「ちゃん」と声をかけられて振り返ると木村さんと青木さん。
2人が一緒にいるのなんて全く珍しくないけど、今日はちょっと珍しい。
2人ともおめかししている。
「こんにちは」
挨拶をして木村さんたちの傍に駆けて行くと青木さんが「どーよ、これ」とすぐに自分が来ているスーツの襟をちょいと摘んで胸を張った。
「カッコイイですよ、トミ子さんの見立てですか?」
聞いてみると青木さんはちょっと機嫌が良くなる。
「おうよ、アイツはオレのことを良く分かってるからなー」
始まりそうな惚気は木村さんの咳払いでストップし、それがちょっと気に入らないのか、青木さんは「何だよ」と零していた。
「今日はお2人でお出かけだったんですね」
「お出かけ、というか。結婚式に招待されたからね」
「アイツがそんな甲斐性があると思ってなかったんだけどよ」
青木さんの言う『アイツ』は私は知らないけど、2人は幼馴染のようなものだと言っていたからその人も昔からの知り合いで、きっと仲が良かったんだろうな...
「あ、そうだ。これあげるよ」
そう言って木村さんが持っていた引き出物の中からひとつ箱を取り出した。
「良いんですか?」
「ウチの親にやっても味なんてわかんないし。これ、最近人気の店のクッキーだからちゃん食べてご覧」
「木村さんはそんな情報を何処で手に入れるんですか?」
聞いてみると「んー?」と苦笑する木村さんに対して「一緒に行ってくれる女もいないのにな」と青木さんが茶々を入れる。
「うっせー!」
木村さんがムキになった。
青木さんは愛しのトミ子さんの待つアパートに急いで帰った。
パートナーが一緒でも良いといわれたらしいのだが、トミ子さんは昨晩夜勤で、さすがに彼氏の友人の結婚式に仕事を休んでまで行くのはどうかと思ったらしく、大人しく留守番をすると言ったそうだ。
「木村さん」
私は商店街で買い物をしようと思っていたから木村さんと並んで歩く。
「ん?」
「私、そんな物欲しそうな顔してました?」
先ほど青木さんに「悪いな、ちゃん。オレのはトミ子にやろうと思うんだ」と何故か断りを入れられた。
そのことが気になって木村さんに言うと「あれはアイツのほうがおかしいの」と苦笑する。
「そうですか?」
「俺はさっき言った様に親にやるくらいなら、断然ちゃんが喜ぶ顔を見たいって思ったからあげたんであって別にちゃんが物欲しそうな顔をしてたわけじゃないよ」
「青木さんはトミ子さんと結婚しないんですかね」
「まあ、ほら。俺らの場合ボクシングでって思ってるからね。そうじゃなかったらあいつはそこそこ甲斐性あるほうだろうし、トミ子だって働いてるからそれこそ本人達がその気になれば全然問題ない2人だろうな」
そういうもんか...
2つしか違わないのに、何か考え方がちょっと違うのはまだ学生の私と仕事をしている木村さんの違いなのかな...
...ん?
ということは、一郎も似たような、木村さんみたいに将来のビジョンを持って生きていると言うことなのだろうか...
それはそれでちょっと悔しい。
「ちゃん?」
不思議そうな顔をして木村さんが顔を覗き込んでくる。
「何でもありません。ねえ、木村さん。今日の結婚式どうでした?花嫁さんとか。あ、友達から何か余興みたいなプレゼントはなかったんですか?」
親戚がいないから私がこの先結婚式に出席することが出来るのは友達の結婚式か、一郎の結婚式かくらいしかない。
『一郎の結婚式』か...
何か不思議な響きだな。
何かちょっといつもと話の雰囲気が変わってしまった気がしたのですが。
文体と言うほど大げさじゃないけど、雰囲気。
内容はいつもどおり何でもない感じなのですが...
どうしたんだろう。
何となく、数年前の友人の結婚式が5月だったにも拘らずものっそい寒くて
3月並みの気温とかだったなぁ...
というのを思い出したので結婚式ネタ。
しかも、ちょっと続くと言うか...
分ける必要があったのかと悩んだのですが、この作品は基本誰かの視点で話が進んでいるので
視点を変えるなら話も変えないと思って...
桜風
11.5.21
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