あめあめふれふれ





 今日の天気予報では、確かに言っていた。

「ところにより、局地的な大雨になるでしょう」

確かに、そう言っていた。私も聞いていた。

でも、

「なんてタイミング...!」

5分前だったら駅の構内で雨宿りくらい出来た。

今は笑ってしまうほどの豪雨で、少し先が見えないくらいだ。

走って何とか庇を見つけてそこを借りる。

髪からは雨粒が滴っていて、軽く雨を払うとかそんなレベルのものではない。

「あー、どうしよう」

視界不良。

一応、いつも通っている道だからあとどれくらいでコンビニがあるかくらいはわかる。

しかし、出来れば雨に濡れたくないのだ。

今日のバッグはおろしたてなのだ。

しかも、革。

雨に濡れたら酷いことになりそうで。

「んー、どうしようか」

腕時計を見た。


ふと見下ろすとそこには小さな子供がいた。

ぶるぶると震えていて、少し心配になる。

「だいじょうぶ?」

ひざを折って声をかけると

「うん」

と頷かれた。

「お迎え、来るから」

その子が言う。

そう言えば、幼いころは親のお迎えが羨ましかったこともあった。

天気予報が外れて親が傘を持って学校に迎えに来てくれた子を見るたびに羨ましいなって思いながら走って鴨川ジムに向かっていた。

一郎と一緒に駆けて、ずぶ濡れになってジムのドアを開けると練習生とか、トレーナーさんとかがタオルを貸してくれて...

「懐かしいなぁ」

そう呟くと、隣に立っていた女の子が不思議そうに見上げてきた。

「どうしたの?」

「ううん、何でもない」

間もなく、女の子はお母さんが迎えに来てくれたようで、2人は傘をさしていなくなった。

先ほどのまでのような豪雨ではなくなったものの、やっぱり雨は降り続いている。

...どうしようか。

「おう」

声をかけられたと同時に、陰った。

顔を上げて思わず苦笑してしまった。

「こらこら、安静にしなさいと先生に言われたじゃない」

昨日試合だった一郎は、ほとんど打たれていないが、それまでの減量その他もろもろの疲れを癒すために大人しく休んでいろと医師に言われていたのだ。

「こんな雨で、が困ってるんじゃないかって思ったんだよ」

少し拗ねたように一郎が言う。

「うん、正直困ってた」

そう返すと「なら、素直にありがとうって言えって」と言う。

「そーだねー」

傘をさして雨の中に足を踏み入れる。

「鞄、あんま濡れなくてよかったな」

ポツリと一郎がいう。

「え?」

「今日、おろしたてだって言ってたろ」

だから、迎えに来てくれたようだ。

「うん、あんまり濡れなかった」

「よかったな」

「うん、ありがとう」

迎えに来てくれたのは、お母さんでもないし、一郎の傘は蛇の目ではない。

でも、それでも嬉しいものだ。

「あっめあっめふっれふっれ〜」



「んー?」

上機嫌で歌っていると一郎が声をかけてくる。

「お前、音痴だって自覚あるか?」

「一郎ほどじゃない!」

返すと一郎は片眉を上げ、何やら承服しかねるといった表情だったが、それでも反論はしなかった。

カウンターの準備は整っていたのになぁ...

「だろうと思って黙ってんだよ」

何も言ってないのに一郎が言う。

「エスパー?」

笑いながら言うと

「表情見りゃわかるだろう、だって」

と肩を竦めた。

「ついでだから買い物して帰ろう」

「俺、安静にしてろって医者に言われてんだけど」

「大丈夫!」

何がどう大丈夫なのか全く不明なその言葉に一郎はため息をつき

「今日の夕飯何?」

と買い物を了承した。





この間、凄い雨に濡れながら図書館とか行ったときになんとなく思いついた、雨ネタです。
靴の中びちょびちょなのに、こんな妄想していた私。
通常運転です☆

桜風
13.6.29


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