てくてくと夜道を歩いている。
寝苦しいのと、意外とあの家が広いというのと。
3人くらいが丁度良いのだと此処最近思い始めた。
一郎が海外へ行き、父さんがそれについていった。まあ、トレーナーだし。
一郎だけだったらそれなりに心配もしたけど、父さんが一緒だし、きっと大丈夫。
てくてく。
歩いているとさっきからずっと後ろに人が居るのが分かる。
元ボクサーを舐めないでもらいたい。
もらいたいが、私の射程でもなく。ただ只管付けられている。
家に帰ったら逆に拙いだろうと思って家から離れてみたら今度は帰る道が難しいことに気が付いた。
さて、どうしてくれよう...
相手は..たぶん一人。
でも、きっとデキルと思う。
自分の腕を過信しているつもりはないけど、それなりに『強い』と行っても過言ではないと思っている。
たぶん、認めてくれる。
さてさて...
歩調を早くしてみた。ビビッているみたいでちょっとイヤだけど。
するとやっぱり背後の気配も同じだけ早くなった。
ああ、付けられている。これ、確定事項か...
丁度良い感じの地形になったので駆け出した。
私の足に着いてこれるっていうのがそれはそれでムカつくけど、角を曲がったところで体を反転。
ファイティングポーズをとって迎え撃つ準備を済ませる。
角を曲がってきたその人に拳を繰り出すと「っぶねえ!」と受け止められた。
いや、元々寸止めのつもりではあったのだが...
そもそも...
「鷹村さん、何してたんですか...」
後を付けていて人物が知り合いってどうかと思う。
「オレ様はちょっと散歩に出ていたらの姿が見えただろう。何処に行くのかちょっと興味があったから付けてみた」
「私は、これまた変人が着けてきているのかと思いました。声をかけてくださいよ」
溜息混じりに言うと「何だ、ジイシキカジョーだな」と言われて更にムカついた。
「うるさいなー。で?鷹村さんは何で散歩に出てみたんですか?」
「ああ、エロビデオでも借りに行こうかと思ってな」
...お年頃の女の子に言うことじゃないと思う。
「返すの忘れそうですけどね、鷹村さん」
「ジムに持っていきゃあいつらが返しに行くんだよ」
ふーん...
「で、。お前は何でこんな夜中に出歩いてたんだ?」
「あー、暑くて眠れなかったんです」
そう返すとじっと見られて少し居心地が悪い。
「なんですか?」と思わず聞くと「べつにー」と返された。
「ま、なんだ。お前もたまには可愛げというものがあるんだな」と更に言われて「どういう意味ですか」と返したら笑われた。
ぽんと頭の上に手が乗って「ま、夜の散歩にはオレ様が付き合ってやろう」と言ってニッと笑う鷹村さん。
「アダルトコーナーには入りませんよ?」
返すと「何だよー、付き合いわりぃなー...」といわれる。
何が嬉しくて進んでそんなコーナーに行かにゃならん...
「虚弱君から連絡は来てるのか?」
テクテク歩いていると不意にそう聞かれた。
「たまに」と返すと「ま。あいつらしいな」と笑みを含んだ声で鷹村さんが言う。
「もたまにはジムに顔を出しに来いや。宮田が出てっても、まで追い出しゃしねぇよ。逆にジジイも声をかけづらいだろうからな」
不意に言われた言葉に驚いて顔を上げる。
なんでもないような表情を浮かべている鷹村さん。
でも、それなりに付き合いの長い私が見たら何となく分かる。
「照れてますねー」
「んなワケないだろう!」
「はいはい。そうかもしれませんねー」
「だから!は自意識過剰なんだよ!」
「はーい、気をつけます」
適当に返事をしているとやっぱり適当感が伝わったのか、鷹村さんは私の手を引いて少し早く歩く。
「おら!お子様はそろそろ寝る時間だろうが」
言われて時計を見たらそろそろ日付が変わる。
「はいはーい」
てくてくてくてく。
手を引かれて歩く。
「ところで、鷹村さん」
声を掛けると「んだよ」と振り返らずに返事がある。
「レンタルショップは良いのでしょうか?」
先ほどはそんな理由を口にしていた。
「お子様には刺激が強いかもしれないから、先に家に送ってからだよ」
「鷹村さんは優しいなー」
「うるせーぞ」と言ってとうとう鷹村さんは私の手を引いたまま駆け出した。
「ちょ!早いです!!」
文句を言うと「やかましい」と返された。
予想以上のハードな散歩となってしまったけど、何だかちょっと嬉しかった。
何となく夜に散歩。
一郎さんがタイに行っていたときのお話です。
久しぶりに10代のこの子を書いた気がする(笑)
桜風
10.8.21
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