「トリックオアトリートぉ!!」
冷ややかな視線が返ってくる。
「痛い、痛い...」
「宮原...元気だな」
私の手に持っている小さなオレンジの物体を見て宮田君がそういった。
先ほど、推薦の商店街で買い物をしていると店番をしている木村さんがニコニコと接客をしていた。
何でこの人ボクサーなんだろう...
そう思いながら「こんにちはー」と声を掛けると木村さんは「ああ、ちゃん」と言った後「トリックオアトリート」と笑いながら言ってきた。
「ケルトの方ですかー?」
と返してみたら木村さんは少し驚いたような表情を見せて「よく知ってるね『ケルト』って」と返された。
「この間調べてみたばかりなんです」
私の言葉に「そっか」と返した木村さんは店先に飾ってある小さなオレンジのパンプキン、ジャックオーランタンを手渡してくれた。
「これ、あげるよ」
「売り物では?」
「今日のこの時間で残ってたらもう売れ残りだろうし」
そう笑いながら言う木村さん。
「けど、お袋には内緒な?」と一言追加してまた笑った。
「あ、そうそう」
たしか...
バッグの中から取り出したのは、都こんぶ。
「はい、トリート」
渡してみると木村さんは目を丸くして「渋いなぁ」と呟いて「ありがとう」と言った。
そして、てくてく歩いているとちょっと休憩中なのか宮田君を発見して、例の言葉を口にしたのだが...
「どうしたんだよ、態々買ったのか?」
棒が突き刺さった、見方によっては魔女っ子ステッキ。
「ううん、木村さんからもらった。さっきあそこの商店街に行ってたから」
「へー...」
「要るんだったら木村さんにお願いしたらくれるかもよ。あっと、私が可愛いから木村さんはサービスでくれたのかなぁ〜」
最後は間違いなく心から冗談で言ったのに、冷ややかな視線がまた突き刺さる。
「態と言ったに決まってるでしょ!てか、宮田君も大概私に失礼ね」
「ふだんの宮原の俺に対する態度に比べれば、まだ可愛い方だと思うけどな」
自分で『可愛い』とか言っちゃいました、この人。
「で?トリートは?」
「というか、普段俺に色々としでかしてくれていて、まだ何か要求するのか」
「しでかされている自覚あるの?!」
まさかの展開。
宮田君ってば鈍かろうから気づいていないんだと思ってた。
「今心の声を口に出していたことは気づいてるよな、勿論」
「ええ、勿論」
ニコニコと笑う。
宮田君も引きつってるけど笑っている。
「あれ?」
別の声。
振り返って手を振る。
「トリックオアトリート」
彼女は笑って「トリックオアトリート」と返した。
「なあ、、宮原。それって『挨拶』で良いのか?」
「いいじゃん、今日はそこらじゅうで言われてるんだから」と。
宮田君は妹のそんな言葉に盛大に溜息を吐いて、「そうかよ」と疲れたように言葉を零す。
「あ、それ可愛い」
「木村さんにもらったの。あげようか?」
「いいよ、がもらったものでしょ」
「また作るとか言うなよ...」
げんなりとした声の宮田君。
って、何その面白そうな話!!
ピピッと電子音がして、何だろうと思ったら宮田君が腕時計を見てた。
「あ、時間?」
「ああ」
なにやら2人には分かる合図だったらしい。
「じゃあな、宮原」
「あ、うん。練習頑張ってね」
呆気にとられて何とか返すと宮田君は軽く手を上げて駆け出す。
「今の、何?」
「うん。休憩の時間決めてただけじゃないのかな?」
あ、そういうこと。それよりも...
「昔、作ったの?」
「ん?」
「これ」と言ってもらったカボチャを振る。
「うん。普通のカボチャでね。オレンジのは食用じゃないって聞いたから」
「で。何で宮田君はあんなにげんなりしてたの?」
「上手に作れるまでチャレンジして、それこそ、毎日がカボチャだったからでしょうね」
とが笑う。
どんなにカボチャが体に良くても加減と言うものを...と言うことだったのだろうか。
「そりゃ、災難」
「だよねー」
自分のしでかしたことなのに、はそう言って笑う。
「トリックオアトリート」
もう一度言うと「今度一緒にケーキバイキングにでも行こうよ」とが笑う。
「それ、ナイスアイディア」
パチンと指を鳴らしてそう言うと、「でしょ」ともパチンと指を鳴らして得意げに笑った。
意外なことに、まだハロウィンネタをしていない..っぽいので今回投下。
宮田妹シリーズはネタが転がっていそうで、中々話に出来ない感じでちょっと大変だったりします。
リクエスト(?)頂いているのですが、中々手を付けにくいネタでもあるので時間を掛けて考えたい。
しかし、時事ネタがだいぶそこを尽きてきた気がします(汗)
桜風
10.10.16
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