天高く





ふと空を見上げた。

気がつくとこんなに空が高くなっていた。

「そっか、もう秋か...」

学校が始まったのだから、秋なのは当然で。

それを忘れていたのは日差しの強さだ。

とはいえ、夏休みに比べればその日差しも幾分柔らかなものになり、日陰はずいぶんと涼しくなったし、風もさらりとしたものに変わってきたのにも気づいてきた。

朝晩も涼しいし。走るのに丁度いい季節になってきた。

先輩!」

後輩に呼ばれた。

「はい、はい」

返事をして彼女の元へと向かった。


先輩が引退して自分たちが一番上になった。

陸上部は、運動部にありがちな上からの抑圧のないのほほんとした部で非常に助かっている。

まあ、強い学校でもないからそうなんだろうな、と思った。

事実、ウチで強豪と呼ばれるバレー部は、有能な新人は先輩からの当たりが強かったという噂を聞いている。

何とも、つまらないことをするもんだ。

私の場合、中学も別に部が強いわけではなかった。だから、気楽だったし、陸上部が強かったら、こちらの融通がきかなくなりそうで、好きじゃない。

家のことは私がしなくてはならないのだから。

だから、中学のときの顧問が必死に勧めていた学校を蹴って、家から近い学校を選んだ。

中学のときに顧問もウチの家庭の事情を慮ってくれるべきだ。



部活中に秋を感じると、確かに秋になっていることを改めて感じた。

日が短くなっていたり、店頭に秋刀魚が並び始めたり、ご飯がおいしくなったり。

...非常にまずい。

いや、美味しいんだけどまずいのだ。

また何か言われそう...

デリカシーのないヤツが同居しているとこういうときには厄介だ。

「そういや、

来た...!

「なに?」

「数学の英田って、2学期に入って見なくねえか?」

「へ?」

今?気づいたの、今??

「陸上部の顧問じゃなかったか?違うっけ...」

「や、顧問。夏休み前にっも言ったじゃん。先生、産休に入るって。てか、一郎自分の教科担当なら、授業中、せめて1学期の終わりに授業の中で言ってたはずだよ。産休代理の先生が授業してんじゃないの?」

「へ?英田って結婚してたのかよ」

男と女だから目に入るところが違うのかな?

英田先生は、左手薬指にキラリと光る指輪をしていたのに...

気づかないとかあるのかー...

板書してたら気づくでしょ。英田先生は確か、左利きだし。

変なのー。

でも、気づかれなくてよかった...

ほっと息を吐く。

「んで、おまえ太ったろ。『天高く馬肥ゆる秋』っていうけど、ホントにてき面だなー」

ここ最近、芋とか栗とかカボチャとか。秋の恒例の美味しそうなお菓子とかパンとか部活帰りに買い食いしてたりしてたから。

てか、英田先生の結婚指輪が目に入らずに、毎日見ている私の体重変化の方に気づくとか...!

ムカつく...!

「うるさいっ!」

「おー、こえー」

全くそう思っていない一郎がそう呟き

「ジム行ってくる」

といってでていった。


ムカつく...!



空を見上げたら、随分と高くなったなーと思ったので。
でも、なぜか美味しいものの話になった。
空だけだと話にならなかったのですよー...


桜風
12.9.15


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