ボクの夏休み





朝っぱらから蝉が大合唱だ。

オーディエンスはうんざりしていると言うのに、何とも元気なことである。

「そういや、夏休みっていつまで?」

「とっくに入ってますよ。8月いっぱいですよ」

「そんなもんだっけ?」

木村さんが首を傾げた。

そんなもんだ。

「ま、ほら。俺ら高校すぐにやめたしな」

青木さんがフォローらしき言葉を口にしていたが

「夏休みの終わりは、中・高殆ど変わらないはずですよ」

と一郎が余計なツッコミを入れた。

青木さんはグッと言葉につまり、木村さんは苦笑を浮かべている。

「宿題は、順調?...高校でも宿題は出るよね?」

木村さんが覗うように聞いてきた。

「ええ、たくさん出ましたよ。教科ごとにそれぞれ考えて出すから、量が...」

「でも、宮田のところは、ちゃんと宮田が分担してやれば結構楽なんじゃないのか?」

「実はそうでもないんですよ」

一郎が苦笑した。

「教科担当ごとに宿題を考えているみたいで、お陰で一郎と私は被ってる宿題が無いんです」

「宮田兄妹対策だったりしてな」

青木さんが笑った。

「えー、迷惑ー」

「そんなもんに知恵を働かせている余裕があるなら、もっと別のことに使ってもらいたいな」

私と一郎がそう呟いた。

「てか、一郎。何か偉そうね」

そう言うと

「数学。1学期の目標まで進まなかったからって補習が入ってんだよ」

と苦々しく言っている。

「あ、そうなんだ?」

「しかも、宿題だけはその1学期の目標までのカリキュラムで作ってるから、補習に行かなきゃ終わられないってシステムだ」

思わず笑う。

それは、確実に補習を受けなくてはならないシステムを作ってしまった教師も、学校で、夏休みの暑い最中授業をしなくてはならないということで。

「本人も後悔してんじゃないの?」

と言ってみた。

「あいつは、自業自得。俺らは巻き添え」

ウチの学校、私立のクセに冷房とかそんな効かないもんなー...

冷房を効かせるために窓を閉めているよりも、窓を全開にしてしまった方が涼しい日があるくらいだ。

高いお金を払っているというのに...父さんが。


「それで。宮田の数学の宿題の進み具合は良くないみたいだけど、他は?」

「殆ど終わりました。補習はこれからです」

と一郎。

「まあ、時間を見つけてコツコツやってますよ」

と私。

部活があるし、家のこともある。

意外と主婦兼学生は忙しいのだ。


「夏休み、どっかいかないの?もう2週間もないけど」

ロードワークを終えて体を解していると木村さんに聞かれた。

「あー、海は行ったしねー」

人生初のバイトをして、一郎に見つかって大変だった。

「ああ、そうか。丁度花火大会もあったしね」

木村さんが頷く。

そう、一通り夏を楽しんだ後なのだ。

「旅行は無理だろうし」

呟くと

「まあ、近場ならありだろうけど」

と一郎。

「「面倒くさいよね(な)」」

と声が重なった。

「青春真っ只中な人間の発言とは思えないね」

木村さん、苦笑。

「だって、木村さん。私は部活で合宿なるものをしてるんですよ。もういいです」

「ああ、そうか。陸上部の合宿。どこかの高原?」

「そんな優雅なところじゃないですよ。まあ、山は山でしたけど」

近くにあったのは林ではなく、鬱蒼と木が茂った森だった。

あそこで肝試しをすれば雰囲気としてはバッチリだっただろうけど、失神末う人も出てきたかもしれない。その場合、改修しに行かなくてはならないので、二次被害三次被害の可能性がある。

そのため、肝試しは行われず、怪談大会で我慢した。勿論自由参加で。

「木村さんたちこそ、夏を満喫するためにどこかに行ったりしないんですか?」

聞いてみたら木村さんと青木さんは顔を見合わせて

「や、もういいかなって」

「だなー...」

と言う。

...夏の間に、何かあったらしい。



ナイトサファリな気分にならなかったので、夏休みを振り返ってもらいました。
長い間書いているので、一郎さんとヒロインは別のクラスでよかったよねとか不安になりました。
高校時代の書くの、久しぶりでしたから。


桜風
12.8.18


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