まだまだ試合の予定はない。
別に甘いものが好きと言うわけでもないけど、試合の予定がないときは、偶にに付き合ってそう言うのを食べに行ったりもする。
今日は商店街に買い物に行ったはずのが綺麗な、立派な箱を持って帰って来た。
「何だ、それ」
「木村さんにもらったの」
また木村さんか...
「ってあの商店街好きだよな」
「行きなれてるからね」
確かに、ジムからは近い方だったもんな。
「木村さん、青木さんと一緒に今日は結婚式に出席したんだって」
「いつも一緒だな、あの2人」
「幼馴染なんでしょう?共通の友達も多いんだろうし、仕方ないでしょう、こういうのは特に。
私と一郎は性別が違うからその点、多少違って来るんだろうけどね」
「性別が違うと何か違うのか?」
「交友関係も微妙に違うし。結婚式の場合は、大抵異性は呼ばないらしいよ。新婦さんは『女友達』を呼んで、新郎が呼ぶのは『男友達』みたいな感じで」
そう言うものなのか...
「別に異性の友達がいるんなら呼べば良いのに」
「邪推されたくないとか?良くわかんないけど、お祝いの席で嫌な思いをしないための予防線じゃないの?」
「お祝いの席で邪推するヤツがどうかしてるだろう」
「じゃあ、一郎の結婚式はを呼ぶんだ?」
の言葉にちょっと言葉が詰まる。
「アイツは、俺の友人か?」
「数少ない、貴重な友人でしょう?」
貴重...アイツが貴重...
夕飯を食べたあと、片づけるを手伝う。
とりあえず、父さんにはお茶を淹れていた。片づけが終わったらコーヒーを淹れて木村さんからもらったクッキーを食べるのだと言ったはさっき浮かれていた。
「結婚式かぁ...」
が呟くとガタンと音がした。
振り返るとお茶が零れている。
「もう、父さんはー」と少し眉間に皺を寄せてが言い、「すまん」と謝る父さん。
今のは、たぶんが悪い。
「ねえ、一郎」
「なんだ?」
「一郎はいつ結婚するの?」
ガタタン。
振り返るとまたしても父さんがコップを倒している。
「どうしたの...」
とりあえず、もうコーヒーを淹れるから、とは父さんの前に置いているコップを下げた。
「相手もいなけりゃ予定もない」
の質問に答えると「そういえば、そうだねぇ」と納得し始めた。
「どうしたんだよ、突然」
まさに突然。父さんが動揺するから早くその考えに至った話をしろよ。
は今日、木村さんと話した内容を話す。
ああ、それで...
「一郎も、その気になれば結婚できるんでしょう?」
「相手もいなけりゃ以下略」
「木村さんと一緒だね」
...何だろう。そこは全力で否定したい気がするのはどうしてだ?
「木村さんは」と思わず声が漏れる。
が興味津々な視線を向けてきた。
「木村さんは彼女が欲しくて出来ない人だけど、俺は別に欲しいと思わない人」
「...一郎。それを人は何と言うか知ってるかしら?」
嫌な予感。
「五十歩百歩」
...あー、腹が立つ。
木村さんからもらったクッキーは8割がたの腹の中に納まった。夕飯を食べた後にそれはどうだろう。
「美味しかったね。さすが木村さん」
「太るぞ。てか、木村さんが買ってきたわけじゃないだろう?」
「木村さんはこのお店のクッキーがおいしいことを知ってたよ。あと、運動をするからクッキーをちょっとたくさん食べても大丈夫!」
数年前、ムキになって鴨川に入り浸ってまでダイエットをしたやつのセリフとは思えない。
引き出物のクッキーは宮田家で美味しくいただきました。
父郎はどれだけヒロインのことを可愛がっているのかしら...
それなりに親ばかだとは思っているんですけど。
というか、一郎さんが動揺しなかったのはちょっと間違っているかしら?
間違ってないな。妹のことは自分が良く分かってるとか思ってそうだし。
よくよく考えたら、一郎さんもキム兄さんも結婚できなくはないんですよね...
何か、不思議。
桜風
11.6.18
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