行楽日和 ―side brother―





今朝早くが家を出た。


少し前から計画していた日帰り温泉のためだ。

朝が早いのは得意なは「じゃ、いってきます」と軽く声をかけて出て行った。

話を聞くと宮原、間柴妹、板垣妹を迎えに行ってそのまま高速に乗るのだとか。

今日の昼食と夕食はが作り置いていたカレーを食べる。

いつも栄養がどうのって考えながら献立を作ってくれているのだが、こういうときは、適当で構わない。

昼食に食べるため、カレーを温めながら焦げないようにかき混ぜていると携帯が鳴った。

いつもは家にいるときは携帯は部屋に置いているが、今日はに何かあった場合に携帯に連絡が入る可能性があるから持ち歩いている。

ディスプレイに表示された文字を見て溜息を吐いた。

「もしもし?」

『お、宮田。今日はちゃん居ないんだって?』

「よく知ってますね、ストーカーですか」

溜息混じりに言うと

『板垣から聞いたんだよ!』

とムキになった木村さんの声が返ってきた。

『もしもし?』

木村さんじゃない声が電話の向こうからした。

「...板垣か?」

『あ、ボクの声で分かったんですか?』

というか、木村さんの携帯を使って話をする知らない声なんてお前くらいしかいないだろう?!

『今日は、さんがウチの妹を温泉旅行に連れて行ってくださっているって聞いたので、お礼をと思って』

「ああ、そうらしいな」

『凄く喜んでいて、昨日もずっとボクに自慢話ですよ』

「そりゃ良かったな」

『それで、ですね。確認なんですけど』

不意に板垣の声音が変わる。

『久美さんも一緒って本当ですか?ボク、朝は先輩の家でバイトしてるので、確認できなかったんですよ』

「俺も実際見てないけど、そういう話だな」

妹だらけで、オマケに宮原がいるという話だった。

『...本当ですか?』

「だから、実際見てないって。何だよ」

何で疑われなきゃならないんだ...

『男がいるとか、ないですか?』

「そこに木村さんがいるんだろう?なら、ないだろう。あ、いや...可能性のある人がひとりいるか」

ポツリと呟くと板垣が慌てた声を出す。

『誰ですか?!』

「俺達の高校時代の先輩。まあ、今回の旅行のタイトルから言って、呼んでないと思うけどな」

そう言うと『旅行のタイトル?』と聞き返された。

「確か...『ドキッ!妹だらけの湯煙旅情。宮原もいるよ』だったか」

『...なんですか、それ』

「気が向いたら宮原に聞いてみろ。ワケの分からないことが返ってくると思うけどな」

あ、こいつ宮原知ってるのか?

さんに、ですか?』

知ってた...宮原、俺の周りで顔が広すぎるだろう...

いい感じにカレーが温まってきた。

「用件はそれだけか?そんなに気になるんだったら、帰ってきたら妹に聞いてみろよ」

『帰ってきたときじゃ遅いじゃないですか』

「そうかよ。じゃ、切るな」

そう言って通話を切り、昼食に臨んだ。


夕方、ジムでの練習メニューのひとつ、ロードワークに出てみると、向こうから走ってくる人物に嫌な予感がした。

お互い、お互いの間合いに入らないところで足を止める。

「お前の妹」

そいつが言う。

「今日は日帰り温泉旅行だろう」

面倒だな、と思いながら返した。

「男はいないだろうな」

「妹に直接聞きゃ良いだろう」

「帰ってきた後で聞いても意味ないだろう」

板垣と言い、コイツと言い...

「たぶんいないんじゃないのか?」

「女だけの温泉地...危ないだろう」

どっちみち、心配なのかよ。面倒くせぇ...

「ウチの妹がいる。そんじょそこらの男よりは断然強い」

じっと疑うように俺を見る。

「本当だろうな」

「...俺の妹ナメんな」

そう返すととりあえず疑うのは辞めたらしい。

相手が足を進めたから、俺もロードワークを再開させた。

「妹が、世話になった」

すれ違うところでそうポツリと言われた。

一瞬驚いて遅れたが、「ああ」と返したが、それは相手の耳に届いているかどうかは分からない。

今日は夜中に帰ってくるんだったか?

とりあえず、間柴の言葉は伝言として預かっておいて、本人に伝えておかなきゃならないだろうな。



旅行出発後の一郎さん周辺のお話。
そういや、妹ラブ同盟(宮原嬢命名)だったよね、この人たち。


桜風
12.5.19


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