| 起きて部屋のカーテンを開け、思わず声が漏れた。 「すげぇ...」 ドカ雪だ。俺の記憶に、こんなに降ったのはない。 ガキのころの写真で見たことはあるが... 花屋なんてもんは、花を仕入れに市場に行く。 もちろん、それは開店前の話で。 つまり、今からなのだ。 服を着替えて階下に降りると両親はすでに仕入れの準備をしていた。 「オレが運転するか?」 声をかけると 「頼む」 と親父に返された。 断ってもらってもよかったんだがなー... そんなことを考えながら、うちの店の軽バンに乗って市場に向かった。 途中、何度かスリップしてハンドルを取られて、正直かなり冷や汗ものだった。 店に戻ってきて、今度はジャージに着替えた。 「んじゃ、ちょっと走ってくる」 「もうちょっと陽が昇ってからもいいんじゃないかい?」 お袋に聞かれたが、 「いや、もう大丈夫だよ」 と返して家を後にした。 「よー」と声をかけられて振り返ると青木が軽く手を上げてくる。 「おう。さみーなー」 「てか、この雪。すげーなー」 そんな会話をしながらいつものコースを走っている。 まっさらな雪の上を走るのはなんだか少し気持ち良くて、だから、誰も踏んでいない箇所を選んで足を進めていくから、ちょっと変な走りになる。 河原に差し掛かったところから、足跡が増えていく。 俺たち以外にこんな朝早く走る酔狂な奴らがいるようで、それが趣味ってのだったら、根性が入ったもんだ。 「そういや、こんだけ降ってりゃ、犬だって庭を駆け回ることはねぇだろうなぁ」 愉快そうに青木が言った。 「あー、だろうなー。猫と一緒に炬燵だろ」 俺もそれに応じる。 しばらく走っているとなんだか楽しげな声が聞こえてきた。 しかも、俺たちのよく知っている子の、だ。 青木と顔を見合わせて、少しだけペースを上げてその声のもとへと向かった。 「一郎、ほら。これを乗っけて!」 「あのさ、何体作る気だ?」 「小学生が恐れおののいてしまうくらいまで」 「何の嫌がらせだよ」 「口を動かさずにてを動かす!」 河川敷で、そうやってにぎやかに騒いでいる2人を見て苦笑した。 確かに、宮田が呆れるのもわかる。 すでに5体並んでいる雪だるま。 しかも、どれも渾身の力作。とりあえず、宮田は雪だるまの上の部分を持ち上げるためだけに足止めをされているのだろう。 「ちゃん!」 声をかけて俺も河川敷に降り、青木もついてっ来た。 「あ、おはようございます」 「木村さん、後は任せました」 「ちょっと、一郎。なんで逃げるの!敵前逃亡は銃殺刑だよ!!」 「お前、俺の敵じゃないだろ」 「じゃあ、一郎は協力者ってことでしょ?」 ちゃんの完璧なまでのカウンターに宮田はぐうの音も出ずに沈んだ。 「んで、全部でどれくらい作るの?」 「ここらの雪がなくなって『新しい雪がない』って小学生たちががっかりするくらいですかね」 「お前、ここらの小学生にどんな恨みがあるんだよ」 「世間の厳しさを教えてあげるの。すごくいい先輩」 ちゃん、何かストレス抱えてるのかな... 「まあ、でも。それやってるときりがないし、ここにある、雪玉重ねて終わりにしたら?」 宮田が心底感謝している表情を俺に向けてきた。 「...そうします」 少し不満そうにちゃんはそう頷いて宮田を見上げた。 「はいはい」 宮田は心得たようで、雪だるまを増産していく。 出来上がった雪だるま群を見て、ちょっと気持ち悪くなった。 宮田が呆れる気持ちがよくわかる。 それからお互いロードに戻った。 「そういや、犬も炬燵に入るこの雪の中、元気なのが2人いたな」 青木が苦笑していう。 「そーだな。片方は確実に巻き込まれてたけどな」 「相変わらず、宮田のやつはちゃんに弱いよな」 「頭は上がんねぇだろうよ」 俺がそう返したら「だな」と青木が頷く。 その数日後、うちの店にちゃんがやってきた。 彼女はたまにうちの店にふらっと来るのだ。 そして、今日は書店の袋を抱えている。 「なんか手提げ袋いる?」 「助かります〜」 家にいったん戻って適当な大きさの手提げ袋を見つけて店に戻る。 「何買ったの?」 「見ます?」 そういって彼女は袋から雑誌を取り出した。 最近になって、たまに店頭に並んでいるのを見かけたときは、俺もぱらぱらとめくるようになったその雑誌。 写真の投稿を扱っている雑誌だ。 彼女が見せてくれたページに俺は苦笑した。 『作者不詳』というタイトルがついている。もちろん、撮影者は『宮原』さんだ。 「どうしたんですか?」 「ううん、なんでもない」 そういって俺は雑誌を返した。 その雪だるまの作者、君の親友たちだよ。 |
3月に雪が降りますよね。
今年は、まだ私の住んでいる地域は降ってましせん。
とりあえず、雪ネタはおしまい。
宮田兄妹が仲良く雪遊びしている姿を...
雪遊び?(笑)
桜風
13.3.16
ブラウザバックでお戻りください