| 朝の支度が少し落ち着いたはソファを陣取ってテレビを見ている。 麦茶を飲んで部屋に戻ろうとすると「ほほう」という声が耳に入った。 この「ほほう」はどこかの理不尽大王のそれにそっくりで、俺は足早に去ろうとしたが、 「一郎くん」 と心なしか、低めの声にしてが俺の名前を呼んだ。 「似てねぇぞ」 「大丈夫。これから似るから!発言内容が!!」 「自覚あるならやめとけ」 俺の忠告を無視して 「今日は“妹の日”らしいよ」 と言ってにやりと笑う、妹。 「へー...」 何だその碌でもない記念日は。 「てか、お前いつも俺の事を弟って言ってるじゃないか」 呆れていうと 「え、弟でオッケ?」 「オッケじゃねぇけど」 「なら、仕方ないから私が妹に収まってあげようというこの寛大な心を、無碍にするというの?」 「いや、事実を認めただけだろう」 「では、私が妹でいいから。今は」 “今は”って言った...明日はまた俺を弟扱いするんだな... 諦めのため息を一つ。 それを見たは勝ち誇ったようににやりと笑う。 「んで?」 用件を促した。 口では勝てない。そうだ、これまで何年も過ごしてきた経験でもうわかりきっていたことじゃないか。 「お兄ちゃん、お買い物に行きたい」 言った瞬間、目の前でものすごく後悔した表情の妹。 おそらく俺もそれなりに酷い表情を浮かべているのだろう。 「言ってもいいか」 「ダメ!」 「気持ち悪い」 「ダメって言ったでしょ!!」 立ち上がって抗議するに片手をあげて了解の意を伝えて「買い物って何の?」と聞く。 夕飯の買い物は、妹の日だろうと何だろうと俺は連れて行かれる。 それ以外ということなのだろう。 「もう少ししたら青木さんの誕生日」 「へー...あの人にも誕生日あるのか」 「あるよ!鷹村さんにだってあるんだからあるよ!!」 相当失礼なことを口にするのそれを取り敢えず聞かなかったことにして、 「何にするんだよ」 と聞いてみた。 「それを、一郎プロデュースで「却下」 言い終わるのを待たずに返した。 「何で!」 の抗議にため息を一つ吐いて 「何しても絶対に感謝されない」 「一郎、あなたのその考えは間違っているわ」 が真顔で言う。 「感謝されたいから何かをするんじゃないの。お祝いをしたいから、お祝いをするんじゃないの」 「別にしたくないし、仮にお祝いをしたとしてもどうせ色々文句言われるんだろう?」 見えている未来を口にするとは少し考え込み、 「じゃあ、私からっていうことで反応を見て、いい感じだったら一郎プロデュースってネタバレするってのはどう?」 と提案する。 本当にネタ切れらしい。 というか、ネタ切れになった青木さんの誕生日ってどうなんだろう... ただ、まあ。付き合わなかったらずっと何か言われそうだし、「今日ジム行くんだからな」と念を押して了承した。 時間が限られるなら適当に、さっさと決めてしまえばいい。 練習に行く鞄を持って少しだけ足を伸ばして郊外型の大型複合施設に向かった。 都心に行くのは何だか面倒くさい。 は俺の後ろを面白そうについてきている。 取り敢えず、暇つぶしでこの話を振ったのだろうと俺は思っている。 指摘をしたら対応できないほどの言葉が返ってきそうだから、何も言わないけど。 何か適当に、後に残らないものを、と思って目に入ったのがバスセットと書かれた入浴剤のセットだった。 これならなくなるだろう、と思ってそれを手にする。 「それでいいの?」 俺の手元を覗き込んだが問う。 「これでいい」 そう返してレジで精算を済ませた。 はもうちょっと寄り道して帰ると言っていたから、 「悪いけど、持って帰ってくれ」 そう言って渡す。 時計を見た彼女は「あ、もうこんな時間」と呟いて引き受けた。 「気を付けて帰れよ」 そう言うと「はいはい」と適当に返された。 練習を終えて帰宅するとが風呂を勧める。 練習が終わってシャワーを浴びて帰るから、たまに省略する風呂だけど、そこまで推すなら、と入ることにした。 いつもと匂いが違うと思って湯船の蓋を開けてみると風呂の湯が乳白色で、が風呂を勧めた理由がわかった。 入浴剤を使ったのだ。 匂いも少し甘い感じがして、そういや、子供のころはやたらは入浴剤を入れたがったなと思い出す。 翌日、掃除をしているが「一郎、お姉さまを手伝おうって思わないの?」と声をかけてきた。 「妹はどうした?」 聞いてみると 「昨日で締め切りましたー」 と返される。 ため息を吐くとにこりとほほ笑んだが「はい」と渡してきたのは、掃除機で。 「和室、よろしくー」 と言われ、仕方ないので和室でサボろうと心に決めた。 |
本日、妹の日だよというフリを頂きましたので。
まさかの1年以上更新のなかったこのシリーズを書くことになるとは。
ネタ切れなのは私の方です。
またネタを振られたら書くと思いますが、それまでは再びしばしのお別れです。
桜風
14.9.6
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