| 夕飯を食べているとチャイムが鳴った。 「俺が出るか?」 「いいよ、大丈夫」 これまで何度も新聞の勧誘その他諸々追い返してきた実績をなめないでいただきたい。 ...何度か押し切られたことはあるけど、それはあの理不尽大王だからであり、一般庶民相手なら負ける気はしない。 「はーい」と玄関を開けるとそこには木村さんと青木さん。 表情を見ると、凄く疲れているというか... 「ちょ、なんでいるんですか!」 数日後に試合を控えている2人は、今減量中。 それなのに、何だってウチに来てるのか。 「今日、ちゃん誕生日だろう?ついでに宮田も」 「え?」 「それに、二十歳の誕生日だからよ。ほら、大人の仲間入りのお祝いだよ」 そう言って青木さんが私に差し出したのはかわいらしい瓶。 「え?」 「アルコール度数低いの選んだから、ゆっくり飲んでご覧。あと、これね」 そう言って木村さんが持っていたのは、小さなブーケとケーキ屋さんの箱。 木村さんが商店街に新しくできたって教えてくれたケーキ屋さんのロゴが入っている。 「減量中に何やってるんですか!」 思わずそうキツイ言葉が出てしまう。 「ウチに来たからって、負けた時の言い訳にされるのは迷惑なんですけどね」 不意に入ってきたのは一郎の声で振り返ると玄関まで出てきていた。 「ばーか、負けるかよ」 「おうよ!俺たちの試合がちゃんが二十歳になってから最初に見る勝ち試合だ」 「泥仕合の間違いじゃなくて?」 一郎が返す。 「言うじゃねーか」 そう言って青木さんがにやりと笑う。 「というわけで、これもね。良かったら見に来てよ」 そう言って試合のチケットももらった。 「え、あの...!」 「ホントは、鷹村さんも来たかったんだろうけど。あの人の方が大変だからな」 苦笑して木村さんが言い、「んじゃーなー」と青木さんと木村さんは玄関を出て行った。 「ね、一郎」 「チケット、もう買ってただろう?」 「うん。でも、こっちで見に行く」 「そうしろ」 そう言って一郎はスタスタと先ほどいたリビングに戻って行った。 「ねえ、これ飲んでみる?」 「ん?そうだな、せっかくだし」 一郎の返事を聞いて私はグラスを2つ出した。 「これ、ジュースにアルコールが入ったくらいのもんじゃないのか?」 「そうなの?」 「度数が低いみたいだ」 そう言って一郎が私に瓶を差し出す。 受け取って、見てみると確かに一桁。 「最初だから低いのにしたって、木村さんが言ってたよ」 「へー」 そう言って一郎が手を出すから瓶を返した。 「ケーキも食べよ」 「俺は良い」 「一口でも食べない?」 そう返すと「じゃあ、一口な」という。 これは、厚意だから。 ケーキの箱を開けると少し大きめの、でも多分これはホールとは呼ばない丸いケーキに『ちゃん誕生日おめでとう』と書いてあり、誕生日の前に噴き出しで『宮田』と書いてある。 思わず笑うと 「あの人たちもガキみたいに...」 と少しだけ拗ねたように一郎がつぶやいた。 「じゃあ、プレートあげる」 「ん」と一郎が短く返事をしてプレートを外して、私の手にあるフォークでケーキを一口分掬った。 口に運んで 「これ、あんまり甘くないぞ」 とフォークを返してくる。 「ホント?」 私も口に運ぶと確かにあまり甘くない。 「あ、これ野菜ケーキだ」 ほんのり野菜の味がした。 「へー...」 そういってパリンと一郎がプレートを齧った。 「勝つといいね、木村さんと青木さん」 「どうだろうなー。こんなところ来て油売るくらいだからなー」 ホントは勝ってほしいくせにそんなことを言う一郎はどこかほんのり嬉しそうだった。 |
父郎がいないのは仕様です。
きっと選手の誰かについて地方に試合にいってるんです。そうに違いありません。
一郎さんが二十歳の誕生日前に試合がないから行けるって思ったら当初の展開だったら鷹村さんが来る予定で。
でも、鷹村さんこそ減量大変だから今回は出演を控えてもらったよ。
桜風
13.8.27
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