行楽日和 ―introduction―





リビングでと話していると「ただいま」と声が聞こえた。

「おかえりー」と私よりも先に言ったのはで「宮原か」とリビングに顔を出した一郎が言う。

「珍しいな、ウチで..というか、リビングに」

一郎がそういいながら隣接するキッチンの冷蔵庫を開けた。

「私もー!」

が言う。

一郎は冷蔵庫から顔を上げてを見て、「プロテイン?」と言う。

ウチにそんなものは置いてません。

「え、それはやだ。お茶。麦茶おかわり」

そう言って空になったグラスを掲げた。

面倒くさそうに一郎は冷蔵庫に入れておいた麦茶のサーバーを取り出してドンとリビングテーブルの上に置く。

「セルフサービスです」

「えー、サービス業のバイトしてるのに、愛想ないねー」

文句を言いつつ自分のグラスに麦茶を注いで私のグラスにも追加してくれる。

「コンビニのバイトにあまり高度な愛想を求めんな」

そういいながら一郎は麦茶のサーバーを持って冷蔵庫に向かった。


「んで、たちは何の悪巧みをしてんだ?」

「『悪巧み』だなんて失礼な」

「今度とデートすんの」

私が抗議して、は適当なことを返す。

「デート?ロードマップを睨みながら?」

私の手元を覗き込んで一郎が言う。

「うん、温泉。日帰りできるところのね」

「へー...」

「あ、今回はお兄ちゃんが行きたいと言ってもダメだからね。どんなに私の心が広くても、お兄ちゃんはダメー」

「はいはい」

の言葉に、一郎が適当に返す。

「車?」

「うん。ほら、今度の連休って、父さんは選手の..えーと、何たらさんの遠征に付いて行くでしょ?」

名前が思い出せない。

「ああ、そういえば」

「だから、そのときに車貸してって話したら良いって言われたから。あ、ご飯は前の日にカレー作っておくから」

「や、それは気にしなくて良いけど...宮原と2人で?」

一郎が言う。

「ふっふっふ。宮田君と違って、私たちは友達たくさんいるからね」

「余計なお世話だ。てか、たくさんって何人だよ、言ってみろよ」

なぜかムキになって返す一郎に思わず溜息。

「あとのメンバーは、なんと!久美さんと奈々子ちゃん」

「...誰?」

一郎が私を見た。

「間柴さんの妹さんと、板垣君の妹さん」

「妹ばっかだな...」

間柴さんの名前を出したときに少しだけ面白くなさそうな表情をした一郎だけど、呆れた表情でそう呟いた。

「題して!」

え、何かタイトルがあったの?!

「『ドキッ!妹だらけの湯煙旅情』」

「お前だけ『妹』じゃないだろ」

「だから、その続きに『宮原もいるよ』が付くのよ。まったく、最後まで聞かないなんて、せっかちね」

そのタイトルのノリは一昔前のアイドルが水着でポロリがある番組のそれだった。

「日帰りって言っても、それなりに強行ルートだろう?」

のことは放っておいて一郎が言う。

「うん、まあ。体力と集中力はあるから、私たち」

そう言ってみると

「宮原、免許持ってんのか?」

と一郎がに水を向ける。

「あるよ。けど、体力があるのはだけね。集中力は自信あるけど」

「はいはい。お詫びして訂正します」

「間柴の妹は?俺らと同じ年だよな?」

「さあ?聞いたこと無いし、今のところ運転手の頭数には入れてないよ」

と返しておいた。

「アレじゃない?仕方ないから、小間使い的な体力がありそうなの連れて行こうよ。運転できる人」

「女の子だけっていうコンセプトから逸脱しますが?」

は、こんな風に女の子に対しては言わない。つまりは、男の人。

というか、木村さんか清村先輩のことのような気がしてならない...

「そっか、残念」

その後も、この日帰り旅行の行程の話でと盛り上がる中、リビングのソファに座ってこちらを見ていた一郎は面白くなさそうにこちらを見ていた。



何か、気候が良くなったので、旅行に行こうかな、と。
ただ、日帰りね。
まあ、関東は日帰り距離に温泉たくさんありますよね。
と言うわけで、女の子だけの旅行です。


桜風
12.4.21


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