宮原が言ってたんですけど。外堀の人が両方の状況を把握した内容を知ってるんじゃないかって思って」
宮田の言葉には納得。
「ちゃんが細部を詰めて、それにあわせてこっちの動きも変わったりするだろうからな。了解。そっちで何か作戦あるのか?」
「情報が少ないから、まだだと思います」
「って言っても、もう時間ないよな。ちゃんは結構前から頭の中で色々と準備してただろうケド、こっちは後手だし...」
こういうのって後手に回った方がきついのは分かってるんだけど、彼女みたいにエイプリルフールを意識していなかったし。というか、こうやって大々的に何かをしようと考えることなんて殆ど無いだろうし...
「ま、ちゃん情報待ちだな」
「そういえば、外堀って何処までなんですか?」
「たぶん、鷹村さんまでだろうなー。青木はたぶん外してるし」
ロードの途中にちゃんが現れて鷹村さんだけ手招きしてたし。ん?何で鷹村さんだけ??
「やばい。あの子、保険掛けてるかも」
「は?!」
「鷹村さん、保険かも」
言うと宮田は物凄く胡散臭そうに俺を見た。
「どうやって保険になるんですか?」
「悪巧みのときのあの人の頭の回転の良さ、知ってるだろう?!」
宮田はハッとした。
「読まれてた、ってことですか?」
だったら、ちゃんは相当だよ...
そう考えると俺まで悔しくなってきた。ちゃんの作戦が成功したらあの理不尽大王が勝ち誇った笑い声を上げて「小物ども」とか言うに決まっている!!
考えろ、考えるんだ!!
「...ちゃん、今日ちゃんと話を詰めるんだっけ?」
「そうです。で、その情報を持って明日以降に話をすると...木村さん?」
どう考えても準備期間が短い。
「わかった。んじゃ、明日ちゃんが帰ってきたら連絡くれ。そっち行くわ」
宮田は目を丸くして不思議そうにしたが、曖昧に「わかりました」と了承した。
時間が無い。だったら、それしかない。
翌日、宮田から連絡を受けて宮田の家に向かった。
チャイムを押したらちゃんが出てきてやっぱり昨日宮田が見せた不思議そうな表情を浮かべて「どうぞ?」と招き入れてくれた。
「で、だ。昨日ちゃんが言ったのはどんな内容?」
リビングに通されて、すぐに本題に入った。
ちゃんは事細かに作戦内容を教えてくれた。
「鷹村さんが居ないな、それ」
「へ?あ、ホントだ」
ちゃんは目を丸くして自分の記憶を掘り起こしているようで、「うん、居ないわ」と呟く。
上手く隠したもんだ...
「じゃあ、鷹村さんをこっちに引き入れないとどうにもならないってことですか?」
宮田が問う。
「そっちは骨が折れるから諦めよう。あの人の乱入はまず間違いない。それをその場でどう対処するか、が問題だな」
「あの人を誰が止められるんですか」
冷静な声で宮田が言うが、その冷静さが何かムカつく。
「俺としては、準備期間が無いこっちが今から企画したんじゃはっきり言って勝ち目が無い。大まかな流れはパクッたらどうかと思ってる」
ちょっと癪だけど、これしかないと思う。最終的に彼女が予想だにしていない方向に持っていったらこっちの勝ちだ。まあ、あの俺様大王は何があってもぶち壊しそうで怖いけど...
俺の意見にはちゃんは賛成で、宮田はどうにも飲み込めていないようで首を傾げながら頷いている。
コイツは、企みごとは本当に向いていないからな...
「あのー」とちゃんが手を上げた。
「何?」
「鷹村さんを独り呼び出したんですよね?それこそ、ダミーじゃ...」
遠慮がちにそういうちゃんに俺と宮田は首を傾げて、彼女に解説を求めた。
「は、自分の作戦を成功させたいんです」
「そうだろうな」と宮田。
「だったら、鷹村さんのその悪知恵って逆に足を引っ張りかねないんじゃないですか?勝手にこう..アレンジ加えて段取りめちゃめちゃにされるんじゃないかって、普通思いません?」
「でも、ちゃんと鷹村さん、まあ俺たちもだけど、付き合いは浅いからそういうことが分かんないんじゃないのかな?」
鷹村さんの理不尽さとかそういうの、あまり目の当たりにしていないはず。
「木村さんは、自分が練りに練って考えた作戦の重要部分をそんな未知なる生物に預けたいですか?」
イヤだ、絶対にイヤだ。台無しにされる可能性は排除したい。
「保険。確かにそうでしょうけど、それってこっちが余計なものに意識を割くようにした保険じゃないかなって思うんですけど」
「と、いうことは。ちゃんは鷹村さんの存在は気にしなくても良いと思ってるってこと?」
確認すると彼女は苦笑いを浮かべて頷いた。
宮田を見ると「宮原の腹を読むんだったら、俺たちよりもでしょう」と言う。
「青木さんは?」というちゃんの質問には「あいつ、顔に出やすいからってちゃんにアドバイスしてるから無いと思う」と返す。
「あー、そんな感じ」とちゃんは笑い、「では、マークすべきは木村さんだけですね」と言った。
「光栄だねぇ」と返すと宮田がムッとしていた。
当初話したとおり、大筋はちゃんの作戦をパクッた。宮田は何とかちゃんの気を逸らしている風を装うことに専念してもらい、実行部隊は俺とちゃん。
正直、手持ちのネタが少なくて心配だったけど、最終的にはちゃんをドッキリに嵌めることが出来た。
自分が逆にドッキリに嵌められたと分かったときのちゃんの表情は今思い出しても、痛快だ。
呆然として、そして、天を仰ぐ。「やられた」と呟きながら。
しかし、天を仰いでいた顔を俺たちに向けたときにはこれまた後が怖いと思うような表情で、
「リベンジ、ここに宣言します!」
と言ってニッと笑う。
俺とちゃんは顔を見合わせた。
そういえば、ちゃんって鷹村さん属性だった...
でも、まあ。最初のターゲットは宮田だろうから、じっくり対策を練っておこう。
というわけで、だまされた(?)のは宮原嬢。
でも、きっとそれから遠くない未来に一郎さんがリベンジ食らって、ヒロインはまあ手加減してもらって、
キム兄さんにも容赦ないリベンジだったと思います。
あ、エイプリルフール企画の内容ですか?
...それは皆様の心の中に(笑)
すみません、ホントだますとか向いていないみたいで全く思いつかなかったんです!
(じゃあ、何でこれをテーマに選んだんだという突っ込みはどうか、なしの方向で/汗)
桜風
10.6.19
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