戦の章 第15話





炎狼に現状を話して飛翔の提案した話に戻る。

「部屋を壊すって...」

この部屋をくり貫いてこの建物の状態を保っておくなんてたぶん不可能だ。

炎狼は飛翔の相変わらず大胆な発言に溜息を吐いた。

皆、飛翔のことは深慮だとかいうが、案外そうでもないということを力いっぱい主張して近所を回りたいと思う。とりあえず、出来る出来ないで考えて出来そうだったら非常識なことでもやってしまおうなんて言うのが飛翔だ。

風真を拾った時だってそうだ。傷ついている魔族を助けてさらに家で面相を見るなんて常識的に考えたら無謀だ。しかし、飛翔は勢いと言うか、『何となく大丈夫だと思う』みたいな感覚で拾ったのだ。そして、飛翔に非常に甘いあの家族たちは、「ちゃんと面倒を見るように」という約束だけで家で面倒を見ることを許可したのだ。

あのまま魔族に滅ぼされてもおかしくなかった。あの家も、風の国も。

まあ、結果として大丈夫だったし、『風真』という名を与えた魔族の鳥は飛翔に非常に懐き、家事をこなしていけるくらいの生活力を身につけた。確かに、結果オーライだが、たまたまだっただろう、と炎狼は今でも思い出しては飛翔の無謀さに嘆息を吐きたくなる。

呆れ口調の大地の言いたいことが分かった飛翔は、たしかに、と俯く。

破壊工作するのだったら大地に頼むつもりだったが、大地が言うにはこの部屋を崩したら建物、つまりこの要塞自体が崩れかねないというのだ。自分の歩いてきた道、そして外からこの建物を見た感じではこの部屋は予想した通りその中心となっている。だから、この部屋が崩れたら建物自体の強度が弱まる。

建物が崩れるのは一向に構わないが、自分たちが生き埋めになるのは出来れば避けたい。

「大黒柱...」

飛翔が呟いた。

「へ?」

皆は声を漏らす。何だ、それ...

「あ!はい!!」

沙羅が挙手した。

「はい、沙羅」

飛翔の言いたいことが何となく分かっている炎狼が指名した。

「たしか、家の中心にある柱だよね?その柱が家を支えているって言う...違ったかな?木造家屋では、そういう重要な柱があるって聞いたことある。ウチは、石造りだから見たことないけど...」

まあ、城だしな...

沙羅の実家の作りは何となく想像できるので誰もそれについての突っ込みは入れなかった。

「ま、アリじゃねぇの?出来ない話じゃないだろう、この面子だと」

炎狼が乗り気ではないものの、それ以外ないと考えて同意した。

「柱1本で支えるって、本当か?」

「まあ、正確にはそうとはいえないけど。けど、逆にそれがなかったら家は崩壊しやすいんだ。まあ、家の要になっている柱ってこと」

つまり、その大黒柱になるものを造ってみないか、というのが飛翔の案なのだろう。

しかし、この建物は石造りだ。柱を1本、氷に立ててもらったとして支えきれるだろうか。

「はーい!じゃあ、わたしがするよ」

そう言ったのはやはり沙羅だ。

「柱なんて..あ、そうか」

大地が問い返そうとして勝手に納得した。

「たしかに、俺よりも沙羅の方が適任かもしれないな」

こおりの柱をたてることを依頼されると構えていた氷も沙羅の言わんとしていることを察して頷いた。

「種とか持ち歩いてんの?」

雷が問う。

沙羅は植物を操れる。操るというと少し語弊がある。成長を促進できる。そして、自分が促進した分だけなら元には戻せる。

「けど、この部屋の中でわくしたちの力を使うってちょっと大変よ?さっきの魔族は神器をつかって、とか言ってたけど、正直無理だったと思うもの」

霞が言う。

この部屋はまだ魔族の特別な力が働いている。それは確かに自分もそう思っていたと大地が頷いた。

だから、先ほどはそのために炎狼の偽者が居たのだろう。属性を持つものは他の属性のことは良くわからない。戦争のお陰で国交が断絶していたため、特にそういう情報は得にくくなっていた。

部屋の中をぐるりと改めて見渡した飛翔が大地を見上げる。

「大地は全力でこの部屋を壊すのにどれくらい時間がかかりそうだ?」

「オレ一人かよ...」と呟きながらも少し悩んで数字を口にする。

「沙羅は、どうだ?」

「一瞬でいけるわよ?コツは掴めてるから」

だって何回か大樹を作ったことがあるもの、と付け加える。

今までそんなことをする必要はあったのかと思ったが皆はその疑問は胸の中に仕舞っておいた。聞いても仕方ないし、何となくくだらない理由のような気がしたから。









桜風
09.4.5


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