| 毎日走っているコースの途中に公園がある。 いつもは中に入らずに外周を走っているだけだったけど、気が向いて足を踏み入れた。 カサリと落ち葉を踏みしめながら歩いていると、足元にはどんぐり。 子供の頃は夢中で拾った。 その頃を思い出して拾っていくと、ポケット一杯になるくらい拾ってしまった。 家に帰り、ジムに行くまでの時間は店番。 といっても、特に繁盛している店でもないため暇な時間のほうが多い。 だから、昔を思い出して今朝拾ったどんぐりで遊ぶ。 ヤジロベエを作ったり、独楽を作ったり。 段々夢中になって、ヤジロベエに顔を作ってみたり、色々と弄っているとじーっと店の入り口からがきんちょが覗いていることに気づいた。 「いらっしゃい」 声を掛けるとがきんちょは「ひゃあ」と言って隠れる。 「どーした」 店の外で小さくなってるガキんちょに声を掛けると、「なんでもない」という。 なんでもないというクセに、ちらちらと視線を向けているのは、俺がさっきまで作業をしていた机の上。 「ああ、これか」 そう呟いて1個独楽を渡した。 「あげるよ」 「ありがとう!って、これ何?」 「イマドキのお子様は、どんぐりで独楽を作ったことないのか?」 驚いた。 でも、同時に納得した。 だから、公園にあれだけ落ちてたのか... 「ほら、こやって」 そういいながらどんぐり独楽を回す。 「わ、凄い!」 「君のお父さんとかお母さんとか、昔遊んだことあるんじゃないのか?」 聞いてみたらがきんちょは首を横に振る。 そのがきんちょと遊んでいたら、同級生なのか、友達がやってきてウチの前で遊び始める。 商売の邪魔だと言いたかったが、基本閑古鳥だし、本当に店に用事のある人は俺に声をかけるから特に問題ない。 「あらあら、保育士さん」 「誰が...」 がきんちょたちと一緒に独楽に夢中になっているとそう声を掛けられて顔を上げる。 「何してるんですか?」 「や、今朝公園でどんぐり拾ったから」 そう言って俺とがきんちょたちが輪になっているその中心にあったのが独楽。 ついでだからさっき一緒に着色もした。そうでないと、どれが誰のかがわからないのだ。 「木村さん、職業間違えていますよ」 思わず半眼になって視線を返すと彼女は苦笑してカメラを俺たちの中心の独楽に合わせる。 「姉ちゃん、写真撮ってくれるの?!」 「独楽のね」 彼女が返すと 「えー!」 と子供たちの間から非難の声が上がる。 「私が撮る人物はだけだから」 「誰、そのって人」 「私のマブダチ」 そう言って彼女は笑う。 「ほらほら、そこのお兄ちゃんって意外と忙しいから遊ぶ時間なくなるよ」 彼女はそう言ってがきんちょたちに遊ぶように促した。 こいつらもそこそこ可愛いもんで慌てて独楽の勝負を再開する。 夢中になって遊んでいると「達也」とお袋から声を掛けられた。 「あんた、そろそろジムに行く時間じゃないのかい?」 「あ、ホントだな。んじゃなー」 「え、兄ちゃんいなくなるの?」 「おう、兄ちゃんは忙しいんだ。それやるから、公園ででも遊べよ」 そういうと「うん!」と子供たちはあっさりといなくなる。 「おやあ?木村さん、子供たちにも振られましたね」 「...ちゃん」 酷いなー... 彼女を見ると愉快そうに笑っている。 「ま、久しぶりに子供の頃に戻ったみたいで楽しかったよ」 「みたいですね」 ちゃんが苦笑した。 「あれ、そういえば。ウチに何か買いに来たの?」 「ではなく、散策です。そろそろ秋のいい風景が目に入ってきたので」 「はあ、なるほど」 だから、高いカメラを持ち歩いているのか... 「いい画が撮れると良いね」 数日後、なぜか店に客が増えた。 いや、客じゃなくてがきんちょだ。 いくつか残っていた独楽は全部無くなった。 「友達に聞いたのかい?」 独楽をあげながら聞くと 「ううん。新聞に載ってた」 と言われた。 「新聞?」 「うん、地域の...」 タイトルを言われる。 聞いたことがあるタイトルだった。 「そこに載ってた?」 「うん。写真が投稿されてたの」 あ... 「人は写ってた?」 「ううん。エプロンと、たくさんの手くらい」 なるほど...さすが、人は撮らない主義を貫くだけある。 どんぐりがなくなった後もがきんちょたちがやってくるから、当分公園や並木通りで拾い続け、独楽を作り続ける羽目に陥った。 まあ、楽しかったから良いけど... |
最近は、このシリーズは「宮田妹シリーズ」ではあるものの、主人公出てこないよな、と
思ったり思わなかったり。
出てこなくても不都合が無いからねー...
というわけで、主人公(?)のヒロインが出てこないまま話が終わってしまった(笑)
桜風
12.10.20
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