ピンポーン
インターホンを押した。
此処に来るのは初めてだ。送ってもらった住所はここであってる。ちゃんと地図で調べたから間違っていない。
表札も『宮原』で間違いない。
...ちゃんって苗字は『宮原』だったよな。
「はーい!」
そう言って出てきたのはちゃんではなく、ちゃん。
「あ、木村さんなんだー。どうぞー」
ん?どういうことだろう...
「お邪魔します」
ちゃんの言い方が少し気になった。
たぶん、宮田は来るんだろう。この間、商店街で変なことを聞いてきたし。
何となくわかってたから、からかってみたけど反応が鈍くて少しつまらなかったなー...
「おーい、木村も呼んでんなら言えよ」
「俺なんて、先輩は勿論木村さんのことも聞いてませんでしたけどね。寧ろ、木村さんとはちょっと前に会ったのに、木村さんも教えてくれなかったくらいですよ」
リビングにいるのは、ちゃんと宮田と..清村。
「どういうと?」
「私も、昨日聞いたんです」
苦笑してちゃんがいう。
「皆が勝手に内緒にしてただけじゃないですかー」
ちゃんが言うと「主催が誰に声を掛けたかも皆にお知らせするべきでしょう」とちゃんに怒られていた。
ま、女の子が主役ってことで。交換のプレゼントもちゃんかちゃんが気に入りそうなものを選んだし。
いや、うん。宮田に当たってもちゃんの手に渡るだろうって思ってたしな。
「木村さん、減量的には...」
「ああ、大丈夫。さすがに拙かったら欠席させてもらってたよ」
ぽんぽんとちゃんの頭に手を置く。
というか..テーブルの上が凄い...
特にあのサラダ。3種類あるけど、そのひとつひとつの量が半端ない。
「さ、全員揃ったので。クリスマスおめでとう会を始めたいと思います!」
何だ、それ...
宮田の目がそう言っている。口に出さないのは、数年の付き合いの賜物なのかもしれない。
その証拠に「何だ、その『おめでとう会』って」と清村が口に出して、「はい、そこ。黙りなさい」とぴしゃりと言われていた。
「はい、皆さん。ここにある嫌がらせのような大量の草混ぜ料理は、お母さんが野菜が無いとプリプリ怒りながら作りましたー。はい、拍手ー」
「『サラダ』って素直に言ってくださらないかしら?」とちゃんが半眼になってちゃんに抗議をする。
パチパチと拍手をしてみると苦笑してちゃんが軽く会釈をする。
「じゃ、適当に食べちゃって」
「色々と台無しだな、オイ」と清村が言うと「はい、とっとと食え」とちゃん。
清村も学べ。
ちゃんがどこからかワインとかシャンパンとか出してきた。
すげぇ...このワインってちょっと高いんじゃないかな?
「お父さんの秘蔵っ子でーす」
「ちょっと、そんなの飲んで良いの?」
「聞いてないけど、飲んじゃったらもう仕方ないんじゃないのかな?」
「お前、酷いな...」
宮田が溜息をつきながら無難な方のシャンパンに手を伸ばす。
「宮田、飲めんの?」と清村が聞くと「そこそこ」と返す。
「ちゃん、飲めるの?」
「そこそこ」と宮田と同じ返事。
「木村さんは?」とちゃんに聞かれて「まあまあ、かな?」と答える。
「じゃあ、安心だ」と言ってちゃんを見た。
「彼女、弱いの?」
「たまに。今回は男性陣がいるから安心ですよ」
クスクスと笑ってグラスにワインを注いでくれる。高い方の。
「ちゃん...」
「怒られるのは、です」
ニコリと微笑んで言うちゃん。良い友達だよなー、この2人。
暫くして『ゴトン』といういい音がした。
「ああ、落ちた」とちゃんが笑う。
ちゃんは、飲みすぎると寝るタイプなんだなー...
「一郎、手ぇ貸して」とちゃん。
「ああ」と言って立ち上がった宮田はちゃんを抱えて廊下に出る。
「ちょっと席外します」と言ってちゃんも続く。
残った俺と清村。
「そういや、俺。ちゃんたちと飲んだの初めてだわ...」
話題を振ってみた。
「マジで?お前ら付き合い長いんじゃねぇの?」
グラスを持って清村が寄ってきた。
「ああ、宮田は昔俺と同じジムにいたんだけど、移籍したからな。それ以降、一緒に食事ってことなかったし、ちゃんを誘って食事に行くとなったら宮田が煩いしな」
「だろうなー」と清村が笑う。
「俺も、宮原とだったらあるけど、たちはないなー...」
「ちゃんとはあるんだ。いつ?」
意外な気がした。
「ほら、春先に宮田の試合があっただろう。その後、メシ食って帰ろうって話になったんだけど、は声を掛けらて祝勝会に顔を出しに行って、まあ残った宮原とメシ食った」
少し苦々しい表情をして清村がワインを飲む。
って、それも秘蔵っ子て言ってた...
「飲んだもん勝ちだぜ?」
俺の視線に気が付いたらしい清村がニッと笑う。
「だな」と頷いて、それに手を伸ばす。
パタパタと足音がして宮田兄妹が戻ってきた。
「主催が寝こけてしまったんですけど、どうしましょう?」
「ちゃんは泊まりこみ?」
「昨晩から。ま、の面倒を見ることと片付けくらいはしないと。そのお礼に」
そう言ってちゃんのお父さんの秘蔵っ子達を指差して笑う。
「手伝おうか?」
「大丈夫です。というかプレゼント交換、どうしましょうかね」
苦笑してちゃん。
「だよなー...もういいや。お前にやるよ」
そう言って清村が出す。
「え、いや..じゃあ、のはあそこにあるから。勝手に交換会しましょうか」
困った様子のちゃんがそう言ってツリーの傍においてあるプレゼントを持ってきた。
「えーと、確かくじにするって用意してたはずなんですけど...」
そう言いながらまたどこかに消えた。
「清村。お前、何にした?」
「あ?たぶん、被ってないだろうけどヤローがもらって嬉しいとは思わないだろうな」
と言う。
「宮田は?」
「が欲しいって言ってたものですよ。宮原と趣味が似てるし、の手に渡っても文句言われないだろうから」
お前、ずりぃぞ...
「はい!くじがありましたー」
嬉しそうに戻ってきたちゃん。
俺のプレゼントが誰に当たったかは..まあ...
けど、目の前の苦々しい表情を見たらちょっとスッキリしたから諦めようか。
やっと終わったー。
誰が誰のプレゼントを手にしたか、というのは皆様の好きに想像してください。
男性陣は、女の子のことを思って購入していたので、
だれかひとりは『女の子』のためのプレゼントを手にしたと思います。
...たぶん、清村先輩(笑)
桜風
11.1.15
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