戦の章 第11話
| 暫く廊下を歩いていると「飛べ!」と大地が叫んだ。 飛翔は「失礼」と隣を歩いている霞を抱えて天井のパイプに手を掛ける。建物のつくりは意外と人間と変わらないようだ。 氷は「悪い」と一言断って抱えて沙羅を抱えて飛んだ。 残念ながら反応が遅れた炎狼と雷は突然廊下に現れた穴に落ちる。 「飛べ」と叫んだ大地はもちろん反応できており、穴の縁に手を掛けていた。 「あの、飛翔?」 「ああ、少し我慢してくれるかな?と、言うか。霞は自力であそこまでいけるね?」 そう言って視線を向けたのは穴の縁だ。 頷いた霞はそのまま飛翔が向けていた視線の先に現れた。 飛翔は足を動かして振り子の要領で勢いをつけて穴の縁に着地する。 「霞、すまないが沙羅を」 氷がそう言い、霞は頷いて沙羅を移動させた。 氷は先ほどの飛翔と同じように足を振って勢いをつけて飛ぶ。 「炎狼、生きてるか?」 穴の中に向かって飛翔が声を掛ける。 「おー、思ったよりも深くなかったぜー。てか、横穴あるけど、どうするよ?」 飛翔と氷は大地に視線を向ける。 大地は肩を竦めて、「じゃあ、オレも降りよう」と声を掛けてすっくと立ち上がる。 「んじゃ、またあとで」 そう言ってひじを曲げて腕を前に出した。 飛翔もひじを曲げて腕を前に出し、大地のそれに当てる。氷も飛翔と同じようにした。 「悪いけど、柊。一緒に来てもらうぞ」 「はい、心得ています。では、霞様後ほど」 大地に続いて柊も穴にひょいと飛び込んだ。 「しかし、まあ。意外と明るいな?」 そう深くもないといっても地下である限りは基本的には日光などは届かないはずだ。 「おそらく、この壁に埋め込まれている鉱石でしょう」 そう言ったのは柊で、確かに、何か埋め込まれているところだけがぼんやりと光っている。 「これって、こっちにもあるの?」 「いいえ、人間界にはありません。神界には似たようなものがありますけど」 なるほど、と思いながら足を進める。今のところ一本道だ。 「柊は、わかるのか?」 「気の違いのようなもの、ですか?」 大地が頷く。 「多少は。しかし、そう言うのは『時』が最も得意とすることですから、悠には敵いません。それと、時と属性として近い『天』の方がそういうのが得意ですからね」 そういえば、自分たちが認識していた属性以外に『天』と『地』があると聞いた。 「じゃあ、えーと『涼』って言ったか。あの子は確か『風』だよな?彼女の方が得意ってことか?」 「そうですね。でも、悠の次だったら唯ですね。個人差というところでの判断ですが...『個人差』、つまりは性格ですけど」 そう言って苦笑する。 「性格で変わるのか?」 「はい。我々霞様のディースはそれぞれ属性を持っています。それでも、大元に『時』は欠かせません。だから、属性が何であれ、一応性質的には『時』なんです。唯が得意と言うのは、まあ..細かいことをよく気にしているから。あまりにも大雑把だと気の違いを感じながら移動なんて出来ませんよ。 と言っても、時空移動は『時』の能力でもかなり高位のものですから、それについてはやはり悠だけです。そう言った能力の差もやはり否定は出来ません」 その話を聞いて、皆は柊を伺うように見る。 その視線の意味を察した柊は「まあ、霞様に命じられていますので」と請け負った。 3時間くらい進むと柊が足を止める。 「どうした?」 それに気づいた大地も足を止めて声を掛けた。 「そうですね、近道..しますか?」 「は?!」 「どういうことだ?」 「ちょっと乱暴になりますけど。目的地はこの真上っぽいです」 そう言って柊は天井を見上げて距離を測った。 「少し離れていてください」と言ったかと思うと跳ねて天井を突き上げる。 その衝撃で亀裂が入り、その箇所をくるりと回転しながら蹴り上げた。 パラパラと天井のかけらが落ちてきてやがて崩れてくる。 もう1回。 そんな感じで天井を見上げて膝を折り、蹴り上げる力を溜めていた柊が不意に立ち上がる。 「おーい、無茶してくれるなー...」 呆れたように炎狼が言う。 この突拍子もない無茶っぷりはどこかの誰かさんを思い出してしまう。 「結界が弱くなりました」 「街の方か!?」 その場に緊張した空気が漂う。 「いいえ、違います。魔族たちが張っていたものです」 大地たちは顔を見合わせた。 「魔族たちは、結界を張っていたの?」 雷が問う。 「『魔力の増幅器』、と呼んでいるものは、要は結界を張るための装置です。魔族たちはその装置を使って自分たちのフィールドを作っていると考えてください」 「つまり、それが予想通り複数あって。そのうちの1つが壊れたってことか?」 「そうですね。ただ...」 柊が言葉を濁す。 「どうした?」 「壊したのは霞様のチームらしいのですが。今こちらに通信していただいたその情報の中に飛翔さんの..先ほど決めたルールがないんです」 「非常事態、もしくは..ディースたちの通信に似せて連絡を送れるものが居るとか...」 柊は頷く。 「可能性はありますが、今連絡をくださったのは霞様と考えて間違いはないと思います。これは、あの方の魂に呼ばれてこちらに来ているディースの勘です。それに、今言いましたように結界が弱くなったのも理由のひとつですけど」 心配そうに言う柊の言葉に雷はちらっと大地を見た。 「はぐれた、とか?」 「もしくは、負傷か?負傷者を抱えていることを送るのは傍受されたときに狙われるしな」 「はぐれたんだろう。たぶんなー」 雷と大地が心配そうに話していると炎狼が苦笑しながら言う。 「もしかして、飛翔さんに何かあったら分かる..とか?」 「いーや。けど、あいつを出し抜けるやつが居たらおれは弟子入りしたい」 自分たちが手にしている神器と呼ばれる武器はそれぞれがもっとも得意とするものである。そして、重さを感じないようにできているらしい。 以前雷の大剣を持たせてもらったときには物凄く重くて振り回すなんて無理だと思っていたのだが、雷が言うには全く重さを感じないと言う。 そう言うものでできているのだ。 雷が居なかったら飛翔が最も素早いし、狙撃は一発必中だし、何より大雑把に見えても用心な性格だ。 結構適当なことをしているが、そういうときは大丈夫だという根拠を自分の中で見つけているのだ。 「おれたちも負けてらんねぇぞ」 炎狼がそう言うなら、きっとそうなのだろう。 大地たちは納得し、そして柊は天井を蹴り上げた。 |
桜風
09.2.1
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